英国に本拠地を置くディストリビューターであるリバウンドエレクトロニクスは、半導体/電子部品の供給難が続く中、独自の調達ネットワークを駆使して製品を提供し、業績を大きく伸ばしている。日本法人の代表取締役を務める塚原雅之氏は、独特の商習慣が存在する日本市場で、“買い方改革”を推進したいと意気込む。
――まずは、リバウンドエレクトロニクスについて教えてください。
塚原雅之氏 リバウンドエレクトロニクスは、英国に拠点を置く半導体/電子部品のディストリビューターだ。18カ国に36拠点があり、欧州と香港に倉庫を保有している。独立した企業で全社売上高の半分を欧州が占める。特にドイツ、フランスの売り上げ規模が大きく、ドイツでは車載や医療、産業機器、フランスでは車載と航空防衛の分野に強い。
アジアには、この5〜6年で進出し始めた。シンガポールを皮切りに、中国・深センや香港、台湾、フィリピンなどにも拠点を持っている。
――リバウンドエレクトロニクスの強みや、リバウンドエレクトロニクスならではのサービスとは何でしょうか。
塚原氏 当社の最大の強みは調達力だ。ドバイに購買拠点を設け、そこで調達業務を一元管理している。調達業務を専門に行うスタッフが世界各国/地域の正規代理店と交渉し、集中購買を行うことで、迅速な調達が実現できている。
技術サポートは行わない方針だが、不良解析依頼の代行など、顧客の要望に応じて柔軟でシンプルにサポートできる体制を整えている。
――「購買拠点」を設けることで、他にはどのような利点があるのでしょうか。
塚原氏 購買に関わるあらゆる業務をドバイに一元化させることで、「購買」と「営業」を完全に分業し、非常に効率のよい調達ネットワークを構築できている。
ドバイでは、各国/地域の営業担当からの問い合わせを一括で受け付け、製品の在庫状況から価格、倉庫への発送時期、見積書まで全て、営業担当宛てに回答する。早いときには、こちらから問い合わせて5〜10分で回答を得られる。分業により、営業担当が、営業活動のみに集中できる環境が整っているので、迅速な顧客対応が可能になっている。
――2019年6月に日本法人を設立して以来、約2年半がたちましたが、設立当初と比較して、ビジネスの進捗や日本法人の規模はいかがですか。
塚原氏 設立当初からすると、ビジネスの規模は飛躍的に増加した。特に半導体不足が日本で露呈した2021年2月から、驚異的な伸びを見せている。「従来よりも低価格の製品を、特に中小企業に向けて販売する」という当社の戦略に基づき、当初のターゲット層は中小企業だったが、現在は大手企業を含め、全ての企業がターゲットになっている。
日本は、見積書や伝票などの書類からサポートまで、全て日本語で行うことが要求されるなど、特殊な商習慣を持つ国だ。そのため、サポートやサービスを日本に最適化して行っている。例えば不良解析のサービスでは、メーカーに不良解析を依頼し、英語のレポートを日本語に翻訳するところまで行う。メーカーでの解析ができない場合は国内の専門機関に不良解析を依頼することも可能だ。通常、外資系ディストリビューターがこうした業務を担うことはないが、リバウンドエレクトロニクスでは行っている。これらのきめ細かいサービスが信頼につながると考えている。
――2021年の業績はいかがでしたか。世界的な半導体/電子部品不足が続いていますが、ビジネスにはどのような影響があったのでしょうか。
塚原氏 当社は非公開企業のため具体的な数字は公開していないが、業績の伸びという点では“異常事態”ともいえるような年だった。特に半導体装置分野からの引き合いが非常に大きかった。
半導体や電子部品の供給難が続く中、顧客の反応も変わりつつある。新しい代理店の開拓や取引手続きの迅速化など、従来とは異なる対応を行う顧客も増えており、それも当社にとって追い風となった。
――2021年に行った主な事業戦略を教えてください。
塚原氏 本来の戦略は部品のコストを下げて顧客に販売することだが、半導体/電子部品不足が続く2021年は、そういったコスト低減をオファーしていくビジネスが不可能だった。そのため、戦略を変更して、「いかに顧客に製品を届けるか」に専念した。
日本には特殊な商習慣が存在することもあり、価格変更などの対応が難しい。そのため、海外で流通している半導体や電子部品は、価格よりも入手を重視する国や企業に優先的に出荷されていく。日本はアロケーション(配分/割り当て)において優先度が低いようにも見受けられ、結果として部品が入ってこない状況に陥っている。
こうした背景から2021年は、価格を吸収できた上で、部品入手を優先する大手企業の顧客が必然と増え、われわれが培ってきた購買/調達ネットワークを駆使して、半導体や電子部品を海外、特に欧州から調達し販売することに全力を尽くした。
――2022年の半導体市場の見通しをお聞かせください。
塚原氏 今年(2022年)も半導体や電子部品の供給難は続くだろう。ただ、メーカーが生産能力を増強し、生産量が増えてくれば次第に落ち着き、いったん半導体市場がリセットされるのではないか。供給難の状況が下火になってきたら、本来のコストダウンの戦略に戻して集中する。それまでは、幅広い顧客層に徹底してアピールを続けていく。現在は顧客からの紹介も多くなっており、よい循環が始まっている。
――2022年の事業計画や投資計画を教えてください。
塚原氏 現在は従業員を増やして、新規顧客の開拓により注力できるようにしているところだ。営業担当も倍々で増えており、2022年2〜3月にかけてさらなる増員を予定している。加えて、COVID-19の影響で遅れている大阪と福岡の営業所の立ち上げを早期に行う。地域密着でお客さまとの関係構築を図るためだ。このような時代だからこそより一層、お客さまとface to faceで手を携えてモノづくりを支えていくことが当社のポリシーであると考える。
将来的には、各地域で展開している地場の小規模なエレクトロニクス代理店と協業したり、必要に応じて事業を継承したりすることも視野に入れている。
――日本市場をどのように見ていますか。既に代理店やディストリビューターが数多くある日本では後発となりますが、勝算についてお聞かせください。
塚原氏 独特の商習慣が根強く存在する日本市場で、“買い方改革”を推進していく。欧州に本拠地を持つわれわれが、これまでとは異なる“買い方のオプション”を示すことで、顧客がメーカー品質の製品をより安価に、より速く、確実に入手できるよう貢献していきたい。
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提供:リバウンドエレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年2月10日