定年を自覚したエンジニアがひねり出した“投資のHello Worldアプローチ”:「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(2)(3/11 ページ)
定年がうっすら見えてきたエンジニアが、なりふり構わず「お金/投資」について勉強するシリーズ。今回から、「何でもいいから、1万円で金融商品を一つ買ってみよう」という戦略、名付けて“Hello Worldアプローチ”を実践していきます。
これから30年、世界はどう動く?
さて、ここで私は、私が死去するまでの、ざっくり30年間で世界がどのように動くかについて、予測してみました。
まず、世界経済ですが、あと30年くらいは、米国主導の経済圏を中心として回ると思います。一方、中国は、予想を越えた規模とスピードで経済圏の拡大を続けていますし、わが国は、中国からの輸入なしでは、かなりヤバい状況です。
2021年の、わが国のカロリーベースの食料自給率は37%で、世界全体を100%とした時の先月の中国からの農作物の輸入額の比率は、46%(=3.66兆円÷7.86兆円)です。(カロリーと金額では比較する単位が違いますが)。中国と戦争になったら、ざっくり『食卓から、3割程度の食物が消える』と考えて良いかと思います。
わが国は、米国、中国ともに正面切ってケンカができない立場ですので、現在のこの状況が30年程度続いてくれることを”祈る”しかありません。
あと心配なのが、日本国の財政破綻(デフォルトを含む)です。これは長期的には避け得ないかもしれませんが、ここ30年では起きないと踏んでいます。なぜかというと、日本国の国債購入者のほとんどが、日本人(正確には、日本国内の銀行)であり、海外投資家による日本国債の保有割合は13%程度であるからです。
日本人の日本国債の所有者(民間の銀行)は、自分のお金で、自社株ならぬ日本株 ―― 国債 ―― を買っているみたいなものです。そして、その支払いは、株式会社日本国から支払われるお金がベースになっている訳でして、つまるところ、日本国内で、お金がグルグル回っているだけに見えます ―― 日本国の借金は、私たち国民の預金です。
日本経済が心配→下々(民草)が借金に走る→銀行にお金があつまる→日本国債を銀行のお金(実質は私たち(のお金))で買う→日本の赤字が累積する→日本経済が心配→下々(民草)が……のループですね。
あまり健全な(というか、幸せな)ループではなく、「良くないグルグル」になっています。
ところで、めちゃくちゃ簡単な赤字国債の返済方法があります。言われれば「あ。」というようなことなのですが、円をバカスカ印刷して(古い言い方で、『プリントゴッコする』といいます)、それを借金の返済に当てればいいのです。
わが国は、借金している当事者が、お金を印刷する当事者でもあるのです(厳密には、日本国政府と日本銀行は独立した組織ですが、同じ日本国内の組織です) ―― ふざけた話のように聞こえるかもしれませんが、これは事実です。
ただ、上記の円の「プリントゴッコ作戦」は、円の価値の低下を招き、国内外の国債の信用も低下させてしまうので、簡単には切れないカードです。ただ、わが国は、たった1日で借金を帳消しにできる、最後の手段を、まだ保有しているのです。
まあ、この手の話が、常時炎上のネタになっているのは知っていますので、私は参戦しません。ただ、少なくともここ30年に限定すれば、『この最後の手段の発動もないだろう』と踏んでいます。
さて、最期に、私個人の経済 ―― 江端経済です。基本は「年金を当てにしても大丈夫」がベースです。
もちろん、年金の条件は、日々悪くなっていくと思いますが、今や、少子高齢化のわが国において、圧倒的マジョリティーであるのは高齢者です。つまり、私たち高齢者を敵に回すような政権は、存在できないのです。年金制度の崩壊は、現存の政府与党の崩壊を意味します。そして、民主主義は「多数が正義」が原則です。
私たちシニアの既得権益が、わが国を少しずつ崩壊させているのは知っています*)が ―― それは、私の知ったことではありません。私の死後であれば、日本国が崩壊していようが、全く構いません。私の2人の娘だけには、申し訳ないと思いますが、私は、日本国の財を食べ尽くして逃げる「食い逃げ」ならぬ、「死に逃げ」を予定しています。
*)筆者のブログ
以上、多分に私の願望が入っていますが、取りあえず、このコラムでは(1)世界経済、(2)日本経済、(3)江端経済の3つに関して、『現状が30年間続く ―― 革命とか、戦争とか、デフォルトが発生しない日本』を”願望”とした未来を前提とします。
「デフォルト」って何?
ところでギリシャ危機(2009年10月)ですっかり有名になった言葉に「デフォルト」というものがあります。この言葉、やたらといろいろなところで使われているのですが、どうにも意味をつかみかねていたので、今回、キチンと調べてみました。
ギリシャ危機とは、2009年10月に起こった、ギリシャの経済危機を指します。政権交代の際、旧政権により財政赤字が隠蔽されていたことが明らかになったのです。財政赤字がGDP比で5%程度とされていたが、実際は13.6%であることがバレました ―― って聞いても、私、よく分かりませんでした。
日本の財政赤字(対GDP比)では、6〜10%で推移しており、2021年度なんか21.2%でした。「ギリシャって、うち(日本)より、マシじゃね?」と思いました。ただ、ギリシャの(国債の)借金先が、ギリシャ国内の国民ではなくEUなどの他の国だった、という点が決定的に違います。ギリシャは、日本のような「良くないグルグル」の仕組みはなかったのです。
デフォルトを、一言で言い切れば「借金を踏み倒すこと」です。もっと具体例を上げれば、『10年後に利子を付けて返す予定だった国債(の証書)をいただいても、お金が返せません』と宣言することです。
ただ、私たちの日常の借金(の踏み倒し)と、国の借金(の踏み倒し)では、ちょっと意味が違うのです。
私たちの借金の踏み倒しに対するイメージは、反社勢力がでてきて、「風俗で働け!」「臓器を売ってこい!」のイメージですが、国の借金の踏み倒しの基本形は「開き直る」です ―― 無い袖は振れないから諦めてくれ、です。
調べた限りでは、「自衛隊の半分を米国に売却しろ」とか、「北海道をロシアに売りに出せ*)」とか、「トヨタの全工場を中国に売り払え」とか、そういう話にはならないようです。
*)筆者のブログ
デフォルトしても、突然、太平洋戦争直後のように、都市が廃虚になる訳でもないし、国民が奴隷商人に売買される、ということになる訳でもありません。デフォルト後も普通の生活が続きます。
一方、デフォルトが起これば、ハイパーインフレになるかもしれないと心配されている人はいるようです。最悪のケース (物価が130倍程度)としては、駅前の立ち食いそばが、一杯4万円になるイメージですね。当然、貯金も紙くずになります。
他方、そのようなハイパーインフレになる前の段階で、市場に貨幣が流通するので、逆に経済が活況になって好景気になるはずだ、という人もいます ―― 私には、分かりません(繰り返しますが、私はこの議論に参入しません。絶対に巻き込まないでください)。
私の見解としては、「良くないグルグル」があって、最後の手段に「プリントゴッコ」が発動できるわが国においては、デフォルトを心配する必要はないように思えます。ともあれ「定年後30年間は何も起こらないことを、ひたすら祈る」という、私の基本姿勢に変わりはありません。
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