定年を自覚したエンジニアがひねり出した“投資のHello Worldアプローチ”:「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(2)(6/11 ページ)
定年がうっすら見えてきたエンジニアが、なりふり構わず「お金/投資」について勉強するシリーズ。今回から、「何でもいいから、1万円で金融商品を一つ買ってみよう」という戦略、名付けて“Hello Worldアプローチ”を実践していきます。
980円の投資本を買ってみた
最初の私の行動は、コンビニに行くことでした。そして、そのコンビニで「ほったらかし投資」という、キャッチーな言葉に引かれて、980円の一冊のテキストブックを購入しました。
そのテキストブックには、「SBI証券」「楽天証券」「投資信託」「NISA」「iDeCo(なぜ、小文字と大文字を交互に入れる? 面倒くさいな)」「インデックス型」「アクティブ型」だの言葉が散乱していました。
―― なるほど、全然分からん
分からんけど、多分、「SBI証券」「楽天証券」は、金融商品を購入するための代理店だろう、と当たりをつけて、今度は、これをキーワードとして、ネット検索をしてみました。その結果、どうやら、この2つの証券会社が、ネット証券の2大巨頭である、ということが分かってきました。
『うーん、よく分からんが、この2つのネット証券会社が”Python”と”JavaScript”のようなものか』と考えました。
ところで、プログラム言語の選択において、最も大切なことは、「人気があること」です。「人気がある」とは、一言で言えば、本屋の書架を占めるほどに教本の冊数が多いということです。本の冊数が多いということは、利用者も多く、多くの先行失敗者や、失敗メモが、そこらに転がっている、ということです。
どの世界においても、数が多い方に乗るのが勝利条件です。プログラミングにおいても、ネット証券取引においても、「多数派に阿(おもね)る」が正解です。
証券用の口座を開設してみた
さて、どっちをメインにするか判断できなかったので、私は「SBI証券」「楽天証券」の両方の口座開設の手続をしました。口座開設そのものは無料で、取引手数料もおおむね同額でしたから。
ただ、980円本には、簡単(ラクラク開設、等)に解説できると書かれていましたけど、私には、結構面倒くさて、つらかったです。
2つを比較すると、口座開設手続は、SBI証券の方が、より面倒くさかったように思えます。特に質問の数が多く、『答えたくないこと』が山ほどあって閉口しました。
さらに、SBI証券は、その手続において、郵便物のプロセスが入ってくる点が面倒くさいと思いました。とはいえ、お金を扱うネットサイトなのですから、その位厳しいのは、むしろ安心と感じる人もいると思います。これらの手続きをイメージで語るのであれば、SBI証券=背広+ネクタイ、楽天証券=シャツ+Gパンといった感じでした。
総じて、どちらのネット証券も、文言が怖かったです ――
「同意しました□(←チェックボックス。チェックを入れなれば進まない)」
「確認しました□」
「内容を理解しました□」
――って、あの膨大なページの呪文が記載されているPDFファイルの内容を読んで理解しろと? 無理です。
証券会社としても、『確かに読んだよね?』と、一つ一つ確認しないと、処理を進められないことは理解できるのですが ―― 私は今回、『連載』というミッションを背負っているから、腹をくくれましたが ―― 、途中でやめてしまう人もいるんじゃないかなぁ、と思いながら、ボタンをポチポチ押し続けて、処理を進めました。
そして、はっきり聞いてくるんですよ ―― おい、お前、今、ナンボ持ってんや。言うてみ、って。マジですよ。
投資の方針とか、資金の性格(資金洗浄後のお金でもいいのか)、主な収入源か、取引の動機とか ―― お前の知ったことか、って思いました。
例えば、自動車ディーラーで、車の購入されている時に、こんな質問されたら、『二度とその店には出向かない』と確信を持って言えます。
そもそも、定年がスコープに入ってきたシニアが、こんなことを始めるとしたら『目の前に見えてきた”お金がない”という現実にドタバタしている』の一択しかないでしょう? 『その程度のこと、察してくれよ』と思いました。
「ご興味のある取引」という質問に対しては、『どんな取引があるのかすら、知らん』という解答を用意しておけ、と思いました。この画面設計した奴、自分の知識をデフォルトとしていやがる、とムカつきました。
そして、無回答でスルーしようとしても、『未入力の項目があります』といって、処理を進ませない仕様になっています。
このように腹を立てながら、適当に入力していったのですが ―― もしかしたら、私も同じようなことやってきたのかもしれないな、とは思いました。
『AIをやりたい? はぁ? AIなんて”技術”は存在しませんよ。右の図から、ご希望の技術を、一つ選んでおいてくださいね*)』
*)関連記事「我々が求めるAIとは、碁を打ち、猫の写真を探すものではない」
これは、「自分の知識をデフォルトとして他人に押しつける奴」の言い方、そのものです。私のコラムを読まれた方の何人かは、さぞ不快な思いをされたことでしょう。
まあ、これが、証券会社の営業パーソンを介して行うのであれば、もっとジェントルな対応をして、お客さまの言葉の端々から、ニーズを読みとることもできるのでしょうが、ネットで口座を開くのですから、こういう「不快なページ」が登場してくるのは、仕方がないことかもしれません ―― それでも、不快なものは、不快なのです。
で、まあ、なんで、証券会社のWebサイトが、こんな質問の山をしてきたのか、私は、この後になって知ることになるのです ―― メール営業です。
私のメーラーの中のメールは、SBI証券と、楽天証券からの営業メールで、溢れています。正直ウンザリです。
この手のスパムメール的営業が、アカンどころか、ユーザー離れを起こすことは、20年も前から言われ続けてきました。で、現在、どの会社も、いわゆる『AI技術』、『高精度ターゲティング広告』に血道を上げている訳ですが ―― 証券会社は、ネット証券になった今でも、まだ、旧態依然(きゅうたいいぜん)のまま、こんなこと(メール営業)をやっているという、この、絶望的なまでの『ズレ』です。
もしかしたら、証券業界というのは、私が始めて関わったバブルのころから、そのマインドは変わっていないのかもしれない ―― そんなことを考えていました。
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