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2050年までの世界半導体市場予測 第3弾 〜30年後もスイートスポットは28nmか湯之上隆のナノフォーカス(46)(4/5 ページ)

収束のメドが立たない半導体不足。本稿では、特に足りないのは28nmの半導体であることを以下で論じる。さらに本稿の最後に、1年前にも行った「2050年までの世界半導体市場予測」を再び試みたい。

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TSMCの苦しい台所事情

 TSMCの2021年の投資額は300億米ドル(約3.4兆円)だった。そしてことし2022年は、何と440億米ドル(約5兆円)を投資することが同年1月13日に発表された(図7)。昨年2021年までTSMCは、「3年間で1000億米ドル投資する」といっていたが、残りは260億米ドルしかない。


図7:TSMCの設備投資の推移(2009〜2022年)[クリックで拡大] 出所:TSMCのIR Dataを基に筆者作成

 しかし、2022年後半から3nmの量産を開始しなくてはならないし、2024年には2nmの量産が待っている。その先にも、間違いなく1.4nmや1nmが待ち構えている。2023年の投資が260億米ドルで済むとはとても思えない。どこまでTSMCの設備投資は巨額になるのだろうか?

 社員数にしても2020年に8000人増員して約5万6000人になり、2021年は9000人増やす予定となっていたが、本当に増員できたのだろうか? なぜこれほど投資をし、社員数を増やすのかというと、ほぼ全ては最先端の微細化を進め、その半導体を量産するためである。

 このように最先端の半導体の量産と開発にほぼ全てのリソースを集中しているTSMCには、いくら世界中から生産委託が殺到しているといっても、10年前のレガシーな技術の28nmの工場を新設する余裕はないだろう。

渡りに船の日本政府の誘致

 このようにTSMCは、最先端は進めなければならない上に、レガシーな28nmの生産委託も殺到するという苦しい状況に追い込まれたと思われる。

 TSMCは最先端に特化しなければならないが、28nmも無視できない。というのは、昨年2021年1月25日に、日米独の各国政府から台湾政府を経由して車載半導体の増産要請をされたこともあり、28nmを放置すると、政府からの圧力がかかると予想されるからである。

 ところが、このようなタイミングで、日本政府と経済産業省が、しきりに日本への工場誘致を口説いてくる。TSMCの地域別売上高比率では、日本はたかだか4〜5%しかビジネスがなく、日本のために工場をつくる合理的な根拠は何もない(図8)。


図8:TSMCの地域別売上高比率(%)[クリックで拡大] 出所:TSMCのHistorical Operating Dataを基に筆者作成

 しかし、経産省の話を聞くと、28〜22nmの月産4.5万枚の工場については、ソニーの熊本工場の隣に工場用地は準備してくれるし、インフラも整備してくれて、建設費や製造装置費用の半分(4000億〜5000億円?)を助成してくれるというし、この支援は複数年続くというし、ソニーやデンソーも協力してくれるという。

 その上、日本政府や経産省やその他のアナリストなどから、「日本半導体の復興のために世界最先端の技術を持つTSMCが来てくれる」と感謝までされる。TSMCにとっては、もう願ったりかなったりの“美味しい話”である。TSMCの幹部にとってみると、笑いが止まらないのではないだろうか?

営利企業のために税金を使うな!

 TSMCはボランティアではないし、慈善事業団体でもない。れっきとした営利企業である。その事業は全て、営利目的のものである。日本の熊本に月産4.5万枚の工場をつくり、世界的に不足している28〜22nmを大量生産し、世界中に売りまくるわけである。そして、その利益は、TSMCの懐に入ってくることになる。

 ことしも個人事業主として、決して少なくない税金を払う筆者としては、TSMCという営利企業の利益のために、税金を使って欲しくない。TSMCが熊本の工場を作るのなら自力でやればいいのだ。ソニーやデンソーが協力したければ、どうぞご勝手に。

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