パンデミックの教訓をイノベーションに、台湾科学大臣インタビュー:DXやグリーンエネルギーなど(2/3 ページ)
米国EE Timesが、台湾の科学大臣Tsung-Tsong Wu氏にインタビュー。Wu氏は、デジタルトランスフォーメーションやエネルギーといった技術の重要な側面を強調した他、複数の台湾系スタートアップ企業が最近主催した「VivaTech 2021 Virtual Conference」の最新情報を提供してくれた。
プライバシー保護の取り組み
デバイスとそこに保存された情報が結び付けることによって利便性がもたらされるが、同時にそれはプライバシーにとっての脅威となる。ハッカーはますます、安全対策が施されていないデジタル資産を探すようになっている。
感染追跡などのトラッキング用プラットフォームは、こうした懸念を高めている。Wu氏は「台湾を評価する声がある一方で、トラッキングのプロセスが一部の人々のプライバシーを侵害する可能性があるのではないかと懸念する声も少なくない」としたうえで、「われわれは、このトラッキングデータを用いるに当たり、確実にプライバシーが守られるよう必要以上の注意を払っている」と説明している。
Wu氏は、パンデミックの間に収集されたデータを確実かつ継続的に保護し、一定の時間が過ぎたら削除または廃棄することを必須とする規制についても言及した。「われわれは人々の安全と生命を保護しながら、民主主義も維持しなければならない。そして、民主主義とセキュリティのバランスをうまく両立させる必要がある」(同氏)
Wu氏は、デジタル技術、人権、民主主義は全てがリンクしている、と強調する。「テクノロジーを利用して利便性を確保しながら人権を維持する方法には、常に絶妙なバランスが求められる。より多くの人々と国々が実験を行い、さまざまな経験を共有する必要がある」(Wu氏)
グリーンエネルギー政策
再生エネルギーが台湾の電力網に占める割合は、2016年以前はほんの一部にすぎなかった。2016年以降、台湾はグリーンエネルギー関連の政策を新たに導入し、2025年までに約20GW(ギガワット)のソーラーエネルギーを供給することを目指してきた。
ソーラーエネルギー量の増加に伴い、台湾は風力などのオフショアエネルギー源にも取り組むようになった。Wu氏は「2016年まで、人々は台湾が近い将来に沖合の風力発電を実現できる可能性は低いと考えていた。台湾は小さいが、いくつかの素晴らしい風力場がある」と語る。そうした取り組みは欧州からの投資を取り込んでいる。Wu氏は、沖合の風力源が2025年には6GWもの電力を生み出し、小型の水力発電や地熱発電とともに全体の発電量に貢献するようになると見込んでいる。
そうしたエネルギー源は、台湾が排出ガスの削減に寄与すると期待する電気自動車(EV)にも役立つ。Wu氏は「実際、EVは動くスマートフォンのようなものだ。われわれはそうした種類の技術を小型化したり、互換性を高めたり、入手しやすくすることができる。台湾は将来、EV開発においても重要な役割を担えると私は確信している。バッテリーもしくはストレージ関連のソリューションはEVの重要な要素だ」と続けた。
電動モビリティはエネルギー変革の重要な原動力であるが、電気需要の増加をもたらすことが見込まれている。その多くは再生可能なエネルギー源によって生み出されることが望ましいが、そのためにはより一層フレキシブルな電力網が必要となる。スマートグリッドや再生可能エネルギーが拡大するにつれ、エネルギー貯蔵は重要な役割を担うようになる。エネルギー貯蔵にかかるコストの軽減に伴い、バックアップやタイムシフトのためのアプリケーションが登場することが期待される。Wu氏は「チップと関連するスマートセンサーの未来が、より電子的で機械的でない自動車の実現につながることは間違いない」と付け加えた。
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