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安全性と低コストを両立、ソフトウェア定義可能なLiDARPreActの「TrueSense」(1/2 ページ)

先進運転支援システム(ADAS)やさまざまなレベルの自動運転などのソリューションは、現在多くの車両で利用可能だが、高精度で価格競争力のある高度なセンサーが必要である。本記事では、高精度とカスタマイズ可能なソフトウェアコンポーネントを特徴とし、価格競争力もあるPreAct TechnologiesのLiDARセンサーを紹介する。

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 最新世代の自動車では、車両の安全性を向上させ、より効率的で快適な運転を実現するために設計された高度な機能の統合が進んでいる。先進運転支援システム(ADAS)やさまざまなレベルの自動運転などのソリューションは、現在多くの車両で利用可能だが、高精度で価格競争力のある高度なセンサーが必要である。

 中でもLiDARは、最大動作範囲内で車外の全てのものを検知するために不可欠なセンサーである。LiDARは、対象の状況の正確なマップをリアルタイムに取得することで、車両のすぐ近くにある物体や障害物を特定することができる。これによって、車両が他の車両や自転車、歩行者、動物と衝突する可能性を回避できる。

 LiDARは、モデルによって電気機械的な可動部があったり、完全にソリッドステートであったりするが、車両に統合される最も高価なオンボードセンサーの1つとして知られている。本記事では、高精度と、実行可能なアプリケーション数を拡張できるカスタマイズ可能なソフトウェアコンポーネントを特徴とし、特に価格競争力のある(従来のデバイスより1桁安価な)LiDARセンサーを紹介する。

PreActのフラッシュLiDAR

 PreAct Technologies(以下、PreAct)は、アクティブプロテクションシステム向けの高速センサーとエッジ処理の開発を手掛け、防衛産業における長い歴史を持つ親会社の強みを生かし、車載市場向けの衝突検知システムの開発を目指して2018年に設立された。2019年には、複数の自動車メーカーやティア1メーカーと提携してADASや衝突回避アプリケーションの開発に着手している。

 同社は、単一のセンサーの開発にとどまらず、自動車業界内外の複数のアプリケーション要件を満たすことのできる完全なハードウェアおよびソフトウェアソリューションを開発した。同社の完全ソリッドステートLiDARは、レーザーで現場を1ラインずつスキャンする従来のLiDARと違い、フラッシュごとに現場全体を照射するフラッシュタイプのセンサーだ。

 PreActの創設者でCEO(最高経営責任者)を務めるPaul Drysch氏は、「当社は近距離フラッシュLiDARを開発したが、ハードウェア企業というよりソフトウェア企業だと考えている。当社のビジネスモデルは、製造に焦点を当てるのではなく、LiDARのリファレンスデザインを、赤字でも(場合によっては無料で)ライセンス供与することだ。さらに、制御およびアプリケーションソフトウェアをサービスとして提供し、顧客に対する価値提案を継続的に強化する」と述べている。

 PreActは現在、そうしたユニットを製造し、必要なソフトウェアライセンスと共に欧米のティア1/ティア2メーカーの商業チャンネルを通じて販売しようと、それらのサプライヤーとの契約を交渉している。「TrueSense」と名付けられたセンサーを図1に示した。このセンサーは、高い精度と信頼性を備えた、高速で低コストな連続波ToF(Time of Flight)フラッシュLiDARで、インダイレクトToF(iToF)を使って各ピクセルの距離を同時に計測する。


図1:高速で低コストな連続波ToFフラッシュLiDARユニット「TrueSense」[クリックで拡大] 出所:PreAct Technologies

 PreActの共同創業者兼COO(最高執行責任者)を務めるKurt Brendley氏は「当社は、ノイズフロアを減らし、iToFのキャビン外での作業を可能にする3Dポイントクラウドを安定させる、というブレークスルーを成し遂げた。その結果、当社のソフトウェアによって、周囲条件が厳しい中でも屋外で作業できるようになった。われわれは、FPGAベースの製品からプログラマブルなSoC(System on Chip)へと移行し、当社のSaaS(Software as a Service)型ビジネスモデルをサポートし続けることで、今後も引き続きフォームファクターとコストを縮小していく」と述べた。

 現在、近距離センシング(最大25メートル)はレーダー、超音波、カメラの何らかの組み合わせか、LiDARシステムで実行されている。最初の選択肢はフレームレートと解像度が非常に低いことから、安価ではあるものの非効果的である。市販のLiDARは高い性能を提供するが、非常に高価で速度も遅く、近距離での機能も限られている。

 一方、TrueSenseは安価なToFイメージングチップとLEDエミッタをベースにしており、高解像度のRGBカメラを搭載し、最大200フレーム/秒のサンプルレートを実現する。これは自動車グレードのセンサーであり、明るい日光の下や、通常ToFが苦手とするような典型シナリオの全てで動作可能だ。

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