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日本における半導体産業のあるべき姿とは 〜議論すべき電子部品メーカーによる半導体内製化大山聡の業界スコープ(50)(1/2 ページ)

日本電産の半導体に対するこだわりを引用しながら、日本における半導体産業はどうあるべきか、私見を述べてみたい。

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 2022年1月26日、日本電産は決算説明会において、2月1日付の役員異動に関するリリースを公表した。そこには、かつてルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)で車載事業の責任者だった大村隆司氏の名前があった。同氏は直近までソニーセミコンダクタソリューションズで技術インテリジェンス渉外担当執行役員を務めていた。この人物を自社の役員に迎え入れるということは、半導体をキーパーツとして重要視する永守重信会長の強い意向が働いていることを物語っている。報道によれば、副最高技術責任者として半導体開発を担当する、とのこと。ここでは、日本電産の半導体に対するこだわりを引用しながら、日本における半導体産業はどうあるべきか、私見を述べてみたい。

 日本電産はモーターの世界最大手企業であり、今後はクルマの電動化とともに同社への注目度が高まる傾向にある。同社の2020年度連結売上高は1兆6181億円、このうち車載向けは3581億円(全体の22.1%)。2025年には売上高4兆円、車載向けを1.3兆円(同32.5%)に引き上げようと計画している。


日本電産の新中期戦略目標の骨子[クリックで拡大] 出所:日本電産 2022年3月期第3四半期決算説明会資料

 日本電産のモーターにはマイコン、アナログ、パワーデバイスを中心に多くの半導体が搭載されており、永守会長はかねて「半導体の内製化」についてさまざまなことを画策していた。やや古い話だが、産業革新機構がルネサスの持ち株を手放そうとしていた時期、日本電産が買収に強い興味を示していたことも広く知られている。結局、条件などが合わずに買収は実現しなかったが、半導体の内製化を諦めたわけではない。今回、大村氏を役員に迎え入れた事実を見ても、キーパーツである半導体へのこだわりがあることの証左だろう。

活発な半導体の内製化

 筆者としては、日本電産が「半導体を外部調達に頼っていてはダメだ」と判断している点に注目している。昨今のエレクトロニクス業界では、付加価値、差別化を求めて半導体の内製化を図ろうとする動きが多く見られるからである。

 例えばGoogle、Amazon、Meta(Facebook)、Microsoftといったクラウドサービス大手各社は、自社のサーバ、データセンターにおける処理の高速化、効率化を図る目的で、独自のAIプロセッサやSoCの開発に取り組んでいる。中国のBaidu、Alibaba、Tencentなども同様である。彼らはサーバメーカーから汎用サーバを調達する、あるいはIntelから汎用MPUを調達するだけでなく、自社が提供するサービスを最適な形で実現するために、半導体の設計にまで着手しているのである。スマホメーカー大手のApple、Samsung Electronics、Huaweiなども、独自のSoC開発に取り組んでいる。これらの企業は、Samsungを除けば半導体の外販はしておらず、量産のための工場も持っていない。自社のシステムやサービスに最適なSoCを設計するだけで、製造はTSMCなどのファウンドリーに委託している。いずれも「半導体事業で儲けよう」とは考えておらず、「半導体技術を活用して付加価値を追求しよう」と考えての戦略であることが分かる。

 日本電産がルネサスの買収に興味を示したのは、半導体に関する技術や知見を社内で活用したかったからで、半導体事業そのものが欲しかったわけではないだろう。ところで、半導体工場を抱えるIDM(垂直統合型メーカー)のルネサスは「半導体を外販してナンボ」の会社である。永守会長はかつて「わが社はBoschのようなメーカーになる」とコメントしていたようだが、Boschを大手顧客に持つルネサスにしてみれば、日本電産に買収されると、Boschは親会社の競合になってしまう。そんな相手に今までと同様の商売を続けられるだろうか。自分たちの事業価値を毀損(きそん)するような買収を本気で考えているのか、それとも外販の芽をつぶしてでも、親会社とのシナジーでそれ以上の付加価値を追求できるのか。かつて「条件が合わずに買収が実現しなかった」ことは前述した通りだが、言い換えれば「外販の縮小をカバーできるほどの買収シナジーは期待できない」というのが結論だったことになる。この状況は今後もそう簡単に変わるとは思えない。

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