半導体サプライチェーンを合理化するシステム:米独企業が連携して強化
ドイツの多国籍企業であるMerckの半導体材料部門と米国のデータ分析のスペシャリストであるPalantir Technologies(以下、Palantir)は、半導体メーカーとサプライヤーを対象とするコラボレーションプラットフォームを介して半導体不足の解消に取り組むために技術提携したと発表した。
ドイツの多国籍企業であるMerckの半導体材料部門と米国のデータ分析のスペシャリストであるPalantir Technologies(以下、Palantir)は、半導体メーカーとサプライヤーを対象とするコラボレーションプラットフォームを介して半導体不足の解消に取り組むために技術提携したと発表した。
両社は2021年12月7日、同パートナーシップの下、データ分析とAI(人工知能)を活用し、「Athinia」と呼ぶプラットフォームを介して半導体製造を前進させる計画を明らかにした。このコラボレーションツールによって、半導体工場の運営者と化学および材料サプライヤーを結び付け、工場のデータを安全に共有および分析することで、効率を高めて、現在のサプライチェーンの混乱に対処する。
Athiniaは、Palantirの大企業向けファウンドリーオペレーティングシステムをベースにしたセキュアなデータ分析プラットフォームである。この新しいプラットフォームは、ガスや蒸着材料から、リソグラフィやフォトレジスト用の化学物質に至るまで、IC製造の必需品に関するデータを分析する。米国の半導体メーカーがICの生産拡大に取り組む中で、サプライチェーンの合理化を目指す。
半導体メーカーは、チップの歩留まりなどの機密データに関しては厳しく管理している。PalantirのAlec McShane氏(Athiniaのエグゼクティブバイスプレジデントに就任予定)は、「Athiniaはセキュアなプラットフォームであり、IPが侵害される心配はない」と述べている。
Merckは、Palantirとの合弁事業に加えて、2025年までに米国のアリゾナ州とカリフォルニア州、ペンシルバニア州、テキサス州の製造施設に10億米ドルを投資することも発表した。半導体およびディスプレイ分野を対象とした同イニシアチブは、Merckの北米事業部門であるEMD Electronicsが担当する。
Athiniaは、暗号化して匿名化した工場のオペレーションデータをサプライヤーの情報と組み合わせることで、米国の半導体メーカーが最先端の7nmプロセスノードを増強する支援を行う。AthiniaのCEOで、MerckのCSO(最高科学責任者)兼CTO(最高技術責任者)であるLaura Matz氏は、「パートナー企業は、工場の稼働率を高めながら、必要に迫られている新たな生産能力を獲得する方法として、材料に関するコラボレーションを重視している」と述べている。
Matz氏はインタビューで、「Athiniaは、原材料やバッチデータ、生産スケジュールなどのデータベースを統合するために使用する」と述べた。Palantirのデータ分析技術は、構造化分析や非構造化分析、時系列分析など、さまざまなデータソースを処理できるという。
Merckのエレクトロニクス部門のCEO(最高経営責任者)を務めるKai Beckmann氏は、声明の中で、「半導体不足の解消には、業界全体が協力して、消費者が現在直面しているサプライチェーンの問題を解決する必要がある。当社は、生産能力の拡大に向けて米国に投資する」と述べている。
PalantirのCOO(最高執行責任者)を務めるShyam Sankar氏も、同パートナーシップを主導する1人である。Merckは同パートナーシップに先立ち、Palantirとヘルスケアの合弁会社を設立した。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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