2050年までの世界半導体市場予測 第3弾 〜30年後もスイートスポットは28nmか:湯之上隆のナノフォーカス(46)(5/5 ページ)
収束のメドが立たない半導体不足。本稿では、特に足りないのは28nmの半導体であることを以下で論じる。さらに本稿の最後に、1年前にも行った「2050年までの世界半導体市場予測」を再び試みたい。
2050年までの世界半導体市場予測−第3弾−
2022年の最初の記事がこれで終わるとなると、かなり後味が悪い。そこで、昨年2021年もやった2050年までの世界半導体市場予測をことしもやってみたい。
ここで、世界半導体市場統計(WSTS)によれば、2022年の世界市場は6000億米ドルを超えるという(関連記事:「2022年の世界半導体市場規模は6000億米ドル超へ」)。この6000億米ドルというちょうどいい数字を見て、2050年の市場予測をやってみたくなったのである。
筆者は、過去に2回、2050年の世界半導体市場の予測を行った。1回目は、世界市場が3000億米ドルだった時の2011年だった。このとき筆者は、先進国と発展途上国で、それぞれ、1人1年間でいくら半導体を消費するかを算出し、2050年に先進国と途上国の世界人口の推定値を使って、2050年の世界半導体市場が7500億米ドルになると予測した。
筆者はこの予測値を半導体業界誌の『電子ジャーナル』(2015年に廃刊)に寄稿したが、「世界市場がそんなに大きくなるはずがない」と批判され、賛同してくれる人は少なかった。しかし、2022年に6000億米ドルになることを考えると、筆者の予測も、筆者を批判した人たちも、“過小評価”によって外れることになるだろう。
2回目に行ったのは昨年2021年の1月で、このとき筆者は、WSTSの統計データから、半導体出荷個数が毎年310億個ずつ増大していること、その出荷個数は10年で1.3倍になっていること、半導体の平均価格が0.46米ドルであること、などを基に2050年に世界市場が1兆123億米ドルと予測した。そして、この結果をEE Times Japanに寄稿した(拙著「2050年までの世界半導体市場予測 〜人類の文明が進歩する限り成長は続く」)。しかし、やはりその直後は「そんなに増大するとは思えない」と懐疑的に見られていた。しかし、2022年に6000億米ドルを超えるとなると、この予測値も“過小評価”になりそうである。
10年で2倍の法則
さて、今回は3度目の正直である。1991年から2022年までの世界半導体市場の推移のグラフを見てみると、1991〜1993年に600〜700億米ドルだった市場は1995〜2002年に2倍の約1500億米ドルになった。それから10年後の2010〜2013年に、その2倍の約3000億米ドルになった。そして、さらに10年後の2022年に、その2倍の約6000億米ドルになりそうである(図9)。
つまり、世界半導体市場は、「10年ごとに2倍になる」と言えそうである。このトレンドを使えば、2050年に世界半導体市場がどのくらいの規模になっているかが簡単に予測できる。図10にその結果を示す。10年ごとに世界市場が2倍になっていった場合、2050年頃には4兆8000億米ドル(約550兆円)と予測された。これは2022年の6000億米ドルの8倍である。
この市場予測をどう評価するか? 昨年2021年にこの結果を公開したら、誰も真面目に聞いてくれなかったかもしれない。しかし、TSMCが1年間で440億米ドルも投資する時代になったのである。あながち的外れとは言えないのではないだろうか?
そして、2050年になっても、SADPを一切使わず、プレーナ型のトランジスタだけで集積回路を形成する28nmは、依然としてスイートスポットの座にあるかもしれない。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。
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