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講演会場が静まり返った――中国が生み出した衝撃のトランジスタ構造湯之上隆のナノフォーカス(82)EE Times Japan20周年特別寄稿(1/7 ページ)

EE Times Japan 創刊20周年に合わせて、半導体業界を長年見てきたジャーナリストの皆さまや、EE Times Japanで記事を執筆していただいている方からの特別寄稿を掲載しています。今回は、独自視点での考察が人気のフリージャーナリスト、湯之上隆氏が、2025年の「VLSIシンポジウム」で度肝を抜かれた中国発の論文について解説します。

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2025年はAnniversaryのオンパレード


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 EE Times Japanは2005年6月24日に創刊し、2025年で20周年を迎えました。筆者の手元には2005年7月号の創刊号の冊子がありますが、ページをめくって眺めてみると、大変感慨深い思いがこみ上げてきます。ここで、20年間にわたって半導体技術の最前線を追い続けてこられた関係者の皆様のご尽力に、心より敬意を表したいと思います。

 また筆者は、2018年8月9日に初めてEE Times Japanに寄稿して以来、「湯之上隆のナノフォーカス」というコラムで約8年間、記事を書かせて頂きました。本稿は第82回目のコラムとなりますが、このような機会を継続的にいただけたことに、深く感謝申し上げます。

 ところで、EE Times Japanが20周年を迎えた2025年は、世界の半導体産業にとって、どのような年なのでしょうか。

 2025年6月8日(日)から12日(木)にかけて、京都のリーガロイヤルホテルで開催された半導体の国際学会「VLSIシンポジウム」によれば、2025年は以下のような、歴史的節目が重なる年であることが明らかになりました。

1)1925年に電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)が発明されてから100周年
2)2002年にVLSIシンポジウムでGAA(Gate-All-Around)構造が発表されてから20年(と少し)
3)2004年に3D stacked FETsの動作が初めて報告されてから約20年

 このように、2025年はEE Times Japanにとって20周年であると同時に、半導体技術の歴史的節目が重なる、極めて重要な年と言えるでしょう。これは単なる偶然ではなく、EE Times Japanという半導体専門誌が歩んできた歴史と、業界そのものの進化が重なった、運命的な一致と言えるのではないでしょうか。

 そこで本稿では、これらの記念すべき数々のAnniversaryを振り返るとともに、FET技術の今後の展望を論じたいとと思います。

 少しだけ結論を先取りしますと、FinFETやGAAに続く次世代FETとしては、2018年にimecが発表したCFET(Complementary FET)が有望視されてきました。しかし今回のVLSIシンポジウムでは、北京大学が「Flip FET(FFET)」を発表し、非常に大きな注目を集めました。

 つまりFlip FETは、FET誕生100周年の2025年に、彗星のごとく登場した新たなトランジスタ技術であり、今後の100年の半導体産業に足跡を残すかもしれません。



FET誕生から100周年記念のSpecial Workshop

 VLSIシンポジウム初日の6月8日(日)には、なんと12セッションものWorkshopsが開催された。発表件数を数えてみると、合計95件にも及んでいた。

 このWorkshopsは、レギュラーセッションでは取り上げにくい半導体のトピックを扱う場として位置付けられており、月曜日のショートコースや火曜日からのレギュラーセッションに先立って、日曜日に実施されている。Workshopsは、2019年に試験的に導入されたが、非常に好評だったことから、現在ではVLSIシンポジウムの“前哨戦”としてすっかり定着した。

 そして筆者は今回、「Centennial Anniversary of FET Invention: Past, Present, and Future」をテーマとするSpecial Workshopに参加した。このセッションでは、OpeningとClosingを含めて合計10件の発表があった。

 そこで筆者は、東北大学の遠藤和彦教授によるOpeningによって、ことし2025年が、FET誕生から100周年を迎える記念の年であることを初めて知った。その内容を次節で紹介したい(図1)。

図1 電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)の発明から100年
図1 電界効果トランジスタ(FET: Field Effect Transistor)の発明から100年[クリックで拡大] 出所:VLSIシンポジウム2025、Special Workshop、遠藤和彦(東北大学教授)、“Centennial Anniversary of FET Invention: Past, Present, and Future”の図に筆者加筆

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