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米国の新たな対中国半導体規制、効果に疑問の声影響は西側諸国にも(1/4 ページ)

米商務省が、最先端の半導体製造技術の世界輸出に関する新たな規制措置を発表した。AlibabaやBaiduなどの中国半導体メーカーをターゲットにする。しかし、長年にわたり半導体業界に携わってきた観測筋は、「その効果はかなり誇張されており、少なくとも中国メーカーの成長を鈍化させる可能性は低いだろう」とみているようだ。

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 米商務省が、最先端の半導体製造技術の世界輸出に関する新たな規制措置を発表した。AlibabaやBaiduなどの中国半導体メーカーをターゲットとする。しかし、長年にわたり半導体業界に携わってきた観測筋は、「その効果はかなり誇張されており、少なくとも中国メーカーの成長を鈍化させる可能性は低いだろう」とみているようだ。

 米商務省産業安全保障局(BIS:Bureau of Industry and Security)は2022年8月12日(米国時間)、米国の国家安全保障に不可欠な措置として、複数国からの技術輸出に関する規制を策定した。今回の措置は、トランプ前政権から現在のバイデン政権でも続く米中間の技術戦争において、最新の一撃となる。

超WGB半導体基板とGAAFET向けECAD技術の輸出規制

 BISによれば、対象になる技術には、超ワイドバンドギャップ(WBG)半導体である酸化ガリウムとダイヤモンドの2種類の基板と、GAA(Gate-All-Around)FET構造の半導体の開発に向けたECAD(Electronic Computer Aided Design:電子コンピュータ支援設計)ソフトウェアなどが含まれる。このような技術は、軍事用途や民生用途への適用が可能であるためだという。


Albright Stonebridgeで中国担当シニアバイスプレジデントを務めるPaul Triolo氏

 BISは、こうした規制によって輸入にマイナスの影響が及ぶのはどの国なのか、特定の国名は明かさなかったが、Albright Stonebridgeで中国担当シニアバイスプレジデントを務めるPaul Triolo氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「今回の措置は、1つの敵対国に狙いを定めている」と述べている。

 Triolo氏は、国際関係と電気工学の分野で上級学位を取得しており、これまで25年以上にわたって米国政府の上級職を務めてきた人物だ。

日欧のMOCVDのイノベーションなどに悪影響も?

 「今回の規制措置は、明らかに中国のファブレスメーカーをターゲットとしている。AlibabaやBaiduをはじめ、3nmや2nmなどの最先端プロセスノードを適用する半導体設計に取り組む半導体メーカーなど、おそらく十数社の大手ハイテクメーカーが対象になるだろう。米国の“敵対国”と見なされるような国において、最先端のファブレス設計メーカーに該当する企業を保有している国は中国以外にない」(Triolo氏)

 Boston Consultingでアソシエートディレクターを務めるKarl Breidenbach氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「機器/材料関連の米国輸出規制のさらに強化するというBISの今回の発表は、パワーエレクトロニクスに向けた次世代ワイドバンドギャップ技術や最先端ロジックの発展を阻害する可能性がある」と述べている。

 「多国間の輸出規制は、複雑化を招くため、それが酸化ガリウムやダイヤモンドベースの半導体を本格的に産業化していく上での大きな負担になるだろう。日本や欧州のメーカーが最近大きな進歩を遂げている、MOCVD(有機金属化学気相成長法)のような分野において、イノベーションの加速ペースに悪影響が及ぶ可能性がある」(Breidenbach氏)

 また同氏は、「中国のアルミニウム製造業者は、ウエハーの基板材料として使われる酸化ガリウムの精製分野において、圧倒的なシェアを確立している。そして日本が、最高品質の酸化ガリウムウエハーの生産をリードしている」と付け加えた。

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