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電動化/大電力化が進む産業機器市場に、先端の電源技術で対応するVicorVicor David Krakauer氏/堂園雄羽氏

電源ソリューションを専門に手掛けるVicorは、産業機器市場での新たなビジネス機会に注視している。近年、産業機器市場では電動化やバッテリー駆動といった新たな技術トレンドが加速し、Vicorがここ4〜5年、特に力を入れ開発してきたHPCや車載向け技術を大いに活用できるからだ。8月上旬、Vicorでインダストリアル事業部 兼 コーポレートマーケティング部門を統括するバイスプレジデントのDavid Krakauer氏が来日した。Krakauer氏とVicor日本法人の代表取締役社長兼本社バイスプレジデントを務める堂園雄羽氏に、産業機器市場でのVicorの戦略を聞いた。

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産業機器市場で始まる「電動化」

――Vicorが創業当初から注力している産業機器分野ですが、現在改めて、注目している理由を教えてください。


Vicor本社 インダストリアル事業部 兼 コーポレートマーケティング部門のバイスプレジデントを務めるDavid Krakauer氏

David Krakauer氏 あらゆる領域で電動化が始まり、進んでいることに注目している。特筆すべきは、単なる電動化ではなく、バッテリー駆動へのニーズが高まっている点だ。自動車だけでなく、重機や建設機械、農業機械、ライトエレクトリックビークル、また電動オートバイやモーターボートなどのレクリエーションに使われる機器の動力も、ICE(ガソリン・軽油を使うエンジン駆動)からバッテリー駆動への移行が始まりつつある。

堂園雄羽氏 これらの用途では、動作時間をできるだけ長くするためバッテリーパックの大型化に伴う、制御側の小型化が求められる。省スペースで、高い電力密度と効率を実現しているVicorの電源モジュールが、性能を発揮できる分野となる。

HPC・車載向け技術を産業機器市場に展開

――産業機器の電動化が進むことは、Vicorにとってどのようなビジネス機会につながるのでしょうか。


Vicor日本法人の代表取締役社長 兼 本社バイスプレジデントを務める堂園雄羽氏

堂園氏 産業機器で今後加速する電動化は、オートモーティブ市場では既にトレンドになっている。

 例えば電気自動車(EV)では、400V/800Vの高電圧バッテリーから48Vや12Vなどシステムを動作させるために必要な電圧まで降圧する。このように高電圧の電力供給に対応しつつ、小型かつ高効率のパワーシステムを導入するというトレンドが、産業機器の市場でも見え始めている。

 Vicorは2018年にオートモーティブ事業を開始して以来、高電圧バッテリーや小型化、高効率化といったトレンドに沿った車載向け製品を開発してきた。つまり、当社が全社的な戦略として投資し、自動車向けに開発してきた最新の技術や製品を、産業分野向けに展開ができる。これは多くのお客さまが抱える、次世代の電源システム開発における課題解決に役立つと考える。

Krakauer氏 電動化が進んでいる産業市場に向けてこれらの製品を展開することは、新しい分野での市場開拓にもつながる。実際、世界の大手重機メーカーなどとの話も既に進んでいる。

 大電流や大電力が必要なアプリケーション向けについては、設計を最適化した新しい製品を展開していく。トレンドの先端を捉えた最新技術によって、特定の市場向けの新製品を開発することも可能だ。


「BCM6135」は、最大変換効率:97.9%の電圧変換比固定の絶縁型DC-DCコンバータ。Chassis Mount タイプは、61.3×35.4×7.4mm、68gのCM-CHiPパッケージである 出所:Vicor

――具体的には、Vicorのどのような技術や製品を生かせるのでしょうか。

Krakauer氏 パワーシステムを設計する場合、まずは一般的な既存の電源を入手する方法が挙げられる。だが、これらはサイズが大きいことが多い。ディスクリートコンポーネントを使って構成しても設計の負担が大きくなり、開発期間も長くなる。Vicorが提供する電源モジュールは、電力供給に必要なコンポーネントを小型のパッケージに搭載した製品だ。さらに、電圧調整と電圧変換、絶縁を別々のコンバータに分割する独自技術「Factorized Power Architecture」により、パワーシステムを最適化し、性能を向上できる。

 こうした製品の一例がバスコンバータモジュールの「BCMシリーズ」だ。双方向(Bi-directional)で使用できる電圧変換比固定の絶縁型DC-DCコンバータで、対応できる入力電圧範囲が48V系から800V系のラインアップがそろっており、効率も97〜99%と極めて高い。電圧変換比であるKファクターもさまざまな値があるので、幅広い用途に対応できる。

 絶縁型DC-DCコンバータモジュール「DCMシリーズ」も当社の主力製品の一つだ。例えば、日本のお客さまの1社であるフカデンでは、同社が開発する有線ドローンに搭載する給電ユニットに、DCMシリーズを採用した。この給電ユニットでは、送電ケーブルを軽量化するために、電圧を従来の24Vから370Vに昇圧していて、システム駆動のためには370Vから降圧するDC-DCコンバータが必要だった。一般的な降圧型DC-DCコンバータモジュールはサイズが大きく、重量も重かった。そこでVicorのDCMシリーズを採用することで、体積を約4分の1に、重量を2分の1以下に抑えられた。

――日本の産業機器市場では、特にどの分野に注力する計画ですか。

堂園氏 産業用途は多岐にわたるので、われわれは、産業用途をサブセグメントとしてさらに細分化し、より柔軟に対応できるようにしている。その中でも、特に日本で注力市場と捉えているのが、テスト装置/半導体製造装置、ロボティクス、ファクトリーオートメーションだ。その他、電動自転車やフォークリフトなど、自動車以外で電動化が進んでいるアプリケーションにも力を入れていく。

 昇圧でも降圧でも、適切な製品がそろっていることが当社の強みだ。特に日本のお客さまからは、これまでディスクリートでしか構成できなかった部分にもフィットする製品群を展開している点を評価いただいている。

 また、市場のトレンドやお客さまの状況が変わることで設計変更が発生する場合、開発期間は長くなるのが一般的だ。しかし当社の電源ソリューションはモジュールで構成する設計のため、再設計となった場合も少しの変更で済み、開発期間の延長が少しですんだ例も少なくない。お客さまは市場要求に対し、素早いレスポンスが求められる。そのスピード感が上がることに比例して、当社のモジュールに対するニーズが高まってきていると感じる。Vicorの強みは、このような設計変更を含めて、電源システムの最適化からサポートまで一貫して提供しているところだ。

産業機器でもディスクリートからモジュールへ

――産業機器の分野では、ディスクリートを使ってパワーシステムを設計することが今も主流なのでしょうか。

Krakauer氏 多くの分野でまだまだ主流の手法だ。ディスクリートで電源を構成する場合、同じものが流用できるうちはTime to Marketが短いという利点がある。一方で設計を変更しにくいという欠点がある。「設計を気軽に変更できない」ことは、エンジニアに制約を与えているともいえる。そのため、ディスクリート以外の手法も模索しているというのが現状ではないか。

 Vicorが提供する電源モジュールは小型で使い勝手が良いだけでなく、並列接続することでさまざまな電力に対応できるなど、設計を容易に変更できる。

 当社のような電源モジュールを提供するメーカーは世界中になく、Vicorはユニークな立ち位置にある。それ故、分野によっては電源モジュールの存在があまり知られておらず、ディスクリートでの設計が主流という側面も否めない。裏を返せば、そこに新しいイノベーションの余地があるともいえる。現在は、ターゲットに据えたサブセグメントを中心に、さまざまな企業と協業、開発をしている。

堂園氏 市場のニーズに追随するにはパワーシステムにもイノベーションが必要だ。お客さまとの話し合いを積み重ねることでVicorの電源モジュールの利点を最大限活用したシステム開発につながることが多い。お客さまの潜在ニーズを引き出し、電源アーキテクチャのイノベーションにつなげる。

大規模な組織変更で、きめ細かいニーズに応える

――Vicorが中長期的に注力する事業領域についてお聞かせください。

Krakauer氏 Vicorはここ数年間、HPC(High Performance Computing)とオートモーティブ分野での市場拡大をしてきたが、創業当時より航空宇宙・防衛や産業機器分野での歴史を築いてきており、改めて2021年、これらの分野にさらに注力しやすいよう、産業機器、航空宇宙/防衛、コンピューティング、オートモーティブの各分野に特化した4つの事業部を創設するという大規模な組織変更を行った。各事業部は、世界各国のVicor現地法人(セールス・テクニカルサポートセンター)と密にコミュニケーションを取ることで、それぞれの市場のニーズを理解し、テクノロジーを最適化している。

垂直統合で、堅ろうな供給体制に

――ここ数年、サプライチェーン上の問題が顕著になっていますが、Vicorも影響を受けていますか。

堂園氏 世界的にどのサプライヤーも直面している状況ですが、このような状況であるからこそ、お客さまと密に連携し、安定的に製品を供給できる体制作りを強化していくことが重要と再認識している。また今年中に新工場がフル稼働するため供給体制がより強化される。


Vicorの”ChiP”パッケージ電源の新工場 出所:Vicor

――改めて、電源モジュールの新工場について教えてください。

Krakauer氏 Vicor独自の電源モジュールパッケージであるChiP(Converter housed in Package)を製造する工場で、スケーラブルな電源ChiP製造を米国内で実現する。

 これまで一部外部に委託していた製造工程も新工場で対応できるので、受注から製造、出荷まで、全ての製造プロセスの垂直統合が可能になる。これにより、生産能力やコストをコントロールしやすくなり、堅ろうな供給体制を構築できる。

 さらに、製造チームと設計チームのコミュニケーションがしやすくなるという利点もある。製造チームと設計チームが同じエリアにいるので、設計上あるいは製造上の問題に素早く対処できるようになる。新工場での量産体制は現在立ち上げているさなかで、今後数カ月以内にもフル稼働が始まる予定だ。

最後に読者にメッセージを

Krakauer氏 今回の来日で日本のお客さまと直接会い、実のある話を多くできた。堂園はじめ日本メンバーと連携して、お客さまが抱える電源の難題を解決できるよう本社からサポートしていく。

堂園氏 今まで以上に高性能な電源の需要が見込まれる産業機器市場において、Vicor一同、日本のお客さまの電源革新・開発に貢献できるよう努めていく。



提供:Vicor株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年10月5日

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