ルネサス、甲府300mm工場で量産する車載用IGBT発表:トータルソリューション強みにシェア拡大へ(1/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2022年8月30日、電気自動車やハイブリッド車などxEV(電動車)向けのインバーター用パワー半導体として、新たな世代のプロセスを採用した絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を発表した。同社従来世代プロセスを採用したIGBT製品と比べ、電力損失を約10%改善するとともに、破壊耐量を維持しながら10%の小型化を実現した。
電力損失を約10%改善しつつ、10%小型に
ルネサス エレクトロニクスは2022年8月30日、電気自動車やハイブリッド車などxEV(電動車)向けのインバーター用パワー半導体として、新たな世代のプロセスを採用した絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を発表した。同社従来世代プロセスを採用したIGBT製品と比べ、電力損失を約10%改善するとともに、破壊耐量を維持しながら10%の小型化を実現した。ルネサスでは、同IGBT製品の量産は、2023年上期から那珂工場の200mmウエハーラインおよび、300mmウエハーラインで実施し、2024年上期からは現在構築中の甲府工場300mmウエハーラインで実施する予定とする。ルネサスとして300mmウエハーを使用して量産する初めてのIGBT製品になる。
今回発表した新世代プロセス「AE5」は、前世代プロセス「AE4」よりもセルピッチ(トレンチゲート間隔)を縮小させることで、コレクタエミッタ間飽和電圧(VCE(sat))を約10%低減。損失に直結するVCE(sat)を300A時で1.3Vという「業際最高レベルの性能」(同社)を達成。スイッチング損失については、AE4と同レベルを維持し、電力の損失を約10%改善した。
電力損失の低減とトレードオフ関係にある壊れにくさ(破壊耐量)については「AE4と同等レベルを維持した」とし、チップサイズを300A当たり100mm2と従来比約10%小型化した。
さらに、プロセスの細部にわたって見直し、改良を施すことで、特性ばらつき(VGE(off))を±0.5Vに低減。並列接続時のアンバランスが改善され、モジュール搭載時の安定性、安全性が向上するという。
新世代プロセスを用いた製品としては、400Vインバーターに対応する750V耐圧の220A品、300A品の2種、800Vインバーターに対応する1200V耐圧の150A品、200A品の2種、合計4種をラインアップする予定。第1弾として750V耐圧300A品のサンプル出荷を開始している。
需要増に備え、大口径300mmウエハーで生産へ
新製品発表に合わせ8月30日に開催した記者説明会で、ルネサス パワーシステム事業部事業部長を務める小西勝也氏は、「2027年には、自動車生産台数の約半数がxEVになる見込み。それに伴い車載用パワー半導体の需要も高まっていく。車載用パワー半導体としては、SiC(炭化ケイ素)MOSFETとともに、(シリコン[Si]による)IGBTの2つがビジネスサイズの圧倒的大部分を占める見込みであり、(ルネサスとしては)この2つにフォーカスして投資していく」と述べた。
ルネサスでは、IGBT関連の技術/製品開発と並行して、将来のパワー半導体需要増に備えた生産能力の拡大に向けた投資も実施。2022年5月には、閉鎖していた甲府工場(山梨県甲斐市)に約900億円を投じ、300mmウエハーライン対応のパワー半導体専用工場として再稼働させることを決定。今回、発表した新プロセスを採用したIGBT製品の量産を皮切りに、2024年上期から稼働を開始する予定だ。
なお、新プロセス採用IGBT製品の量産は、那珂工場で先行して実施。那珂工場では、200mmウエハーラインでの製造とともに、300mmウエハー対応の小規模量産ラインでの生産も行い、甲府工場での早期量産立ち上げに向けた準備を行う方針だ。
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