GIGAスクール構想だけでは足りない、「IT×OT×リーガルマインド」のすすめ:踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(16)STEM教育(4)(7/10 ページ)
今回は、全国の小中学生に1人1台のコンピュータと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組みである「GIGAスクール構想」と、その課題から、“江端流GIGAスクール構想”を提案してみました。
GIGAスクール構想のトラブルは、「起こるべくして起きた」
そもそも、GIGAスクール構想におけるトラブルは、「起こるべくして起きた」のです。理由は、教育用のITシステムを全体として俯瞰し、監視、管理、運営する主体「トラブルシュータ」が存在しなかったことにあります。
もちろん、このような問題が起きないように準備しておく必要もありますし、問題が発生したら即座に対応する体制作りも必要ですが、これは、これから10年間くらいかけて作っていく必要があります。
また、システムの不備や問題点があったとしても、子どもや大人に関係なく、違法行為は違法行為であって、その報いを(自分だけでなく、親、教師も)受けることがあることを教えておく必要もあります。
ですから、GIGAスクール構想では、ITとOTの他に、リーガルマインド(遵法精神)も併せて教える必要があるのです。
あなたのことは全て「バレている」
ところで、IT教育で最初に教えるべきことは、『ネットワークを使った段階で、自分のことは他人に全てバレている』ということだと思っています。
例えば、私の場合であれば、
- 江端が、何曜日の何時ごろから、エロサイトの巡回を始めるか
- 江端が、どんなエロを嗜好しているか。ロリコンなのか、鬼畜なのか、近親相姦、BLなのか
- 江端がどんな媒体のエロを望んでいるのか。写真なのか、動画なのか、アニメなのか、マンガなのか。
というのは、全部他人にバレている、と腹をくくっています(筆者のブログ)。
なぜ、私がそう思えるかというと、その実現手段(ハッキング(クラッキング))が頭の中でイメージできるからです ―― そして、実際、それ(ハッキング(クラッキング))はそんなに難しくないのです。
ラズパイにカーネルをインストールするだけの技量の持ち主であれば、真剣に1年くらい勉強すれば、独学で、ざっくりしたハッキング(クラッキング)手法は、履修できると思います。間違いなくTOEICよりはラクです(江端私感)。
話を戻しますが、『ネットワークを使った段階で、自分のことは全てバレている』を実感するには、座学ではだめで、サーバのアクセスログに、自分のコンピュータの情報や、自分の名前、検索キーが全部記録されていることを、見せつけるだけで十分です ―― 子どもたちは、その事実だけで、青冷めてしまうことでしょう。
つまり、自分たちが使い倒しているモノ(コンピュータやネットワーク)について、自分たちが、いかに無知(ナイーブ)であるか、を実感することで、「リーガルマインド」の履修は一気に進むと思うのです。このような方法を使わない手はありません。
つまり、ITとOTの恐怖を子どもたちにたたき込んだ上で、さらに、サイバー攻撃の具体的な手法を学ばせることによって、「国家安全保障としての"IT"と"OT"と"リーガルマインド"教育」を完成させるのです。
私たちは既に“武器(=スマホやパソコン)”を手にしている
もちろん、私の提案に対して、山のような突っ込み来るだろうことは、この時点で分かります。「子どもたちに犯罪の手口を教えて、犯罪予備軍にしてどうする」というのは、至極まっとうな意見です。
我が国は、「銃に触れただけで犯罪になる」という法律を制定し運用することで、世界で最も安全で安心な国家として国際的に認められています。そして、暴力装置(警察、自衛隊)は、その暴力の発動条件や限界を、きっちり法律で規定しています。
故に、ハッキング(クラッキング)に関しても、わざわざ子どもたちに教える必要はない、というのはもっともな意見ですが ―― 私たちは、もう、既に「銃を携行している」状態なのです。スマホやパソコンは、攻撃される対象であると同時に、他の国のシステムを攻撃できる、立派な自衛の武器であり戦闘兵器です。
サイバー攻撃は、特殊な装置や高価な機材を必要としません。パソコンと、それをオペレーションする技術を有する人間がいれば足ります。そして、今や世界は、全員が攻撃兵器を所有している状態なのです。
皆さんの多くは、「また江端が話を盛ってやがるぜ」と思っているかもしれませんが、もし、これがデタラメである思うのであれば、実際に、前述の様に1年間くらい真面目に勉強をしてみてください。私がウソをいっていないことが分かるはずです。
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