パワー半導体研究開発に1000億円、東芝の半導体戦略:HDD、半導体製造装置の戦略も説明(1/4 ページ)
東芝は2022年2月8日、会社分割後にできる2社の事業戦略に関する説明会を行った。デバイス&ストレージ事業をスピンオフする「デバイスCo.」では、シリコンパワー半導体のラインアップ拡充やSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)デバイス開発を加速し、パワー半導体の研究開発だけで5年間に1000億円を投入する計画などを明かした。
東芝は2022年2月8日、会社分割後にできる2社の事業戦略に関する説明会を行った。デバイス&ストレージ事業をスピンオフする「デバイスCo.(仮称)」では、シリコンパワー半導体のラインアップ拡充やSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)デバイスの開発を加速し、パワー半導体の研究開発だけで5年間に1000億円を投入する計画などを明かした。
デバイスCo.に関する説明は、東芝デバイス&ストレージ社長の佐藤裕之氏が行った。同社は半導体ではパワー半導体、HDDではデータセンター向けHDD、子会社のニューフレアテクノロジーによる半導体製造装置ではマルチビーム描画装置およびエピタキシャル成長装置を成長事業と位置付け、「基盤事業」とするその他製品で得た収益を成長事業に投入することで成長を加速すると同時に、成長事業で作り上げた技術や生産能力を基盤事業に展開、効率的に事業を拡大する方針だ。また、各事業で立ち上げた技術や生産能力を他事業に展開するほか、顧客資産や調達ネットワークも相互に活用していく。
設備投資、研究開発に5年で5700億円を投入
佐藤氏は、世界的な半導体の供給不足やストレージに対する需要拡大に応じるための施策について、「生産能力の増強と安定的な調達網の構築を推進する」と説明した。生産能力に関しては2021年度から2025年度までに約2600億円を投資し、2020年度比でシリコンパワー半導体は1.7倍、ニアラインHDDは2倍に増強するという。
主要な投資としては、パワー半導体では、200mmラインの増強や2022年2月4日に発表した加賀工場の300mmラインの新棟建設および既存棟での稼働前倒しのほか、化合物半導体の200mmライン整備などを計画。その他、HDDはフィリピン拠点でのニアラインHDDの増産や中国拠点の設置、半導体製造装置は、横浜工場の製造スペース拡張を予定している。
安定的な調達網構築に関しては、半導体の使用材料の80%について長期契約を締結しているほか、マルチ調達比率も70%以上に高めていることを強調した。
研究開発費としては、2025年度までに約3000億円を投入する予定だ。その内訳は、シリコンパワー半導体のラインアップ拡充や高効率パッケージ開発およびSiC、GaN製品の開発の加速といったパワー半導体向けで1000億円、その他の半導体向けで1000億円、残りがHDDの新機種の開発や次世代マルチビーム装置の開発などとなっている。
同社の2021年度の売上高は8600億円、営業利益率は6%を見込むが、2025年度には売上高1兆100億円、営業利益率8%にまで成長することを目指す。佐藤氏は、「比較的ボラティリティの高い業界なため、やや保守的に見込んでいるが、市況も見ながら機動的に追加投資を行ない、成長を前倒して行く」と語っていた。
先行研究開発の体制強化も
同社は先行研究開発体制の強化についても説明した。同社は、スピンオフにあたり、現在東芝コーポレートラボでデバイスCo.の事業領域に関わる研究開発に従事する技術者部隊と、東芝デバイス&ストレージで先端技術開発を担うデバイス&ストレージ開発センターを統合し、「半導体&ストレージ研究開発センター(仮称)」をデバイスCo.内に新設する。同センターの人員は現東芝デバイス&ストレージ開発センターの約3.5倍に増強され、中長期のロードマップに基づき、製品開発に必要な先行研究開発を推進する。
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