実はシェアが急低下、危機の入り口に立つ日本の前工程装置産業:湯之上隆のナノフォーカス(52)(2/4 ページ)
高い成長予測が続く半導体市場。半導体製造装置で高いシェアを占める日本メーカーだが、詳しく分析してみると、そのシェアは急速に低下しつつあることが判明した。これはどういうことなのだろうか?
各種前工程装置の出荷額
図3に、各種の前工程装置の出荷額の推移を示す。2021年の出荷額の大きい順に、ドライエッチング装置が189.2億米ドル、露光装置が164.2億米ドル、外観検査とパタン検査の合計の検査装置が138.9億米ドル、成膜装置の1つであるCVD装置が99.7億米ドルとなった。
微細加工に使われるドライエッチング装置と露光装置が1位と2位である。最先端のロジック半導体、DRAM、3次元NAND型フラッシュメモリなどは、非常に複雑な構造をしており、微細加工が難しい。そのため、より高精度な装置がを多数求められていることが、この結果になっていると思われる。
また、露光装置では、2019年に登場した最先端のEUV(極端紫外線)露光装置の価格が、2018年まで先端装置だったArF液浸の2倍以上の約180億円もする。従って、装置市場では、露光装置がドライエッチング装置を抜くかもしれないと予想していた(事実、2019年は露光装置がドライエッチング装置を上回った)。
しかし、実際は、ドライエッチング装置市場が露光装置市場を押さえて1位となった。EUVの価格は180億円とべらぼうに高額であるが、昨年(2021年)の出荷台数は42台にとどまった。一方、ドライエッチング装置の出荷台数は、これより2桁多いと思われる。つまり、出荷台数の多さがモノを言って、ドライエッチング装置市場がトップになったのだろう。
2000年で規格化した各種装置市場
図4に、2000年でそれぞれ規格化した各種の装置市場の推移を示す。成長率が高い順に、ドライエッチング装置が4.3倍、露光装置が3.1倍、洗浄装置が2.94倍、検査装置が2.93倍(洗浄と検査はグラフが重なっている)、CVD装置が2.3倍となった。
ドライエッチング装置が4.3倍に成長したことに驚かざるを得ない。また、微細加工に使われるドライエッチング装置と露光装置が、規格化グラフにおいても1位と2位になっている。ドライエッチング装置の膨大な台数、露光装置の価格高騰などが大きく関係していると思われる。
これに加えて、洗浄装置が2.94倍に成長していることに注目したい。半導体の製造工程は500〜1000工程以上になる。その30%〜40%が洗浄工程である。半導体を生産する際に、成膜する前に洗い、成膜したら洗い、微細加工の前に洗い、微細加工の後にも洗う。つまり、洗って洗って洗いまくっているのである。その頻度は、半導体の微細化が進むほど、大きくなる。従って、洗浄装置市場の成長が、ドライエッチング装置と露光装置に次ぐ3位にランクされるようになったのだろう。そして、この傾向は今後も続くと思われる。
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