製造装置用部材/電子デバイスともに絶好調、積極投資で急成長を続けるフェローテック:フェローテックホールディングス 社長兼グループCEO 賀賢漢氏
真空シールなど半導体等装置関連事業と、サーモモジュールなど電子デバイス事業を中心に展開するフェローテックグループ。昨今の半導体需要の高まりを受け、両事業ともに好調で、中期経営計画で掲げた業績目標を上回るペースで事業規模を拡大させている。「今後も旺盛な需要は続く見通しであり、積極投資で需要に応えていく」とするフェローテックホールディングス代表取締役社長兼グループCEO(最高経営責任者)を務める賀賢漢氏に今後の事業戦略について聞いた。
いち早く中国に進出し、真空シール/サーモで高シェア獲得
――フェローテックのこれまでの歩みについて教えてください。
賀賢漢氏 当社は、1960年代にNASAスペースプログラムで開発された磁性流体をコア技術に持つ米国企業の日本法人として設立された。その後、コンピュータ/真空シール、サーモモジュールなどを手掛ける中で、コスト競争力を高めるため、1992年に中国での生産を開始するなど、いち早く中国に進出して事業を拡大してきたことは当社の特長の1つだ。
1999年には米国の親会社を逆買収し、事業のグローバル化を加速してきた。また当時から真空シールやサーモモジュールで世界トップクラスの高いシェアを有していたものの、市場規模の大幅な拡大が見込みにくかったため、積極的なM&Aも交えて、さまざまな新規事業を立ち上げてきた。シリコンウエハー加工受託事業や、セラミックス事業、サーモモジュールの製造技術を生かしたパワー半導体基板事業などだ。2000年代には太陽光発電パネル向けの引き上げ炉やウエハー、石英るつぼ、さらには、太陽光発電セル自体も手掛けた。ただご存じの通り、2010年すぎには太陽光発電関連の需要が激減し、その後太陽光発電関連の事業は大幅に縮小した。だが、そのノウハウを半導体デバイス製造用途に転用し、引き上げ炉や石英など半導体製造装置向け治具/消耗品事業や、受託装置部品洗浄事業を展開し、一定のシェアを獲得することができた。
いずれの事業も、日本を中心に素材や生産技術の開発を進め、中国市場を中心にして大きく事業を成長させてきた。
記録的な業績で中期計画を前倒し達成へ
――直近の業績はいかがでしたか。
賀氏 2022年3月期中間業績は、売上高が前年同期比44%増の598億円、営業利益が前年同期比174%増の107億円と大変好調だった。事業別では、真空シールや石英、セラミックス、シリコンパーツなどが主力の半導体等装置関連事業が359億円(前年同期比25%増)。サーモモジュール、パワー半導体用基板などで構成する電子デバイス事業が122億円(同72%増)で、事業別にみても記録的な業績になった。
これを受けて、2022年3月期通期業績予想を売上高1250億円、営業利益225億円に上方修正した。
2024年3月期を最終年度とする中期経営計画では、来期(2023年3月期)の目標として、売上高1250億円、営業利益190億円の達成を掲げていたので、それを1年前倒しで達成できる見込みだ。
――中期経営計画では最終年度の2024年3月期目標として、売上高1500億円、営業利益250億円を掲げられていますが、上方修正されるのでしょうか。
賀氏 まずは、上方修正した今期の業績計画(売上高1250億円、営業利益225億円)を達成することに集中する。その後の業績目標については、詳細はもう少し精査した後に公表することになる。計画が1年前倒しで達成できる見込みであることに加えて、2022年も半導体製造装置関連、電子デバイス関連ともに好調な需要が続く見通しであり、その後の市場動向を見極めながら、2023年3月期以降の業績についても慎重に検討を重ねていきたい。
生産能力増強を急ぐ半導体製造装置向け治具/消耗材事業
――各事業の状況、今後の注力領域について教えてください。まずは、半導体等装置関連事業はいかがですか。
賀氏 石英、セラミックス、CVDーSiC、シリコンパーツの4製品が中心の半導体製造装置向け治具・消耗材については、いずれも昨今の半導体デバイス需要増に伴い、需要が大きく拡大し、生産能力の増強を急いでいる。
2022年3月期から2024年3月期までの3カ年で950億円の投資を行う計画で、2021年12月にはその一環として約190億円レベルの公募、および第三者割当による増資を実施した。今回の増資で調達した資金の一部は、石英やセラミックスの増産に充てていく。石英は治具/消耗材群の中でも特に売り上げが伸びる見通しになっている。セラミックスとCVDーSiCは、石川工場、岡山工場で生産しており、日本における「材料、加工、コーティング技術」の開発優位が強みになって高い競争力がある。セラミックスについてはプローブカードなどに向けた高付加価値マシナブルセラミックスを強化しており、同セラミックスを生産する石川工場に新工場棟を建設しているところだ。2022年10月に完成し、2023年には本格稼働する予定で、石川工場の生産能力は今回の投資で1.5倍に、将来的には2倍にまで拡大する見込みだ。
サーモモジュール、パワー半導体用基板も拡大路線へ
――電子デバイス事業についてはいかがでしょうか。
賀氏 電子デバイス事業の主力のうちサーモモジュールは家電製品から光通信モジュールへと応用用途が広がり、ここ最近では医療機器へも採用が広がってきた。特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で需要が急増したPCR検査装置向けではかなり大きなシェアをいただいており、とても好調だ。今後も、医療分野や、第5世代移動通信(5G)基地局向けも含めた通信分野での需要増が見込める他、自動車分野でもサーモモジュール需要が拡大していく見通し。温調シート座席や加熱冷却機能付きカップホルダーをはじめ、カメラやレーダーセンサーの冷却用途など、数多くのアプリケーションがある。将来的に大きな売り上げ規模が見込める領域であり、提案を強化していく。また、サーモモジュールをベースにフェローテックとして、美容機器や空調服など最終製品も自ら開発、販売していくビジネスもさらに広げていく。当然、サーモモジュールも増産する必要があり、先日の公募、および第三者割当による増資の一部を中国のサーモモジュール工場の増産投資に充てていく。
近年急成長し電子デバイス事業のもう1つの主力に育ったパワー半導体基板については、引き続き世界的な消費電力削減のトレンドに乗って需要は拡大を続け、不足している状況だ。現状、シェアをリードする家電、産業機器向けのDCB基板に加え、主に車載向けのAMB基板や今期参入した高耐熱・高強度のDPC基板も増産投資を積極的に行い、パワー半導体基板全体での世界トップシェアを3年以内に獲得したいと考えている。
磁気流体についても、スマートフォンや車載などのスピーカー向けに加え、マイクロビーズの原材料としてバイオメディカル向けにも拡販し、応用用途を広げていく。
――2021年3月には、大泉製作所と資本業務提携を結ばれました。
賀氏 大泉製作所の株式の29%を取得する形で資本業務提携を締結した。大泉製作所は、熱・温度変化によって電気抵抗値が変化する半導体セラミックスのサーミスタを利用した温度センサー/電子部品を強みにする。特にフェローテックが注力し始めている車載市場向けで大きなシェアを有している。車載以外にも温度センサーの応用用途はとても幅広く、大きな市場規模が見込める。フェローテックの材料技術や生産技術、品質管理ノウハウなどを応用した新製品開発なども積極的に進めながら、サーモモジュールやパワー半導体用基板などでリレーションのある中国の自動車メーカーをはじめとしたフェローテックの顧客への拡販を検討していきたい。
日本でのさらなる売り上げ拡大に向け体制強化
――日本市場での事業戦略について教えてください。
賀氏 中国を中心に売り上げ規模を成長させてきたが、中国以外の地域も重要な市場だと考えている。特に、日本、米国での事業規模をさらに拡大させることが大切だと考え、事業強化を進めている。米国については、事業規模の拡大が続いており、さらなる成長には事業体制の構造改革が一部必要ではあるが、順調に成長してきた。日本については売り上げ比率が20%に満たず、市場規模から考えてもまだまだ低く、強化を急いでいく。
具体的には、セラミックス関連製品での伸びしろが大きいと考えている。そこで、半導体等製造装置関連向けの特殊セラミックスの生産能力を高めるため、石川工場に新製造棟を建設しているわけだ。セラミックス以外にも、CVD-SiCも国内需要は強く、売り上げを伸ばす余地は大きい。また、中国でのビジネスが中心になっている金属加工についても、国内の需要を取り込み売り上げ拡大につなげていく。
――最後に、今後の市況見通しを教えてください。
賀氏 半導体製造装置や電子デバイスに対する旺盛な需要は、中長期的に続いていくだろう。2022年の需要に応えるための、設備投資については既に手を打ち終えたが、中期経営計画の方針に基づいて、2023年以降の需要に応えるための投資を行い、旺盛な需要に応えていく。
提供:株式会社フェローテックホールディングス
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年2月10日
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