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光トランシーバーのForm Factorの新動向(8) 〜CPO/NPOと新しいデータセンター光伝送技術を知る(19) 光トランシーバー徹底解説(13)(1/4 ページ)

前回の記事でお問い合わせを多くいただいたのが、新しい規格と紹介したNPO(Near Package Optics)と、CPO(Co-packaged Optics)が適用されると想定した新しい適用システムとして紹介したDisaggregated Systemに関してであった。今回はそれを少し詳しく触れてForm Factorの締めくくりとしたい。

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 前回の記事でお問い合わせを多くいただいたのが、新しい規格と紹介したNPO(Near Package Optics)と、CPO(Co-packaged Optics)が適用されると想定した新しい適用システムとして紹介したDisaggregated Systemに関してであった。今回はそれを少し詳しく触れてForm Factorの締めくくりとしたい。

NPOの動向

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 2021年9月にOIFが、NPOをサポートする「CEI-112G-XSR+」の規格化に向けて動き出すというニュースがあった(参考)。NPOはNear Package Opticsの略である。文字通り、ASICなどのPackageの近傍に配置搭載されるOpticsという意味だ。

 配線長を短くすることで消費電力の増加を抑えるという背景や必要性はCPOと同じである。技術的な困難さが予測されるCPOに対し、2023から2025年の実用化に向け提案されたと考えている。

 CPOの課題は、ASICに適用されるマイクロバンプなどを使用したPackageの高密度実装と両立できるかであり、以下のようなさまざまな項目が指摘されていた。

(1)ASICより劣るLaserの信頼性、特に高温環境下
(2)多数(例えば1024本)のFiber接続
(3)150mmx150mmの大型Package
(4)ASICとCPOの同時冷却構造
(5)新しいエコシステムの構築あるいはビジネスモデル

 こうした課題に対して、いくつかの提案があった。

 例えば(1)に対しては、CPOに専用Fiberを用いて光パワーを供給する外部光源(External Laser/Light Source、ELS)が提案されている。レーザーを外付けすることで故障時の交換を容易にしたり、温度管理を行うことで長寿命化を図ったりする目的である。しかし、外付けに伴う光損失の増加や特殊部品(PMF: Polarization Maintenance Fiberや耐高出力光コネクター)が必要など、懐疑的な意見もみられる。

 また、光出力は複数のデバイスのモニター、制御や管理が必要となり、光インタフェースの品質を管理する仕組みが新たに必要だ。光デバイスでは、光出力パワーを調整するVariable Attenuatorや、入力パワーモニターやアラームといった新しい機能が必要となる。光源供給は、電源供給とは異なる固有の課題があるのだ。

 (5)は重く、光技術者が多く携わっているFront Panel Pluggable Transceiverが3.2Tbit/s(恐らく2030年)まで使用されるという予想状況下では、経験とスキルのある技術者は静観しているように見えた。

 これに対してNPOは、XSR+という新しいインタフェースを有する、より現実的な提案になっている。

(1)ASICのPackageと同じレベル(BGAやLGA)の電気実装
(2)フィールド(例えばデータセンター内)で交換可能
(3)試験された最終部品(CPOでは中間部品)
(4)VCSEL/MMF適用可能
(5)NPOと置き換え可能な高周波低損失の同軸細線コネクターが可能

 (1)と(2)は特に重要で、CPOがPackage組み立てメーカーに返却しないと交換できないのに対し、NPOは容易に基板上で交換できる。前回紹介したOIDA WorkshopでNVIDIAのLarry Dennison氏が述べた”field replaceable unit”が実現できるのである。以前述べたPluggable Transceiverのメリットの一つ、Serviceabilityを考慮したのだ。

 (3)は品質保証にも関連する。最終ユーザーに対し、NPOサプライヤーの責任がはっきりしていて品質体制を組みやすくしている。これはPluggableと同じであり、今後のビジネス展開を進めやすくなると考える。

 交換がより容易になると、安価、低消費電力で取扱が容易なVCSEL/MMFによるNPOも考えられる。現在、IEEE 802.3では100G 100mの規格化が進められていて、既に100G VCSELなどの部品もそろってきている。

 (5)によって、ASICからFront Panel (FP) Pluggableに接続する電気配線として使用できることになる。既にQSFP-DD800ではケージには同軸細線入出力(2段のうちの上段)が想定されており、同軸配線をより高速化することで、さらに大容量のPluggableが可能となる。

 ICのPackageから500本や1000本の同軸細線が出るのは想像できないが、ボードであればNPO準拠のコネクターを実装することは可能であろう。FP PluggableのQSFP-XDによる1.6T/3.2Tでは必須になるだろう。

 CPO同様、NPOでも故障時はボードの引き抜きが必要だ。その際の影響範囲の最小化と高価な高速基板の小型化を狙ったモジュラー型に適していると考えられる。既にモジュール型サーバは市場に投入されている。また、理研のスーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」やGoogle TPUのような、数個のノードを搭載したモジュールを多数ボックスに挿入した装置が実用化されている。NPOを搭載することで、より高性能でスケーラブルな計算システムを構築でき、NPOはこの応用で活躍するのではないかと期待している。

 NPOはOIFでの議論が始まったばかりで、詳細はこれから決まっていく。報告すべき進展があれば、ぜひ紹介したい。

 NPOの話題といえば、2021年11月の「OCP Global Summit」でRagile NetworkがNPO搭載のスイッチを紹介している(参考)。図1の写真は25.6Tスイッチで、16個あるNPOは、1.6Tとのことだ。今後の学会や展示会におけるデモを楽しみにしている。


図1:Ragile Network発表のNPO搭載スイッチ 出所:Ragile Network
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