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「それでもコロナワクチンは怖い」という方と一緒に考えたい、11の臨床課題世界を「数字」で回してみよう(69)番外編(5/9 ページ)

EE Times Japanでおなじみの「エバタ・シバタコンビ」が戻ってきました。今回は、「健康上の都合からワクチン接種に対する恐怖心がどうしても消えない」という読者、”K”さんのメールに端を発したものです。そこからシバタ医師が読み取った、コロナ後遺症への対応などを含む、11個のクリニカル・クエスチョン(臨床上の課題)をご紹介します。

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「ワクチン陰謀論」「世間の圧力」について、"K"さんはどう考えているのか

 さて、ここからは中編に入ります。中編では、私(江端)から"K"さんへの質問、「ワクチン陰謀論」「世間の圧力」等について、"K"さんの個人的な見解をお伺いしたQ&Aを開示いたします。

 今や、我が国では2回のワクチン接種をしている人口は、1億人を越えて、国民の8割に至っています。

 このような状況下で、私は、『ワクチン接種を選択できない状況にある人』の1人である”K”さんに、そのような社会を、”K”さんはどのように見ているか、あるいは、”K”さんは、社会からどのような扱いをされているかを、直接教えてもらいたいと思いました。

 以下に、私(江端)から”K”さんへの質問に対して、答えていただいたメール(の一部(江端編集))を開示します。



1. はじめに

 “K”さん。お世話になっております。今回は、私から質問をさせてください。かなり気をつけたつもりですが、もし質問に「誘導」を感じるようでしたら、その旨を記載していただき、無回答としていただいても結構です。よろしくお願いいたします。

2. 江端の質問と”K”さんのご回答

【Q.1】 今回”K”さんが、ワクチン接種を選択しなかったのは「ワクチンへの未知への恐怖」のみ、ということで正しいですか?

【A.1】 ワクチン接種に関しての認識はそちらで正しいです。

 未知の物への純粋な恐怖です。

【Q.2】 もしQ.1が正しいとした場合、その恐怖の理由を説明できますか?

【A.2】 厚労省のHP等で接種後の死因と人数を見ていて「ごくまれに発生する心筋炎の副反応」が、ずっと不安でした。

 江端様、シバタ様もおっしゃっていたように、「ごくまれ」であって、数字的なもので大多数は大丈夫だと理解しています。でもそれが起きた個人にとっては”1”です。自分や子どもに起きたときの恐怖心が強いです。

 その理由としては、

(1)コロナ後遺症の中で、特につらい(動悸・救急車を呼ぶほどの)心臓と脳の発作・不整脈の発生率の頻度が上がったこと

(2)原因不明の胸痛があり、この状態でワクチンを打って「ごくまれ」の心筋炎が起きたら死ぬのかもしれないという恐怖

かと、思います。この他には、

(3)服用していなかった不整脈の薬や安定剤を飲まざるを得なくなったことや、食物によるアナフィラキシーを起こしたことから、なんらかのワクチンへのアレルギー反応でさらに悪化したり、ひどい発作が起こるかもしれない恐怖

があります。もし私に「コロナ後遺症」が現われなかったら、すでにワクチンを打っていたかもしれません。

 これに加えて、

(4)遺伝子が引き継がれている自分の子どもたちにもしかしたら同じ作用が起きるかもしれないという未知の恐怖

があります。

【Q.3】 ワクチン接種をホイホイと行える江端のような人間が、”K”さんの恐怖を本質的に理解できると思いますか?

【A.3】 理解して下さろうとしているお気持ちは、十分伝わりますが、難しいと思います。

 こんなに説明していただいても、

- 周りのほとんどが打っていて大丈夫なのを見ていてもワクチンを打とうという決心がどうしても出来ない

- そして接種済みの方々も、ためらいもなく打つ人からすごく不安だけど打つ人もいると思う

そして

- その不安な方々も色んな角度からの不安があるかと思う

ので、

(1)世間の流れでただ接種してみた人、

(2)絶対接種したい人、

(3)怖いけど接種してみる人、

(4)絶対接種したくない人

とでは、本質的な理解は出来ないのではないかと思います。「理解」ではなく、お互いに考え方を「許容」するという方がしっくり来ます。

 私自身、理解して欲しかったのではなく、

- 「ここまで恐怖を感じるものではないのかもしれない」

- 「逆に後遺症が治るかもしれない」

- 「子どもに未知のものを打たせることが出来ないことへの責任はある」

- 「罹患による免疫で良いとかかりつけ医に言われたのに、それでも打った方が体のためにはいいのだろうか」

という恐怖は感じつつ、

- 「ワクチンは前向きに捉えている」

という複雑な気持ちの中、納得のできる記事をお書きになっている江端様(とシバタ様)にお聞きできたら、

- 「このワクチンへの恐怖も変わるのかもしれない」

という気持ちでメールをさせていただきました。

【Q.4】 ワクチン接種を前提とする政策を行おうとする為政者のやり方は、やりすぎと感じますか?あるいは、(一定の)理解ができますか?

【A.4】 ワクチン接種パスポート等、接種証明書を義務化することについてはやりすぎかなと思います。

 気持ちや持病や罹患済み等、いろいろな理由を持った一定数の未接種の人々が暮らしづらくなり、社会との距離ができてしまうかと思います。実際、私の知り合いには、1回罹患後に、ワクチン3回を接種し、さらにオミクロンに罹患した人がいます。

 ですので、ワクチンをしたからといって絶対にコロナにかからないわけではないので、接種証明書義務化での社会制限の意味はないかなと思います。

 日本のワクチン接種は任意ですので、接種証明書の提示の義務化はしないでほしいです。陰性証明書は意味があるか分かりませんが、対策としては有りだと思います。

【Q.5】 “K”さんは、コロナ感染、発病、その後も後遺症で苦しい日々を送られていると思いますが、これらの苦しい日々と、ワクチン接種は、バーター(交換条件)にはなりませんか?

【A.5】 今のところは私の中ではバーターにはなっていません。

 バーターにはなりませんでしたが、絶対にひどい未来が待っている!!と感じるほどの嫌悪感もありません。ただ、まだ恐怖心のほうが強いです。この文章を書いていて気付きましたが、私の恐怖は、コロナウイルスやワクチンではなく、心臓発作へのトラウマかもしれません。

【Q.6】 ワクチン接種以外の選択で、”K”さんが受け入れられそうなモノ/コトはありますか?

【A.6】 飲み薬、サプリメントに興味があります。

 国内産の不活性化ワクチンは受け入れられるかもしれないと思っていましたが、シバタ先生の、「中国産よりも劣る可能性」を聞いて、一気に選択枠から外れました

 飲み薬は副作用等を見ながらですが、mRNAワクチン接種よりは受け入れやすいです。現在承認申請に入った塩野義製薬のお薬は興味があります。エクササイズ等は、体力や免疫力のために取り入れたい気持ちはありますが、まだ静かにしておきます。

【Q.7】 ワクチン未接種で、だれかから差別的な扱いをされ、あるいは差別的に感じたようなことはありましたか?

【A.7】 接種してないことで、差別的な扱いをされたことはありません。

 誰かに『ワクチンを打ったのか』と聞かれた時は、「罹患して、かかりつけ医から『免疫あるからどちらでも良い』と言われた」と話しています。私ではなく、主人は会社から「早く打て」と圧力があったようです。

 主人はワクチン推進派ですが、お互い特に反対も押し付けもしていません。私は『主人に、実験体になってもらおう』と思っています(笑)。

 うちは家族の人数が多いので、数日前、普通のチェーン飲食店に寄った時、「ワクチン接種証明書か陰性証明書が全員分ないと、テーブルが別になります」と言われたことがあります。少し面倒だと感じました。小さい子供のいる家族が、全員PCR検査をして陰性証明書をもらって行くのって大変だと思います。

 また、飲食店経営者からの目線で、『協力金をもらうために、それ(接種/陰性証明書の開示)をお客さまにお願いしなければならないのは、つらいですよね』と同情してしまいます。店舗内でクラスターを起こさないための対策であり、その重要性は理解しています。

【Q.8】 シバタ先生や江端のコラム、あるいはその他のワクチン接種を勧める記事に、権力サイド(政府等)の意志が反映されていると感じることはありますか?

【A.8】 江端様、シバタ様のコラムからは権力からの圧力は感じません。

 しかし、SNSへなにか投稿した際に、自分の投稿に、勝手にワクチンについて等のリンクがつくことに対しては、政府等の圧力を感じます。

 逆に陰謀論、ワクチン不要説を説いているYouTubeや医師や専門家の本の方がなんか印税とか広告費狙いなのかなって思ったりします。否定はしないですが、即座に本を出すなどできる方々は頭が良いなーと思います。

 その他には、PCR等無料検査の実施に際して、皆のために頑張っていただいていて有難いですが、その中にはそれを、おいしい収入にしている事業者も一定数いるのかな、と思うこともあります。

【Q.9】 コロナに関して、権力側の陰謀や、何かの作為的なものが存在していると感じることはありますか?

【A.9】「陰謀論」と言えるかどうか分かりませんが、ワクチンやコロナ薬による各国政府の思惑はあるのかな、と思います。

 自分自身も薬に頼っていますので、製薬会社やその関係者の方々が人類や動物の治療ために、日々研究、開発してくれていることに感謝していますが――

 ファイザー製薬は大手であり薬もたくさん開発しています。日本製のワクチンや薬の開発も国内で頑張ってくれていますが、国民数の治験の差や技術によるもの?なのか、米国にはスピード面で負けています。我が国は政策的に負けていると感じて、悔しいと思うことがあります。

 またモデルナは、今回のコロナワクチンの製造で大いに発展したと思います。そういう面から見ると、各国の陰謀(というか、国家としての世界戦略)はあったりするのかなと思います。



 このQ&Aは、”K”さん個人の回答であり、「ワクチン接種を選択できない人々」全体の意見ではないことを承知の上で、私が感じたことは、陰謀論とか、国家の圧力とか、そういうことは関係なく、ただ「個人的な事情(自分の体質とか、過去または現在の病歴から導かれる恐怖等)でワクチン接種を選べない」ということでした。

 おかげで、『SNS等で、陰謀論を展開して、反ワクチンを主張し続けている人間は、ごく一部』であることを確信できました。

 国民の8割側にいる、ワクチン接種完了組は、『ワクチン接種を選択しない/できない人の多くが、陰謀論やワクチン有害を信じている』という、変な思い込みに走りそうになるかもしれない(もちろん、私も) ―― ので、注意しなければならない、と実感しました。下手すると、自分が「反・反ワクチンの陰謀論者」になりかねない、と、ちょっとゾッとしました。



 そういえば、私事で恐縮ですが、先日、新型コロナに関するコラムを書き続けている私(とシバタ先生)が、「民間人を装っている日本国政府の回し者」という書き込みを見つけて ―― 嫁さんと2人で、大爆笑させていただきました。いやー、本当に笑った。

 パソコンを使って、3分間くらいかけてググれば、私のプロフィールやアウトプット(コラムや特許出願や論文等)なんぞ、腐るほどネットに落ちていると思います。なるほど、この手の陰謀論者は、その程度の努力も怠る、ということが分かりました。

 ちなみに私、定年後であれば、「日本国政府の回し者」でも何でもやりますので、ぜひ、政府関係者の皆さまは私にお声がけください*1)。口は堅い方です*2)

*1)「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(1)
*2)「しゃべらなくても、あんたは(ブログに)『書く』やろうが!

 閑話休題。

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