初のWoW技術適用で大幅性能向上、Graphcoreの新IPU:TSMCとの協業で実現(1/3 ページ)
Graphcoreが、第3世代のIPU(Intelligence Processing Unit)を発表した。業界初となる3D Wafer on Wafer(以下、WoW)技術適用のプロセッサだ。
Graphcoreが、第3世代のIPU(Intelligence Processing Unit)を発表した。「業界初」(同社)となる3D Wafer on Wafer(以下、WoW)技術適用のプロセッサだ。
この新型AI(人工知能)プロセッサ「Bow IPU(開発コード名)」は、2020年に発表した前世代品(非WoWだがそれ以外は同等レベルの製品)と比べて、最大40%の性能向上と16%の電力効率向上を達成するという。
GraphcoreのCEO(最高経営責任者)であるNigel Toon氏は、「WoW技術は、Graphcoreが目指す方向性を示している。われわれはTSMCとの間で密接な協業関係を構築し、過去2年間にわたってWoW技術の適用製品の開発に取り組んできた。ここ1年間で、かなり詳細にわたる試験を行うことによって信頼性を実現し、製造品質を大幅に高めることができた。そして現在では、WoW技術を適用した完全な量産体制の準備が整っている」と述べている。
Graphcoreは、「旧製品と同価格で新製品を提供することで、価格/性能指標を劇的に向上させていきたい。顧客企業は、ソフトウェアを変更する必要なくBow IPUに乗り換えることが可能だ」と述べる。
また同社は、WoW IPUの次世代品を使用し、超高知能AIスーパーコンピュータ「Good Computer」を開発する予定だという。顧客の要望に応えるべく、10EFLOPS(エクサフロップス)の処理性能を実現できる見込みだとしている。
「業界最高性能を実現する量産型AIプロセッサ」
Graphcoreは、「新しいBow IPUは、現時点で業界最高性能を実現する量産型AIプロセッサだといえる」と主張する。混合精度で350TFLOPSのAI処理性能を達成するという。また、旧世代品の「Colossus Mark 2」と同様に、1472個の独立したプロセッサコアと、900MBのインプロセッサSRAMを搭載するが、動作周波数に関しては、旧世代品が1.325GHzであるのに対し、新製品は1.85GHzと、最大約40%の性能向上を達成している。
GraphcoreのBow IPUは、大規模なAIトレーニング/推論での活用を想定しており、大規模なマルチチップシステムを構成することが可能だ。256チップの「Bow Pod 256」システムは89PFLOPSを、1024チップの「Bow Pod 1024」は350PFLOPSを、それぞれ達成するという。
また同社は、「顧客企業は、幅広いモデルのトレーニングスループットを向上できる」と述べる。同社の発表によると、例えば画像分類(例:Vision Transformer(ViT))や、物体検知、テキストから画像生成、グラフネットワーク、自然言語処理、音声認識などの幅広いワークロードにおいて、学習スループットが1.29〜1.39倍になっていることが分かる。
画像認識モデル「EfficientNet-B4」において、Graphcoreの前世代のIPUシステム「IPU-Pod」(図内左)と、規模の異なる複数のBow-Podの学習スループットを比較した[クリックで拡大] 出所:Graphcore
また、電力効率(ワット当たり性能)も、やや狭い範囲のワークロードにおいて9〜16%向上しているという。
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