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続報・3MのPFAS生産停止、今は「嵐の前の静けさ」なのか湯之上隆のナノフォーカス(50)(5/5 ページ)

3Mのベルギー工場がPFASの生産を停止した。今回は、その影響についての続報として、代替品の調達状況や、PFAS生産停止に至った背景、今後想定される事態を論じる。

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人類の文明が維持できない

 あなたは毎日、インターネットに接続されたスマートフォンやPCを使っているだろう。そのインターネットには、通信基地局やデータセンターの存在が必要不可欠である。その通信基地局やデータセンターは、膨大な半導体に支えられている。

 あなたの自宅やオフィスには、照明器具があり、各種の電機製品があるだろう。その動力である電気は、発電所でつくられ、変電所を介して送電されている。その発電や送電には、パワー半導体などが活躍している。

 あなたは通勤のために電車に乗ったり、出張や旅行のために飛行機に乗ったり、ATMで銀行預金からお金を引き出したりしているだろう。その電車の運行システムや、飛行機の自動操縦システムや、銀行の基幹システムなどは、半導体が制御しているのである。

 このように、今や人類の文明を維持する社会インフラは、もはや半導体なしにはあり得ないのである。そして、ドライエッチング装置用の冷媒が足りないために、これらの半導体がつくれなくなったとしたら?

 社会インフラに使われる半導体が生産できなくなった時のことを想像してみてください。人類の文明が、危機的状況に直面していることがお分かり頂けるのではないでしょうか?

 今はまだ、半導体工場が停止したというニュースは無い。しかし筆者は、これが、「嵐の前の静けさ」のように思えてならない。

セミナーのお知らせ

 2022年7月14日(木)13:00〜17:00、サイエンス&テクノロジー主催のセミナーを行います。会場受講を20人に制限し、ZOOMのウェビナーとのハイブリッド開催にする予定です。セミナーのタイトルや内容は考案中ですが、3Mのフロリナート生産停止の影響について、詳しく解説する予定です。5月末までには、筆者のHP等で詳細をお知らせします。

(次回に続く)

⇒連載「湯之上隆のナノフォーカス」記事一覧


筆者プロフィール

湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。


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