Samsung、CXL関連ポートフォリオにソフトウェアを追加:ソフトウェア定義されたメモリ管理を実現
Samsung Electronics(以下、Samsung)は、同社初のCXL(Compute Express Link)製品を強化するため、同プロトコルの採用促進やエコシステムの拡張を促すよう開発されたソフトウェアツールを、CXL製品ポートフォリオに追加した。
Samsung Electronics(以下、Samsung)は、同社初のCXL(Compute Express Link)製品を強化するため、同プロトコルの採用促進やエコシステムの拡張を促すよう開発されたソフトウェアツールを、CXL製品ポートフォリオに追加した。
CXLエコシステムの拡大を加速
Samsungのバイスプレジデントで、データセンタープラットフォームグループを率いるCheolmin Park氏によると、同社は、CXLの普及促進のためには、ソフトウェアとオープンスタンダードが不可欠だと考えているという。そのことは、Samsungがヘテロジーニアスなメモリシステム向けにScalable Memory Development Kit(SMDK)をリリースした理由の1つだという。
Park氏によると、このオープンソースソフトウェアは容易に統合できる作りになっており、ソフトウェアで定義されたメモリ管理を実現するという。こうしたアプローチによって、顧客やパートナー企業とのCXL技術での協業や実証が促される他、CXLエコシステムの拡大が加速される。
開発キットの発表に先立ち、Samsungは2021年初め、AI(人工知能)や高性能コンピューティングといったアプリケーションに向けたDDR5(Double Data-Rate 5)DRAMベースのメモリモジュール「CXL Memory Expander」を発表している。そうしたデータ集約型のアプリケーションには、メモリ容量や帯域幅の大幅なスケーリングが可能なサーバが求められる。
Park氏は、実証済みのMemory Expanderによって、アプリケーションへの移行がSMDKの構築につながったと述べた。SamsungはSMDKについて、進歩しているCXL開発に向けた初めてのソフトウェアパッケージであると考えている。この組み合わせは、既存のソフトウェアツールやソフトウェアスタックに統合できるような作りになっている。
Park氏は「われわれの計画は、この特定のソフトウェアをオープンソースコミュニティーに向けて公開し、誰でも入手して使用できるようにすることだ」と述べた。
Samsungは、CXL 2.0 DRAM Memory Expanderが顧客にサンプル提供され、ソフトウェアツールがメモリと統合されよりアクセスしやすくなることから、容量や帯域幅が50%向上すると予測している。
ソフトウェアスタックの特定の場所で、従来型のDRAMやCXLメモリといったハードウェアを組み合わせれば、単一のバーチャルメモリが実現する。Park氏は「現在のフレームワークは、顧客による既存のソフトウェアスタックのシームレスな統合を、非常に包括的な形でサポートすることができる」と述べた。
SMDKの他の要素として、互換性のあるAPIと最適化されたASPへのサポートに加え、さまざまなソフトウェアの要求や優先事項、帯域幅割り当てに対応するインテリジェントな階層化エンジンが挙げられる。
前述の開発キットを用いると、DDR DIMMの下やSSDの上にあるメモリ階層に追加のレイヤーを生成できる。Memory Expanderを活用することで、CPUごとの帯域幅や容量は高まる。SMDKのワークフローはメモリのさまざまなユースケースにも対応する。互換性のあるAPIは、ソフトウェアの変更が伴わないメモリ拡張をサポートする。一方、最適化されたAPIはソフトウェアアプリケーションの変更をサポートする。
Samsungは、SMDKを拡張可能なメモリ環境に広げることで、メモリの分離アーキテクチャやCXLのオーケストレーション(編成)向けに使われる完全なソフトウェアパッケージの開発が可能になると述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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