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GIGAスクール構想だけでは足りない、「IT×OT×リーガルマインド」のすすめ踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(16)STEM教育(4)(8/10 ページ)

今回は、全国の小中学生に1人1台のコンピュータと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組みである「GIGAスクール構想」と、その課題から、“江端流GIGAスクール構想”を提案してみました。

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GIGAスクール構想の教科にできそうな「サイバー攻撃」を見つくろってみる

 というわけで、ここから先は、囂囂(ごうごう)たる非難を受けることを前提で続けます。

 まず、ざーっと、サイバー攻撃の種類を挙げてみて、その上で、GIGAスクール構想で教えられそうな、サイバー攻撃を見つくろってみました。

 GIGAスクール構想で、プロのハッカー(クラッカー)を育成する必要はありません。必要なのは、私たちは、サイバー攻撃の被害者にも加害者にもなり得る(しかも、かなり簡単に)、ということを、子どもたちに体で理解してもらえれば、取りあえず良いのです。

 (その後はいろいろあると思いますが、ここでは言及しません。実際に防衛省が、その手の人材を集める準備を始めているようです(参考))。

 まず、この、「サイバー攻撃教育」を実現する為に必要となる教育環境(教材と内容)について検討をしてみました。

 ―― うん、問題は、この上記(2)を乗り越えられる子どもが、どれだけいるか、だな

と思っています。残念ですが、ここをすっ飛ばして、サイバー攻撃教育に入ることは難しいです。しかし、体系的に(座学等で)教えても身につかないと思うので、これは、実際の攻撃の練習を重ねて覚えていくことが、てっとり早いでしょう。

 では具体的に、どんな攻撃方法を教えるべきか、を検討してみました。下記の複雑で高度なプログラミングやオペレーションを必要としない、5つのサイバー攻撃を抽出してみました。

 上記の(1)(2)くらいまでなら、中学生レベルでも簡単にできそうです。クラスの友人同士iPadやPCを使っての攻撃の練習ができると思います。併せて、攻撃対象を特定する方法の学習なども可能です。大切なのは、攻撃と防御をバランスよく履修するということです。

 (4)は、比較的時間が必要となると思うので、「夏休みの宿題」あたりにすると良いでしょう。

 (5)のサーバは、攻撃用のサーバを学校で準備すれば良いでしょう。ラズパイを校長室に置いて、サーバを立てて(ドメイン名も取って)攻撃練習用サーバとした上で、そのサーバの中に「大学推薦書」のファイルを置いておけば、受験生たちが猛烈な勢いで、サーバ攻撃をしかけてくることでしょう ―― 多分。

 さて、ここまでの内容を纏めて、図中に具体的な施策(例)を記載してみました。

 これが、私の考える、“IT x OT x リーガルマインド” をベースとした、「サイバー攻撃教育」の骨子となります。



 「国家安全保障としての"IT"と"OT"と"リーガルマインド"教育」というのは、なんか、言い方が不穏当です。なんか、「愛国心」とか「忠誠心」とか、そういう、ベタベタした観念がつきまといそうな不快感もあります。これについては、「リカレント教育【前編】 三角関数不要論と個性の壊し方」の記事でも記載しています。

 私、日本国にそれほど大切にしてもらった記憶がないので、日本国を愛する気持ちは希薄です。

 ですので、このコラムで言うところの、私の「国家安全保証」とは、

(1)突然、原発の制御システムが奪われて原子炉をメルトダウンさせられたり、
(2)電力網システムをハッキング(クラッキング)されて、長期間の停電を余儀なくされたり、
(3)投票システムに侵入されて当選者を変更させられたり、
(4)デマなどで、心を制御されて(マインドハッキング)されて、『ワクチン打つと体が磁石になる』というような、たわけたことを信じさせられたりしない

そういう「安全で安心な日常がずっと続いて欲しい」という意味の「国家安全保証」です。くれぐれも、2006年あたりに、法律の文言の中に「愛国心」を入れようと奮闘した政治家なんかとは、一緒にしないようにして下さい。

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