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メモリ不況は当分来ない? 〜懸念はIntelのEUVと基板不足、そして戦争湯之上隆のナノフォーカス(48)(3/4 ページ)

筆者は世界半導体市場統計(WSTS)のデータを徹底的に分析してみた。その結果、「メモリ不況は当分来ない」という結論を得るに至った。そこで本稿では、その分析結果を説明したい。

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NANDの出荷額と出荷個数

 図5に、NANDの出荷額と出荷個数の推移を示す。これもDRAMと同様に出荷個数に注目すると、3つの時期に分けられる。


図5:NANDの出荷額と出荷個数[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

1)2000年〜2016年:出荷個数が直線的に増大した時期

 NANDのマーケットが、音楽プレーヤー「iPod」、デジタルカメラ、携帯電話などに拡大するにつれて、NANDの需要が増大し、出荷個数も増えていったと思われる。

2)2016年〜2018年:出荷個数が年間約110億個で一定になった時期

 2016年頃を境に、NANDは2次元から3次元に構造が変わった。3次元NANDでは、メモリ容量を増大するために、縦方向にメモリセルを積層することになった。2次元の時は、メモリセルを微細化していたのでチップサイズが小さくなり、1枚のウエハーから取得されるチップ数が増大し、その結果として出荷個数も増大していた。しかし、3次元では、基本的にチップサイズは変わらない。そのため、出荷ビットは増えているものの、出荷個数は増えないという状態になったと推測している。

3)2018年以降:再びNANDの出荷個数が増大し始めた時期

 これは、DRAMの出荷個数が同時期に増えているのと同じ原因であると考えられる。つまり、データセンター需要が拡大し、それに使われるServer需要も急増したため、Serverに搭載されるSSD需要も増大した結果、SSDの基幹部品である3次元NANDの出荷個数が増え始めたのだと思う。

 ここまでをまとめると、DRAMもNANDも、2018年以降、急激に出荷個数が増えている。これは、データセンターのServer用の需要が拡大しているからだと推測できる。では、Serverの頭脳であるMPUの出荷動向はどうなっているだろうか?

MPUの出荷額と出荷個数

 図6に、MPUの出荷額と出荷個数を示す。出荷個数に着目すると、2011年にピークがある理由は良く分からない。しかし、2016年のピークアウトは、Intelが14nmから10nmへ微細化を進めることに失敗したことに起因している。


図6:MPUの出荷額と出荷個数[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 2016年から2018年にかけて、本格的なビッグデータに時代を迎え、Amazon、Microsoft、Googleなど、クラウドメーカーがこぞってデータセンターを建設し始めた。そのデータセンターには、最先端のServerをずらりと並べる必要があった。

 ところが、前述の通り、Intelは10nmのMPUの量産立ち上げに失敗してしまった。10nmが立ち上がらない状態は5年以上も続き、第7代目CEOのBob Swan氏は、2020年に「IntelがFablessになるかもしれない」ことに言及するほど、追い詰められてしまった。

 この間、IBM出身のLisa Su氏がCEOに就任したAMDは、MPUの生産委託先をGlobalFoundries(GF)からTSMCに変更し、最先端の微細化プロセスで高性能MPUをリリースし始めていた(拙著記事『プロセッサ市場の下剋上なるか? Intelを追うAMDを躍進させた2人の立役者』/2020年5月15日)。

 これに対抗しなければならないIntelは、MPUの高性能化のために、14nmプロセスを延命しながら、MPUのコア数を増大する手法をとった。しかし、コア数の増大は、1枚のウエハーからとれるチップ数を減少させるとともに、歩留りを悪化させた。

 このIntelの不調のせいで、2016年に5.18億個出荷されていたMPUは、2019年には1.35億個も少ない3.83億個に落ち込み、世界的なMPU不足を招いてしまった。その結果、データセンタのServer用に量産されたDRAMとNANDが市場に溢れ、価格暴落を引き起こした。実際、代表的なDRAMであるDDR4の8Gビット品は8.2米ドルから2.8米ドルまで下落した。また、代表的なNANDであるMLCの128Gビット品は5.6米ドルから3.9米ドルまで下落した(図7)。


図7:代表的なDRAMとNANDの大口取引価格(〜2022年1月)[クリックで拡大] 出所:DRAMeXchangeのデータを基に筆者作成

 つまり、2019年のメモリ不況は、元をただせば、Intelが10nmのMPUを量産できなかったせいであると言える(拙著記事『Intel 10nmプロセスの遅れが引き起こしたメモリ不況』/2018年12月7日)。このようなメモリ不況は、今後起きる危険性はないのだろうか?

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