パワー半導体研究開発に1000億円、東芝の半導体戦略:HDD、半導体製造装置の戦略も説明(2/4 ページ)
東芝は2022年2月8日、会社分割後にできる2社の事業戦略に関する説明会を行った。デバイス&ストレージ事業をスピンオフする「デバイスCo.」では、シリコンパワー半導体のラインアップ拡充やSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)デバイス開発を加速し、パワー半導体の研究開発だけで5年間に1000億円を投入する計画などを明かした。
パワー半導体に大規模資金投入、半導体事業戦略の中身
佐藤氏らはこの日、半導体、HDD、半導体製造装置の3事業について、各事業戦略の詳細も説明した。
まず、半導体事業では、特に市場の年平均成長率(CAGR)がそれぞれ17%、10%と高い車載用途、産業用途のパワー半導体に注力していく方針だ。同社は、パワー半導体売上高を2025年までCAGR9%で成長させ、半導体事業の用途別売上高における車載、産業向けの比率も2021年度の58%から2025年度には65%にまで高めるという。また、注力するパワーMOSFETについては、2020年度には市場シェア4位だったが、2025年度にはトップ3入りすることを目指す。
半導体事業全体では、売上高を2021年度見込みの3200億円から、2025年度には3700億円に成長させることを目標とした。佐藤氏は、「300mm新棟により、従来以上に機動的に投資を実行し、さらなる売り上げ増を狙える体制を構築していく」と述べた。
この目標に向けた戦略として、同社は、「技術優位な製品の開発加速」「業界大手顧客とのリレーション強化」「生産能力の機動的な増強」の3点を挙げている。
製品の詳細については、東芝デバイス&ストレージ上席常務で統括技師長の森誠一氏が説明した。同社の主力製品であるシリコンのパワーMOSFETは、現在、主に車載向けで採用されている第8世代品から、さらにオン抵抗を15%低減した第9世代品が主力となっている。同社は、オン抵抗を第8世代から30%低減した第10世代品の販売を拡大中だ。現在、第8世代比でオン抵抗を40%削減する第11世代の開発を進めている段階だという。
同社のシリコンパワーMOSFETは、耐圧20〜650Vまでをラインアップしさまざまなアプリケーションをカバーしているが、森氏は、「需要急増とアプリケーションの広がりに対応すべく、2023年までに製品数を倍増させる」と述べた。
同社の車載向けシリコンIGBTは現在耐圧750Vと1.2kVの製品を量産中で、インバーター特性改善のため、ダイオードとIGBTと一体化した新製品を2022年から量産開始する。このダイオード一体型製品の第2世代品については、300mmラインでの生産を行い2026年から量産開始する予定だという。
一方、オンボードチャージャーやインバーターの小型化、高効率化実現に向けたSiC MOSFETについても、森氏は、「当面、シリコンIGBTよりコストが高くなるため車種によってシリコンIGBTとSiC MOSFETは使い分けられると想定しているが、SiCの技術完成度が上がりコストが下がれば、採用比率が高まっていくだろう」と言及。同社は、まずオンボードチャージャー用のSiC MOSFET製品を2024年に量産していく方針だ。
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