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TIのGaN技術とMCUを搭載したデータセンター向けサーバ電源データセンターの消費電力とCO2排出量を削減(1/2 ページ)

Texas Instruments(TI)は、同社のGaN(窒化ガリウム)技術と「C2000」リアルタイムマイクロコントローラーをDelta Electronicsのパワーエレクトロニクス技術と組み合わせて、データセンター向けのエンタープライズサーバ電源ユニット(PSU)を開発したと発表した。

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 Texas Instruments(TI)は、同社のGaN(窒化ガリウム)技術と「C2000」リアルタイムマイクロコントローラーをDelta Electronicsのパワーエレクトロニクス技術と組み合わせて、データセンター向けのエンタープライズサーバ電源ユニット(PSU)を開発したと発表した。

 TIによると、この組み合わせによって、電力効率が最大99.2%まで向上し、全体的な電力コストを削減できるという。TIでGaNテクノロジー製品ラインのマネジャーを務めるSteve Tom氏は、「GaNパワー技術とC2000を組み合わせることで、ソフトウェアや周辺機器の拡張性だけでなく、タイムクリティカルな処理や精密制御を向上させることができる」と述べている。

 Tom氏はインタビューの中で、「これらのマイコンは、さまざまな電源設計トポロジーと高いスイッチング周波数をサポートして設計の電力効率を最大化することで、サーバPSU向けのGaNベースパワーソリューションの可能性を完全に引き出すことができる」と付け加えた。同氏はさらに、「この組み合わせは、データセンターアプリケーションのほかに、車載アプリケーション、特に電気自動車(EV)のオンボードチャージャーにも使用できる。EVの電力変換にも、高効率と電力密度が必要だ。車載アプリケーションにこの技術統合を採用すれば、より強力なシステム性能を実現できる」と述べている。

 GaNトランジスタは、データセンターの電源と通信用のスイッチングラックの少なくとも2つのアプリケーションで、シリコンベースのスーパージャンクションデバイスを上回る性能を発揮する。ワイドバンドギャップ(WBG)材料固有の利点を活用したシステムを構築すれば、サプライヤーとシステムユーザーが、システムのコストと運用の両方で恩恵を享受できる。エネルギーおよび気候政策のシンクタンクである米Energy Innovationによると、1%の改善が1データセンター当たり1MW(メガワット)の削減につながるという。

データセンターの電力供給

 データセンターは、ユビキタス情報サービスを支えるデータを保存、分析、送信するインターネットの“頭脳”ともいえる。ITインフラで使用される電力は、最終的に熱に変換されるため、冷却装置を用いてデータセンターから取り除く必要がある。世界最大級のデータセンターの中には、数万台のサーバやその他のデバイスが設置されているため、100メガワット以上の電力が必要になるものもある。米国エネルギー省によると、これは米国の約8万世帯の電力使用量に相当するという。インターネットユーザーの増加に伴って、データセンターサービスの需要も増加しており、データセンターのエネルギー使用量に関する懸念が高まっている。

 そのため、エネルギー効率の向上が重要になるが、それにはサーバの仮想化などの措置が必要となる。サーバを仮想化するだけで、エネルギー消費が大幅に削減され、1台のサーバで複数のアプリケーションを実行できるようになる。

 もう1つ懸念されているのが、データセンターからのCO2排出量の増加である。データセンターは効率化を進めることでエネルギー使用量を適切なバランスに保ってきたが、コンピューティングサービスに対する需要の高まりが効率化を上回ると予想されている。

 このバランスを維持するには、次世代のコンピューティングとストレージ、冷却技術に投資して、今後10年間のエネルギー使用量の急激な増加を抑える必要がある。

 TIは、「こうした背景を受けて、当社が数十年にわたって開発に取り組んできたGaN技術およびC2000を生かすべく、Delta Electronics と提携した」と述べている。データセンター向けパワーアプリケーションの開発では、TIの半導体製造プロセスを適用して、シリコンおよびIC上にGaN技術を製造している。また、自社でGaNエピタキシーとアセンブリ、テストを実施することで、機器の冗長性に対処しているという。


データセンターのサーバラック 出所:Texas Instruments

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