自動車や航空宇宙でも活路を見いだすGaN技術:次世代パワー半導体を担う(1/2 ページ)
オランダの半導体メーカーNexperiaが最近主催したイベントの複数の参加者によると、自動車、民生、航空宇宙用途では、電力転換などのアプリケーションにGaN(窒化ガリウム)技術の利点を活用しつつある。
オランダの半導体メーカーNexperiaが最近主催したイベントの複数の参加者によると、自動車、民生、航空宇宙用途では、電力転換などのアプリケーションにGaN(窒化ガリウム)技術の利点を活用しつつある。
「キュービックGaN」など、開発が活発化
例えば、Kubos Semiconductorは「キュービックGaN」と呼ばれる新素材を開発中だ。同社のCEO(最高経営責任者)であるCaroline O’Brien氏は、「キュービックGaNは立方体の窒化ガリウムで、150mm以上の大型ウエハー上で生成できるだけでなく、より大きなウエハーサイズにスケーリングできる可能性がある。そうなれば、既存の生産ラインにシームレスに投入することも可能になる」と述べた。
パワーマネジメントにおけるワイドバンドギャップ(WBG)半導体の範囲の拡大に取り組む企業もある。英国のRicardoは、GaNとSiC(炭化ケイ素)技術の両方を用いて、電力関連の取り組みを拡張している。
Ricardoの主席エンジニアであるTemoc Rodriguez氏は、「Teslaが自動車メーカーとして初めて、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の代わりにSiC(シリコンカーバイト)を用い、WBG材料の使用をさらに拡大することで電力効率を高めながら、パワーコンバーターのサイズと重さを減らす方向に向かうトレンドを打ち立てた」と述べた。
さらに、HexagemのCEOであるMikael Björk氏は、コストを削減しながら将来のアプリケーションにおけるスケーリングの利点を増やすよう工夫されたGaN-on-Silicon技術の開発について説明した。Björk氏は「われわれは定格電圧の観点でより高い要件に目を向けている」と述べた。
イベントを主催したNexperiaは、新世代のGaN技術がいずれも性能面で安定した進歩を遂げ続けていると述べた。より具体的には、現在のシリコンのコスト優位性を上回る形で進化しているという。シリコン技術では、そうした斬新的な改善として現れる進化はわずかだと、支持者らは議論している。
高効率パワーコンバーター、電化への要求に応える
CO2排出量削減へのプレッシャーが高まる中、自動車から通信に至る産業部門は、さらに効率の高いパワーコンバーターや電化への投資を求められている。IGBTをはじめとするシリコンベースのパワー半導体技術には、動作周波数と速度という観点で基本的な限界がある。加えて、同技術は高温性能や低電流性能に乏しい。同様に、高電圧Si FETの周波数と高温性能も限られている。
そうした限界によって、さらに多くのアプリケーション設計者がWBG半導体の検討を促されている。
Kubos SemiconductorのO’Brien氏は「より小型で高効率という理由で、GaNが、これまでは知られていなかった、または普及していなかったアプリケーションを実現していると考えている。そうしたアプリケーションの一例として小型の基地局が挙げられる。より小型のシステム設計には大きなチャンスがある」と述べた。
特にDC-DCコンバーター向けの最大5〜10kWのアプリケーションでは、スイッチング周波数特性が重要なポイントになる。Rodriquez氏は「通信やエネルギーだけでなく、家電でも検討できる指標はそうした種類である」と付け加えた。
HexagemのBjörk氏は、高電圧化とともに、コスト削減のためにGaNデバイスの生産を最適化しながら、ウエハーのスケーリングを進めることを強調した。同氏は、「現在は、150mmウエハーが市場の主流だが、将来的には200mmウエハーへの拡大も可能だ。そしてさらに、300mmへの挑戦もあるかもしれない」と述べていた。
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