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潮目が変わりつつある世界半導体市場 ―― アプリケーションからの分析大山聡の業界スコープ(55)(1/2 ページ)

前回、「潮目が変わりつつある世界半導体市場」について述べたところ、多くの方々から反響をいただいた。筆者の主張に注目していただけたことは非常に光栄なことである。ただ逆に、これだけ注目されたということは、多くの方々が今後の市況の見通しを心配されていることの証左ではないか、という気もしてくる。実際に市場ではどのような動きがみられるのか。今回はもう少しアプリケーション寄りの情報を整理してみたい。

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 本連載前回に「潮目が変わりつつある世界半導体市場」について述べたところ、多くの方々から反響をいただいた。筆者の主張に注目していただけたことは非常に光栄なことである。ただ逆に、これだけ注目されたということは、多くの方々が今後の市況の見通しを心配されていることの証左ではないか、という気もしてくる。実際に市場ではどのような動きがみられるのか。前回はファウンドリー業界のコメントを紹介したが、今回はもう少しアプリケーション寄りの情報を整理してみたい。

PC、スマホ市場は暗転

 調査会社のGartnerが2022年7月に発表した予測によれば、2022年の世界PC市場は3億1000万台で、前年比9.5%減に留まる見込みだという。2021年には同11.0%増(同社調べ)だったことから比べれば、市況は大きく暗転していることになる。リモートワークが定着しつつあった2020年、2021年は久々にプラス成長を遂げたPC市場だが、3年連続、というわけにはいかないのだろう。実際に筆者は同じPCを5年以上使い続けているが、陳腐化したとか、上位機種に切り替えたい、という考えは特にない。ZOOM、TeamsといったWeb会議ツールを多用するなど、PCの活用方法には若干の進化はあるものの、現状のスペックで十分に対応でき、なかなか新たなニーズを掘り起こすキッカケにはならない、ということのようだ。またGartnerによれば、地域別には欧州市場の落ち込みが大きいとしている。ロシアによるウクライナ侵攻の影響を最も受けている地域であることを考えると、やむを得ない状況なのかもしれない。

 スマートフォン(スマホ)市場はどうだろうか。Gartner調べでは、2022年は14億5600万台で、前年比7.1%減に留まる見込みのようだ。2021年には同5.0%増(同社調べ)だったので、こちらの市場も暗転していることになる。5G(第5世代移動通信)対応機種に限っていえば、2022年は7億1000万台で同29%増という見込み。ただし、年初には「前年比47%増」を予測していたので、思ったほど伸びていない、ということになる。5Gとはいっても、中国や欧州のキャリア各社がサポートしているのは4Gをグレードアップした「Sub6(周波数6GHz未満)」だけで、5G本来のスペック実現に必要な「ミリ波(周波数28GHz)」はサポートしていない。また米州や日本でも5Gを必要にするアプリケーションが立ち上がっているわけではない。長い目でみれば、自動運転、遠隔医療など5Gが不可欠なアプリケーションが立ち上がるのは時間の問題だろう。しかし今年、来年という時間軸で期待できることではなさそうだ。

自動車、産業機器関連は半導体不足は継続

 自動車市場についてはどうか。調査会社マークラインズの2022年6月の発表によれば、2022年の自動車販売は7600万台、前年比6.4%減に留まる見込みのようである。地域別では欧州および、中国において2ケタのマイナス成長が予測されるなど、相対的に低迷している。欧州はロシアによるウクライナ侵攻の影響、中国はロックダウン政策による影響が出ているのだろう。ちなみに自動車業界内部の話では、必ずしも需要がないわけではなく、半導体などの部品不足で供給が限られている、というのだ。自動車メーカー各社からは「人気機種の生産を優先して、そうでない機種については納期を回答できないケースが多い。それくらい部品不足が続いている」というような話が聞こえてくる。

 自動車と同様、産業機器関連市場でも、半導体不足は継続しているようだ。PC、スマホ、家電機器等に比べて産業機器関連市場は「ロットサイズが小さく、製品寿命が長く、しかも品質にうるさい」という半導体メーカーにとってあまり好ましくない条件がそろっているので、経営戦略的には優先順位を上げにくい顧客、ということになる。前回の記事も、自動車および産業機器業界の方々からの反響が多く、各社とも半導体の調達に苦労されているのだろうと実感させたれた次第である。

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