パンデミックの教訓をイノベーションに、台湾科学大臣インタビュー:DXやグリーンエネルギーなど(3/3 ページ)
米国EE Timesが、台湾の科学大臣Tsung-Tsong Wu氏にインタビュー。Wu氏は、デジタルトランスフォーメーションやエネルギーといった技術の重要な側面を強調した他、複数の台湾系スタートアップ企業が最近主催した「VivaTech 2021 Virtual Conference」の最新情報を提供してくれた。
イノベーションの方針
Wu氏は、イノベーションを「日常生活をよく観察した上での進歩」と定義している。「台湾では大きな変化が見られるが、その1つの側面として、伝統的な産業のイノベーションを考えてみると、今後10年間は、デジタル技術が伝統的な産業に組み込まれていくだろう。そして、デジタル技術やサイバーセキュリティなどは、資源がますます貴重になる現在と将来の両方において、若い世代にとって必要不可欠なものになるだろう」(Wu氏)
Wu氏は、「地球上の資源は無限ではない。われわれは皆、つながりのある地球上で生活することで、自分の役割を果たさなければならない。だからこそ私は、未来を考えるとき、全てを統合しなければならないと考えている。テクノロジー、自然、社会を統合しなければならないのだ」と語る。
AIやデータマネジメントなどの新たなテクノロジーが反復性の高い仕事をなくすのに役立つ一方で、学際的なスキルに対する需要が高まると考えられる。Wu氏は、「例えば、AI技術を理解し、ドメイン知識(特定の領域に関する専門知識)がある人材は非常に人気になるだろう」と予測している。「学習やキャリア形成の過程で、複数の専門スキルを持つことが必要になる。意思決定を支援する多くのツールが増える中、自分の価値観を保ち、優しさと包容力を持って人と接することが非常に重要になるだろう」(Wu氏)
台湾のスタートアップ
台湾は、通信やAI、IoT、VR(仮想現実)などの分野で、長年にわたりテクノロジー系スタートアップを支援してきた。そうした取り組みが、実を結び始めている。例えば、AIを使ってテキストを動画に変換するツール「GliaCloud」は、地元のメディアやEコマースの小売業者と連携している。
2021年のスタートアップ向けカンファレンス「VivaTech」には、そうした多くの企業が参加した。Wu氏は、「われわれの目標は、これらのイベントを利用して、われわれのビジネスやチップメーカー、さまざまなデジタル分野の興味深いスタートアップ企業をPRしていくことだ。台湾はOEMやODMの能力で知られているが、長いイノベーションの歴史も備えている」と述べる。
Wu氏は、台湾のスタートアップ企業がVivaTech期間中にいくつかの賞を受賞したことも挙げた上で、「台湾のスタートアップにいつも伝えているのは、これらの技術がどのように生活や日常のニーズに結び付くのかを考える必要もある、ということだ。フランスやドイツ、イタリアで出会った企業は、台湾のスタートアップが学べる経験をたくさん持っているのではないだろうか」と語った。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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