電機8社の21年度上期決算、東芝の「脱・総合電機」に注目:大山聡の業界スコープ(47)(2/4 ページ)
大手電機8社の2021年度中間決算が出そろった。前年度(2020年度)と比較して、業績を回復させた企業が多かった。だがその中で、回復に物足りなさを感じる企業や、東芝のように「脱・総合電機」を決意した企業があり、全体的に注目度の高い決算発表が多かった。各社の決算内容を振り返ろう。
産業メカトロニクスが復活する三菱電機
三菱電機の2021年度上期業績は、売上高2兆1384億円(前年同期比2364億円増)、営業利益1378億円(同765億円増)、当期利益1209億円(同359億円増)であった。
重電システム部門は、社会インフラ事業が交通事業の減少、ビルシステム事業がコロナの影響による市況低迷などで、減収減益を余儀なくされた。産業メカトロニクス部門は、FAシステムが半導体・電子部品・スマホ・蓄電池関連の設備需要増大、自動車機器事業が新車販売の増加で、大幅な増収増益を達成した。情報通信システム部門は、システムインテグレーションやITインフラサービスで大口案件の減少があり、微減収微減益だった。電子デバイス部門は、パワー半導体の需要増で増収だったが、液晶事業の終息に伴う費用増で減益になった。家庭電器部門は、空調機の需要増などで増収増益であった。
2021年度通期の会社計画は、売上高4兆5000億円(前年度比3086億円減、前回計画から100億円減額)、営業利益2800億円(同499億円増、同200億円増額)、当期利益2200億円(同269億円増、同100億円増額)としている。過去、産業メカトロニクス部門は年間で2000億円近い営業利益を叩き出しており、そのレベルには達していないものの、同部門は三菱電機の収益の柱であり、その収益回復はポジティブに評価できよう。
収益の柱が育っていないNEC
NECの2021年度上期業績は、売上高1兆3828億円(前年同期比678億円増)、調整後営業利益421億円(同131億円増)、調整後当期利益261億円億円(同95億円増)であった。
社会公益部門は、公共向けや地域産業向けの需要減で減収減益だったが、社会基盤部門は、連結子会社(日本航空電子)の好調などで増収増益になった。エンタープライズ部門は、製造業向け、流通・サービス向け、金融業向けのいずれもが堅調に推移して増収増益、ネットワークサービス部門は、5G関連以外が伸び悩んで売上は横ばいだったが、収益は改善した。グローバル部門は、デジタル・ガバメント、デジタル・ファイナンスを中心に堅調で増収増益、黒字化を達成した。
2021年度通期の会社計画は、売上高3兆円(前年度比60億円増)、調整後営業利益1550億円(同232億円減)、調整後当期利益900億円(同754億円減)、期初予想から変更はなかった。各社が大きく増収増益を見込んでいる今期、同社の停滞振りはネガティブな印象である。日本のIT業界を代表すべき企業として、もっと注目を集める実績を叩き出してほしいものである。少なくとも、収益の柱になるような事業を育てることが必要ではないだろうか。
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