カーボンナノチューブによる高熱伝導材料を実現、Carbice:低熱抵抗&安定した熱抵抗を両立(1/3 ページ)
本記事では、米Carbiceがカーボンナノチューブを用いて開発した手法について詳しく見ていきたい。同社は、液体および固体の両方の「サーマルインタフェースマテリアル(TIM:Thermal Interface Material)」(熱界面材料)の特性を1つのソリューションの中で組み合わせた効果的な冷却システムを、どのようにして実現したのだろうか。
現在、市場では、高度な機能を備えつつも、さらなる小型化を実現する電子デバイスが求められている。このような傾向から、必要なコンポーネントの集積密度がさらに高まり、過熱という不可避の問題も生じるなど、設計者たちは非常に難しい課題に直面しているところだ。
本記事では、米国ジョージア州アトランタに拠点を置くCarbiceがカーボンナノチューブを用いて開発した手法について詳しく見ていきたい。同社は、液体および固体の両方の「サーマルインタフェースマテリアル(TIM:Thermal Interface Material)」(熱界面材料)の特性を1つのソリューションの中で組み合わせた効果的な冷却システムを、どのようにして実現したのだろうか。
低熱抵抗&安定した熱抵抗を両立
Carbiceは、カーボンナノチューブの生産や応用、カスタマイズ、製造などを手頃な価格で実現することにより、最も要件が厳しい既存のアプリケーションにも対応できる拡張可能なソリューションを提供している。
同社が開発した「Carbice Nanotube」技術は、アルミニウムのコアに共有結合した配向カーボンナノチューブをベースとしている。既存のTIMは、熱伝導率が非常に低い上、熱抵抗が高く製造が複雑であるが、CarbiceのTIMでは、このような限界を打破することに成功したという。
さらに既存のTIMは、サイクリング中に異なる材料間の界面上で起こる複雑な熱機械的変化によって、時間と共に性能が劣化する。このためにデバイスの全体的な性能を妥協しなければならず、製品寿命も短くなってしまう。
Carbiceが開発したTIMは、熱伝導率が高く処理が容易な固体TIMと、界面熱抵抗が低い液体TIMの両方の長所を持ちながら、その特性に制約がないため、全く性能を妥協する必要がないという。さらに、熱伝導率に優れ、熱抵抗も低く、取り扱いが容易で、経時劣化やサイクリングによる劣化がない。
図1から分かるように、CarbiceのTIM(右上隅)は、低熱抵抗と安定した熱抵抗の両方を実現し、液体や固体のTIMよりも優れている。
Carbiceの創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるBaratunde Cola氏は、米国EE Timesのインタビューで、「私は、かつてIntelに勤務していた時の経験からCarbiceの発想を得た。当時私が関心を持っていたのはバーンイン試験で、量産での導入が可能な十分な信頼性と実用性を備えたTIMを見つけられずに苦労していた。そこで、垂直配向カーボンナノチューブのような堅牢な材料を使用して、はるかに簡単な組み立て工程で、厳しい機械的/熱的条件に対応することができれば、興味深い取り組みになるのではないかと考えた」と述べている。
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