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量子コンピュータを活用しEV用電池材料の研究開発へIonQとHyundaiが協業(1/2 ページ)

IonQとHyundai Motorは、新しい変分量子固有値ソルバー法(VQE:Variational Quantum Eigensolver)を共同で開発すると発表した。バッテリー化学におけるリチウム化合物や化学的相互作用の研究に適用することができるという。

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リチウムイオン電池の性能/安全性向上、コスト低減の実現

 IonQとHyundai Motorは、新しい変分量子固有値ソルバー法(VQE:Variational Quantum Eigensolver)を共同で開発すると発表した。バッテリー化学におけるリチウム化合物や化学的相互作用の研究に適用することができるという。

 VQEは、特定の最適化問題を解決するために使用する価値体系を決定するアルゴリズムだ。このアルゴリズムは、変分原理を使用して、ハミルトニアンの基底状態エネルギー、動的物理システムの状態の時間変化率を計算する。既存の方法は計算上の限界があるため、精度に制約があった。

 IonQとHyundai Motorは、酸化リチウムの構造やエネルギーのシミュレーションに使用する、量子コンピュータ上で動作可能なバッテリー化学モデルを共同開発する。その目的は、リチウム電池の性能や安全性の向上、コストの低減の実現だ。

 量子コンピュータによる化学シミュレーションや計算の高速化によって、次世代リチウムイオン電池の品質や性能、耐久性が大幅に向上することが期待されている。これが実現すれば、消費者に対して電気自動車(EV)の魅力をもっと高められるようになるだろう。

バッテリーは、EV開発で「最も困難な技術的課題」

 IonQのCEO(最高経営責任者)であるPeter Chapman氏は、インタビューの中で、「電池は現在も、EV開発において最も困難な技術的課題とされている。電池のコストは、EVの製造コスト全体の約半分を占める」と述べている。このため、大半の消費者にとって、EVの価格は高額過ぎるのだ。


IonQのCEO、Peter Chapman氏

 同氏は、「電池がもっと安価になれば、(EVが)内燃機関(エンジン)車と同程度のコストを達成でき、自動車市場への幅広い普及も実現可能になる。より高性能な電池は、EVの魅力をさらに高めることができる。消費者がEVに切り替えるのをためらう理由として最も多く挙げているのが、『走行範囲が限られる』『充電に時間がかかる』『電池寿命が短い』などだが、こうした問題は、電池材料の品質が向上すれば解決することが可能だ」と語った。

 EVは、電気モーターや、高電圧/高容量の電池パックを使用する他、さまざまな種類の電力管理/パワートレイン技術などを適用する。EVは高額だが、既存の内燃機関車と比べて空気汚染が少ない。それでも、真の持続可能性を実現するためには、送電網(グリッド)の負担を低減することが可能な優れた電池技術や、EVそのものがグリッドの構成要素になることなどが求められる。EVが将来的に必要とする電池は、コバルトを置き換えて環境への影響を低減しながら、走行距離も延ばすことが可能な、高効率材料をベースとした高性能な電池である。

 Chapman氏は、「量子コンピュータは必然的に、分子の挙動をモデリングするのに適している。どちらも量子力学が基礎となっているからだ。電池に適用されている重要な化合物のシミュレーションを行うことで、化学反応の結果を予測することができる。それが、電池開発における時間やコスト、労力を削減できる、新しい原材料の開発へとつながる可能性があるのだ」と述べている。

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