実はシェアが急低下、危機の入り口に立つ日本の前工程装置産業:湯之上隆のナノフォーカス(52)(1/4 ページ)
高い成長予測が続く半導体市場。半導体製造装置で高いシェアを占める日本メーカーだが、詳しく分析してみると、そのシェアは急速に低下しつつあることが判明した。これはどういうことなのだろうか?
いつまで「イケイケドンドン」が続くのか?
半導体市場については「もうそろそろ成長は止まるだろう」という見解もあれば、「半導体需要は、いまだ逼迫しており、従って今後も成長は続く」という意見もある。この先どうなるかは分からないが、2021年に、世界半導体市場も半導体製造装置市場も過去最高を記録したことは事実だ(図1)。
半導体市場は2021年に5530億米ドルとなり、ことし2022年は6000億米ドルを大きく超えると予測されている。その予測値は、2022年6月7日にリリースされた世界半導体市場統計(WSTS)が6465億米ドルに上方修正され、米調査会社Gartnerが6386億米ドル、米調査会社IC Insightsが6806億米ドルとなっている(図1にはWSTSの上方修正された予測値を記入した)。
一方、半導体製造装置市場も、2021年に過去最高の1026億米ドルを記録した。そして、SEMIによれば、2022年に1140億米ドルになると予測されている。
本稿では、まず、ここ最近の半導体市場や装置市場の成長がどれだけすさまじいかということを示す。次に、各種の前工程装置の出荷額の推移を分析する。さらに、2021年における各種前工程装置の企業別シェアと市場規模を明らかにする。
そこから、日本には特徴的にシェアが高い装置があることを導き出す。これについては、拙著「半導体製造装置と材料、日本のシェアはなぜ高い? 〜「日本人特有の気質」が生み出す競争力」(2021年12月14日)で詳細な分析を行った。今回も日本にはシェアが高い装置があることが確認できたが、逆に問題点も明らかになった。
その問題とは、日本全体の前工程装置の世界シェアは2013年頃から急速に低下していることである。本稿の最後では、その原因究明を行う。これは相当深刻な問題であり、放置すると挽回不能なまでに凋落(ちょうらく)してしまった日本半導体産業の二の舞になりかねないことを警告する。
異次元の拡大を続ける半導体市場と装置市場
図2に、ITバブルが起きた2000年で、それぞれ規格化した半導体市場と装置市場の推移を示す。
半導体市場は2000年でピークアウトした後、すぐに回復し、2004年に「1」を超えた。しかし、半導体市場が「2」を超えたのは、今から5年前の2017年のことである。つまり、半導体市場は、2000年の2倍になるのに18年を要したことになる。
その半導体市場は、WSTSが修正した予測値によると、2022年に「3」を超える。つまり、半導体市場が2倍になるのに18年もかかったが、2倍から3倍になるのはわずか5年ということになる。
一方、装置市場に目を向けると、2000年にピークアウトした後、2007年と2011年に限りなく「1」に近づいたがそれを超えることができなかった。装置市場が「1」を超えたのは、今から5年前の2017年のことである。そして、その4年後の2021年に「2」を超えて2.3倍になった。
図2に網掛けの矢印で示した通り、半導体市場も装置市場も、直近5〜6年間で飛躍的に成長していると言える。特に、コロナ騒動が起きた2020年以降は、半導体市場も製造装置市場も、異次元の急成長を遂げているように見える。
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