グラフェンバイオセンサーを活用した「電子鼻」を開発へ:がんの検出を目指す(1/2 ページ)
グラフェンセンサーは、グラフェンの商用化に向けた最前線の取り組みとして位置付けられてきた。現在市場に投入されているグラフェンセンサーの数は、他のグラフェンデバイスを大きく上回っている。グラフェンセンサーの中でも、最も市場シェアが大きいのが、バイオセンサーだ。米Cardeaは、生体信号処理装置(BPU:Biosignal Processing Unit)を利用してがんを検出することが可能な、グラフェンバイオセンサーを開発した実績を持つメーカーである。
グラフェンバイオセンサーを活用した、がん検出
グラフェンセンサーは、グラフェンの商用化に向けた最前線の取り組みとして位置付けられてきた。現在市場に投入されているグラフェンセンサーの数は、他のグラフェンデバイスを大きく上回っている。グラフェンセンサーの中でも、最も市場シェアが大きいのが、バイオセンサーだ。米Cardeaは、生体信号処理装置(BPU:Biosignal Processing Unit)を利用してがんを検出することが可能な、グラフェンバイオセンサーを開発した実績を持つメーカーである。
同社は現在、グラフェンバイオセンサーの種類を拡充しようとしている。最近では、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(Bill & Melinda Gates Foundation)から110万米ドルの資金提供を受け、電子鼻(e-nose)の開発に取り組んでいるところだ。グラフェンBPUを使用することで、人間の息から感染症を診断できるようにするという。
Cardeaはもともと、がん検出に向けた生体検査の代替手法を提供することによって、グラフェンバイオセンサー市場への参入を開始した。現在、生体検査方法として採用されている組織生検は、非常に侵襲的であるため、初期兆候を検知できるような方法を提供することができない。ここ何年もの間にリキッドバイオプシーが広く使われるようになってきたが、これは侵襲度が低く、体液からがんを検知することが可能であるからだ。Cardeaはこうした傾向に基づき、BPUでグラフェントランジスタプラットフォームを使用することにより、生体検知処理の向上実現に取り組んできた。
グラフェンを利用したがん検出センサーは、次世代シーケンシングを採用することにより、異なる種類のがんを検出可能な方法を提供する。ほとんどのがんは、さまざまな種類の生体組織検査法を適用することで検出できるが、Cardeaが使用するグラフェンプラットフォームは、1種類の流体サンプルから複数種類のがんが検出可能だという。がんの発生部位が不明な場合でも早期発見が可能な手法を提供することができる。
このBPUプラットフォームは、マルチオミクス手法(複数種類の“オミクス”に関する研究)に基づき、体内の複数の通信チャンネルから発信されるさまざまな種類の生体信号を分析することが可能だ。このため、核酸生体信号(ゲノミクス)やアミノ酸生体信号(プロテオミクス)の他、メタボロミクスや、トランスクリプトミクス、複雑な細胞間通信の生体信号なども、プラットフォームで分析することができる。これらは全て、同一サンプル内でリアルタイムで分析される。グラフェンが、バイオセンシング(およびセンシング全般)に多様性をもたらすということが分かる。
同BPUプラットフォームは、既存のがん検出装置でも使われており、間もなく開発予定の電子鼻でも採用されることになる。BPUは、がん診断プラットフォームだけでなく、最近発表されたばかりの電子鼻にとっても不可欠な存在だ。現在では、さまざまなアプリケーションや臨床シナリオにも対応可能な、中央処理装置として開発されている。
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