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株価データベースを「Docker」で作ってみる「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(4)(5/12 ページ)

今回は、株価情報のデータベースを「Docker」で作ってみます。長いエンジニア生活で私が学んだこと――。それは、「自力で作らなかったものは、結局、自分の”モノ”にはならない」ということです。だからこそ、やってみるのです。

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金融工学で作られた金融商品が、歴史的に敗北した日

 実際に、金融工学によって作り出された金融商品は、歴史的な大敗北と、それによる世界的な大混乱を引き起こしています ―― リーマン・ショックです。

 金融商品は、高度な数学と、ハイパフォーマンスなコンピュータのシミュレーションによって設計・開発されています ―― ということは、「普通の人間の頭では、理解不能な商品」ということです。そして、リーマン・ショックの引き金となった、このサブプライムローン債権は、文字通り理解不能な商品だったのです。

 サブプライムローン債権は、それなりにリスクのある債権ではありました。ローンの債務者が、「クレジットカードで延滞を繰り返す信用力の低い個人や低所得者層」だったからです。

 ところが、リーマンブラザーズは、「これ、別の債権と合わせてパッケージ商品にすれば、よくね?」と考え、ここに「社債」「株式」「証券」を含めたパッケージ商品として作り直して、さらに最高の格付けAAA(トリプルA)を付与し、さらに元本保証という「超安全な金融商品」として、世界中で売りまくったのです。

 で、その「超安全な金融商品」のマニュアルは、100ページ以上にも及ぶ数式と数値の羅列で埋め尽くされていて ―― 結果として、VaRの観点からは完璧に安全な金融商品だったそうです*)

*)ちなみに、1929年10月24日(暗黒の木曜日)にニューヨーク株式市場の大暴落に端を発して世界中が未曾有の大恐慌に陥らせた「ブラックマンデー」も、(あとから計算してみたら)VaRがバッチリOKの安全な商品だったそうです。

 結論から言うと ―― 金融工学は、「人間の感情」という重要な構成要件をキチンと組み込んでいなかった、ということになるのかと思います。

 私たちは、「パテにミミズが加えられている」というウワサのたったハンバーガーを食べませんし、ハエが一瞬でもとまったショートケーキを『目撃』してしまったら廃棄してしまいます*)

*)ちなみに「ハエが止まった直後であれば、雑菌が繁殖していませんので、安全です」といっても、多分無駄でしょう。

 腐った果物なら、腐った部分を切り落とせば食べることができますが、腐った金融商品は、腐った部分だけを切り落とすことができません ―― 全部を廃棄するしかないのです。こうして、世界を巻き込む金融危機が始まったのです。

 このリーマン・ショックの発生の前後で、興味深い現象が見て取れます。下図は、Googleトレンドを使って、4つの単語の頻出度を時系列に表示したものです。

 リーマン・ショック前には、”金融商品”と”サブプライムローン”が、世間で高い興味を持って受け入れられていたのが分かります。比して、リーマン・ショック後では、”サブプライムローン”は、”金融危機”の戦犯扱いにされていることが推認できます。そして、わが国においては、”リーマン・ショック”が、ジワジワと、そしてダラダラと、日本経済を侵食し続けている様子も伺えます。

 で、ここからは、私の推測になるのですが(というか、参考資料が見つけられなかったのですが)、こういう”99%安全”型の債券ですら、リーマン・ショックのような状況では無力であったという事実から、専門家にお金を託して投資を行う「投資信託」が好まれるようになり、さらに、「ひらすらもうけを目指す」のではなく、市場に連動するようにお金を運用する「インデックス型」が選ばれているのかな、と思っています。

 「インデックス型」にしても、株式市場全体が暴落したら、連動して暴落するはずですが ―― 専門家が介入していることで、ストッパーとなることが期待されており、すこしだけ安心が加味されるのかな、と思っています。

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