定年を自覚したエンジニアがひねり出した“投資のHello Worldアプローチ”:「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(2)(5/11 ページ)
定年がうっすら見えてきたエンジニアが、なりふり構わず「お金/投資」について勉強するシリーズ。今回から、「何でもいいから、1万円で金融商品を一つ買ってみよう」という戦略、名付けて“Hello Worldアプローチ”を実践していきます。
投資を学ぶための”Hello World アプローチ”
「それにしても、どこから手をつけたものかな」と考えました。前述した通り、私は、素人で、潤沢な時間もありません。大学の経済学部や経営学部に入り直すような、お金も時間もありません。
『とすれば、アレしかないな』と、当りを付けたのは、「コンピュータ言語」の履修メソッドです。私、BASIC, Pascal, C/C++,Python, JavaScript, Golang、その他の、コンピュータ言語のバイリンガルです。
そして、コンピュータ言語を履修する時、はっきり言えることは「教本を何冊読んだって無駄である」ということです。
コンピュータ言語を履修する最短の方法は、とにかく、パソコンのディスプレイに”Hello World”の1行を表示することです。これは、プログラミングの業界にいる人なら誰でも知っている”Hello World アプローチ”です(勝手に命名しました)。
なぜ、この「たった一行の、”Hello World”の表示が大切なのかと言えば、そこに至る経緯こそが、貴重な財産(知見、経験、ノウハウ)になるからです。
"Hello World アプローチ"をスタートするためには、まず、機材を準備しなければなりません。少なくともパソコンは必要となりますし、場合によってはクラウド(AWS等)の契約も必要かもしれません。当然、そのための各種の設定もやらなければなりません
ここで大切なことは「自力でやる」ということなのです。もちろん、教本を読んでもいいですし、人に助けてもらってもいいですが、「丸投げ」してはダメです。実施する主体は、必ず自分自身でなければなりません。なぜなら、プログラミングの目的は「書くこと」ではなく、「動かすこと」だからです。
これは私の所感なのですけど、最も大切なことは「ジタバタする」ということなのです。
うまく動かないと、いろいろなことを試しますよね。で、その大半は、無駄なことだったり、下手すると、プログラミング環境を全部壊しちゃったりすることもあるのですが、そういうジタバタを続けることで、教本から得られない多くのことを、獲得していくことができるのです。
もちろん、開発環境のインストールや初期構築もしなければなりません。これもGoogle検索使い倒して、世の中の「先行失敗者の皆さま」のメモに助けてもらいながら、なんとか成し遂げます。
例えば、右のコピペは、私のホームページ(WordPress)で、リアルタイムで読まれている記事の一覧ですが ―― 私のコラム(日記)など、誰も読んじゃいない。
私のホームページで、PV(ページビュー)をせっせと稼いでいるのは、「開発環境構築やらプログラミングに関する、私(江端)の失敗メモ」ばかりです。
これでお分かりかと思いますが、私は失敗先行者として、このソフトウェアの世界で価値を認められている人間なのです。
そして、
(1)失敗事例は、成功事例よりも、
(2)未完成の設計メモは、完成した設計仕様書よりも、
(3)コメントが撒き散らされた汚いコードは、キレイに整理されたコードよりも、
圧倒的な価値がある
のは、明らかなのです。それは、これらの先行失敗の事例こそが、世界中で同じように「ジタバタ」している多くのエンジニアを助けているからです。
“Hello World アプローチ”のゴールは、“Hello World”を出力するプログラムを書いて、動かすことです。しかし、はっきりいって、”Hello World”のプログラムを書くための下準備のコストと、“Hello World”のプログラムを書くコストの比率は、”99:1”とか”999:1”くらいのイメージです。
さて、これを、この連載を始めるに際して、私が「最初のゴール」としたのは、「なんでもいいので、証券会社から、金融商品を1つ買ってみる」です。どの商品のリタンーンが高いとか、リスクがあるとか、インデックス型だの、アクティブ型だの、日経平均だの、ダウだの、そんなことは、今は全部忘れます。
まずは出かけることです。定年前のシニアの、たった一人の「はじめてのおつかい」です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.