米BrainChipがSNNプロセッサ向け開発キットを発表:CNNにも変換可能
ニューロモーフィックコンピューティングIP(Intellectual Property)のベンダーである米BrainChipは、2021年10月に米国カリフォルニア州サンタクララで開催され 「Linley Fall Processor Conference」で、同社のニューロモーフィックプロセッサSoC(System on Chip)「Akida」の開発キットを発表した。
ニューロモーフィックコンピューティングIP(Intellectual Property)のベンダーである米BrainChipは、2021年10月に米国カリフォルニア州サンタクララで開催され 「Linley Fall Processor Conference」で、同社のニューロモーフィックプロセッサSoC(System on Chip)「Akida」の開発キットを発表した。x86ベースのPC用開発キット「Shuttle」と、Armベースの「Raspberry Pi」キットの2種類がある。BrainChipは、SNN(スパイキングニューラルネットワーク)プロセッサを開発する企業向けに、これらのツールを提供する。
エッジシステムにおいては、極めて低い電力でセンサーデータをリアルタイム処理することが求められる。BrainChipのニューロモーフィック技術によって、エッジシステムでデータを分析するための超低電力AI(人工知能)が実現する。
BrainChipは、主流となっている深層学習のアプローチとは異なる、脳から着想を得たニューラルネットワークであるSNNを処理するよう作られたNPU(Neural Processing Unit)を開発した。
SNNは脳のように、空間的、時間的に情報を伝える「スパイク信号」に依存する。つまり、脳はスパイクの順序とタイミングの両方を認識する。「事象(イベント)領域」と呼ばれるスパイクは、一般的にセンサーデータの変化の結果である(例えば、イベント反応型カメラにおけるピクセルの色の変化など)。
SNN以外でも、BrainChipのNPUは、コンピュータビジョンやキーワードスポッティングアルゴリズムで一般的に用いられるCNN(畳み込みニューラルネットワーク)も処理することが可能だ。これは、CNNをSNNに転換し、イベント領域で推論を実施することで行われる。
BrainChipの共同設立者で最高開発責任者でもあるAnil Mankar氏は、米国EE Timesに対し「Akidaは将来のニューロモーフィック技術の準備ができており、エッジデバイスやIoT(モノのインターネット)デバイス上で推論を行う際の課題も解決する」と説明する。
CNNの変換は、BrainChipのソフトウェアツールフローである「MetaTF」によって行われる。このソフトによりデータはスパイク信号へ変換され、学習後のモデルはBrainChipのNPU上で作動するよう変換される。
Mankar氏は「われわれのランタイムソフトウェアによって、SNNやイベント領域などに関する知識がなくても、扱えるようになる」と述べる。「TensorFlowやKeras APIに慣れているユーザーであれば、別のハード上で動作しているアプリケーションやネットワーク、データセットをそのまま用いて、当社のSNNプロセッサ上で動作させ、消費電力や推論精度を自分の目で確かめることができるだろう。その際は、当社の量子化技術を併用すると便利だ」(同氏)
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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