「半導体不足は2024年まで続く可能性」、Intel CEO:半導体装置の納品に遅れ
IntelのCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger氏は、自動車から高性能兵器までさまざまな製品の生産を制限している、2年に及ぶ半導体不足が、2024年いっぱいまで続くことを確信している。
IntelのCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger氏は、自動車から高性能兵器までさまざまな製品の生産を制限している、2年に及ぶ半導体不足が、2024年いっぱいまで続くことを確信している。
Gelsinger氏は、スイス・ダボスで開催された「World Economic Forum」に合わせて行われたYahoo! Moneyとのインタビューの中で、「半導体不足は半分を過ぎたところで、個人的には2024年いっぱいまで続くと予想している」と語った。
Gelsinger氏の予測は、米国EE Timesが2021年に調査したアナリストの予測からさらに1年長いものである。Intel、TSMC、Samsung Electronics(以下、Samsung)などのチップメーカーはそれぞれ、2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生した際に供給を上回った需要に追い付くべく、ことし(2022年)に入ってから世界中の拠点で数百億米ドル規模の投資を発表している。
パンデミックによりリモートワーク/自宅待機などが増加したため、ノートPCやゲーム機器、データセンター向けチップの需要が急増した。現在、ASMLやApplied Materialsなどの半導体製造装置メーカーは、装置に使う半導体を十分に購入できないため、チップメーカーからの需要に応えられないでいる。
Gelsinger氏は、「ここ6〜9カ月で直面した大きな問題は、工場に設置する設備や装置だ」と述べる。「これらのリードタイムが大幅に延びている」(同氏)
Intelや欧米での工場建設を発表してきたが、Gelsinger氏は、製造装置の不足が、工場建設の計画にどのような影響を及ぼすのかについては、コメントしなかった。
Samsungによると、ウクライナでの戦争も、半導体製造に用いられる主要な材料や装置の供給を妨げている。半導体製造装置を注文した場合のリードタイムも延びているとする。
Intel、TSMC、Samsungといった半導体メーカーは、「ムーアの法則」を拡大していく上で、EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の唯一のサプライヤーであるASMLに依存している。ASMLは2022年の初めに供給を満たすことが不可能であると語っていた。それでも、同社は2022年の売上高が約20%増加すると見込んでいる。
Intelは最新のEUV装置を発注
ASMLは2021年第1四半期に、Intelから最新の量産向けEUVリソグラフィ装置「EXE:5200」を受注した。出荷は2024年に開始される予定である。ASMLは、同装置を用いると半導体メーカーは少なくとも今後10年間、現行の基準値(2nm)をはるかに超えるプロセスノードに手が届くようになると述べた。
Gelsinger氏は、今後6カ月以内に世界的な景気後退が起こる可能性があると述べた。経済の停滞は、半導体の需要を低下させる可能性がある。
世界最大の半導体市場である中国は、既に需要減退の兆候を示している。中国は“ゼロコロナ戦略”の一環として、上海などの都市でロックダウンを行った。
中国のSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は、2022年第1四半期(1〜3月期)の売上高が66%以上も伸びたが、中国市場での需要の鈍化を警告している。
SMICの共同CEOであるHaijun Zhao氏は2022年5月初め、アナリストに対して「スマートフォン、消費者製品、PCの需要は落ち込んでいる」と述べた。SMICの一部の顧客は、サプライチェーンで5カ月分の在庫を保有しているといい、Zhao氏は供給過剰の状況について「非常に深刻だ」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Intel、ドイツ工場建設などEUに330億ユーロ投資へ
Intelは2022年3月15日(米国時間)、EUでの新たな半導体工場建設や拡張、研究開発に330億ユーロ以上を投資する計画の概要を明かした。同社は今後10年間で800億ユーロをEUで投資する計画であり、今回の発表はその第1段階の内容となる。同社は、「この投資によって、Intelは欧州に最先端の技術を導入し、欧州の次世代半導体エコシステムを構築、よりバランスのとれた弾力的なサプライチェーンの必要性に対処していく」と述べている。 - Intelがファウンドリー事業を発表、工場にも大規模投資
Intelは2021年3月23日(米国時間)、新CEOであるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏によるウェブキャスト「Intel Unleashed: Engineering the Future」を公開し、米国アリゾナ州での半導体工場の設立や、独立したファウンドリーサービスの開始を含めた製造関連の戦略「IDM 2.0」について語った。 - ASML、「半導体不足は今後2年間続く」と警鐘鳴らす
半導体製造に非常に重要となるEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の唯一のメーカーであるオランダのASMLは、半導体不足は少なくとも今後2年間続くと予想している。この警鐘は、ASMLが同社にとって不可欠なレンズの供給を、ドイツの光学機器メーカーCarl Zeiss(以下、Zeiss)などのサプライヤーに依存していることに起因するといわれている。Zeissもまた、サプライチェーンの問題による影響を受けている。 - 電機大手8社の21年度決算まとめ ―― 収益の安定したソニー、日立製作所が好決算
2022年5月13日、東芝が決算を発表したことで、大手電機メーカー8社の2021年度(2021年4月〜2022年3月期)通期業績が出そろった。各メーカーの計画通り、2021年度は増収増益を達成した企業が多かったが、この中でも伸び悩む企業、収益の柱が育っていない企業など、課題も散見される。取り組みや戦略にそれぞれ特長があった。そこで各社別に状況を確認してみたい。 - パワー半導体市場、2030年に5兆3587億円規模へ
富士経済は、パワー半導体の世界市場を調査した。電動車や再生可能エネルギーの普及などによって、需要拡大が期待されるパワー半導体市場は、2022年見込みの2兆3386億円に対し、2030年は5兆3587億円規模に拡大すると予測した。