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「コロナワクチン接種拒否」に寄り添うための7つの質問世界を「数字」で回してみよう(68)番外編(3/14 ページ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンについて、必要回数のワクチン接種が完了した割合が70%を超えた日本。今回は、テーマをこれまでとは180度転換し、「コロナのワクチン接種を拒否することが、理論的か否か」について語ってみたいと思います。ワクチン接種を拒否する人も、肯定する人も、お互いの立場に立って、ワクチン接種について考えてみたいのです。今回もおなじみ、“轢断のシバタ先生”が、超大作の「シバタレポート」を執筆してくださいました。

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ワクチンを拒否している人たちの「SNS」を集めてみた

 政府、マスコミを信じることができない人々にとって残されているのは、善意の第三者からの情報です。つまりSNSからの情報だけが頼りです。しかし、私はSNSを使っていませんし、そもそも、この私に、「コロナによる政府陰謀論」のリツイートを展開してくるような、肝の座ったフォロワーなどいません。

 そこで、『「ワクチン拒否を呼びかける」のツイートを押しつけられて、正直迷惑している』とこぼしていた、読者の一人である現役の大学生にお願いして、その拡散ツイートを、片っ端から私に転送してもらうことにしました。

 で、ここからSNSの話になるのですが、私は、そのツイートの内容(約200程度)を全部読んで、そのソースにたどりつこうとしたのですが、それ以前の問題でした。「お話にならないくらい、内容が寒い」。

 一言で言えば、(1)情報発信者が特定できない、(2)引用データがない、(3)出典先のソースがないのオンパレードでした。

 私のように、ツイートの内容を、徹底的に精査して、一次情報まで特定するような奇特な作業を経て、リツイートするような人間は、レアケースだと思いますが、それにしても、その内容の寒さには、『限度があるだろう』と呟かずにはいられませんでした。

 何はさておき、どれもこれも一次情報にたどりつけない。1つや2つならともかく、全部たどりつけないなんてことありえるでしょうか。ちょっと私には信じられません。

 上記#1の政府陰謀論は、仮説以前に、どんな内容の陰謀かも分かりませんでした。大体、少子化(労働者不足)で心底困っているのに、大量殺人なんぞするか? 反体制の人間だって、飯を食って、納税している限り、GDPに貢献しているのです。

 #2、#3、#4なんて、政府与党を一発で倒せる(倒閣/政権交代)大事件です。その情報、マスコミだけでなく、野党にも高く売れます。選挙で、自民党を確実に下野に追い込めます。なんで、SNSごときでコソコソやっているのでしょうか。

 #5に至っては、データを調べたのですが、データの趣旨が「英語」で記載されていましたが、恣意的にその内容を無視してツイートされていました。「英語に愛されない日本人」の弱点を突く、いやらしい情報操作です。個人的には、絶対に許せません。

 さて、ツイートの中にも、数値の入っているものがあります。こういうものが出てくると、私のフィールドですので、早速調べてみたのですが、これが、なんとも「ガッカリ」な内容でした。

 ちなみに、私の母は、施設で寝たきりの状態ですが、1回目のワクチン接種後に体調が悪化して、緊急入院することになりました。実際、死亡の可能性すらありました。

 そもそも、ワクチン接種とは、体内に中和抗体を生成するプロセスであり、体に過大な負荷を与えるものです(これは副反応で苦しんだ人はご存じかと思います)。これによって、沈黙していた病巣を活性化し、最悪の場合死に至ることもある、ということです。しかし、問題は、「ワクチン接種と死亡の因果関係」の解明が、絶望的に難しいということです。

 私の母の場合は、肺水腫という肺に水がたまるという症状が発症して緊急入院となりましたが、当然ですが、これはワクチンが引き起す病症(アナフィライキシー等)ではありません。しかし、ワクチン接種をきっかけに、肺水腫が引き起された可能性を否定できる訳ではありません

 そういう意味では、基礎疾患を持っている人の優先接種は、逆に危険だったのではないか、という考え方もあります。基礎疾患を悪化させて、死に至った人もいるかもしれません。

 しかし、ワクチン接種をしないのであれば、施設内でクラスターが発生した場合、COVID-19が、母を直撃することも考慮しなければなりません。多分、現在の母の状況からして、コロナ感染によって、母の死亡は確定的でしょう。つまり、ワクチン接種は、誰にとっても、文字通り「命のかかった選択」であるのは事実です。

 はっきりと言えることは、統計的に見てワクチン接種の方が、オッズが高い(リスクが小さい)というだけの話です(ちなみに、私は、母のワクチン接種2回目に"Go"を出しましたが、現場の医師が"No"と判断し、私は同意しました)。

 さて、ここで上の表の#6の"18倍"ですが、まず、この情報の出所にたどりつけていませんし(誰か教えてください)、もし出所が分かれば、その"18倍"の根拠が知りたいです。少なくとも、根拠もなくSNSで情報をばらまくことが、「命のかかった賭け」を行う人に対して、正しい判断を与える情報になっているとは思えません。はっきり言って無責任です。

 #8の『ワクチン拒否をする人が少数派になりつつあり危険だ』という内容については、(本心から)何のことやら、さっぱり分かりませんでした。そもそも、我が国では、ワクチン接種は、自由意思で行われているものだし ―― と、書いている時に気が付きました。

 これは「ワクチンパスポート/ワクチン接種証明」のことかもしれません。ワクチンを拒否する人が少数派になれば、社会から、それらの人を排除しても構わない、という空気が完成するかもしれません。少数派になれば、経済への影響が小さくなるからです。具体的に言えば、ワクチンパスポートがない人が「ラーメン屋」の入店を拒否される未来がくるとすれば、これは危険を感じてしかるべきです。

 『俺たちはリスクを払ったからラーメンを食える。お前はリスクを払っていないからラーメンを食えない。これは、おおむね妥当な区別と言えるのではないか?』と言われたら、反論しにくいのは事実でしょう(実際に、米国、フランス、イタリアでは、提示の義務化が開始されています)。

 最後は、「誰にも分からない未来」についてのメッセージになります。

 まあ、これについては、実際この通りだと思います。しかし、「未来の恐怖」におびえて、今、死んでしまったらどうするんだ、とも思います。敵はインフルエンザの死亡率20倍以上のウイルスであり、罹患中は、首を絞められて呼吸ができない地獄の苦痛があり、病気から生還したしても、深刻な後遺症を残すという、非常に悪質な病気です。

 ぶっちゃけ、「5年後にコロナワクチンを打たなかった人だけが生き残る世界」が絶対にこないとは言えないでしょう ―― まあ、江端家は、『全員死亡でスッキリするね』と言っていますが。現在のコロナワクチンのメカニズム(mRNA、ベクター)を見ている限り、その可能性は、限りなくゼロに近いように思えます。インフルエンザワクチン(不活性化処理)の方が、リスクが高いように見えます。

*)関連記事:「あの医師がエンジニアに寄せた“なんちゃってコロナウイルスが人類を救う”お話

 結論として、ワクチン接種の拒否を呼びかけるSNSのメッセージは、

(1)まったくお話にならない噴飯もの
(2)お話にはなるが証拠に辿りつけないもの
(3)今考えたってしょうがないもの

の3つに分類でき、つまるところ、SNSの情報は、少なくとも私(江端)にとっては、全く役に立たないもの(というか、ゴミ)でした。

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