TSMCがGaNファウンドリー事業から撤退へ、NavitasはPSMCと提携で対応:今後2年かけ段階的に
TSMCが2027年7月までにGaNファウンドリー事業から撤退することが分かった。これを受け、同社に製造を委託するNavitas SemiconductorはPSMCとの戦略的提携を発表した。
TSMCが2027年7月までにGaN(窒化ガリウム)ファウンドリー事業から撤退することが分かった。これを受け、同社に製造を委託するNavitas Semiconductor(以下、Navitas)は2025年7月1日(米国時間)、PSMCとの戦略的提携を発表した。
「長期事業戦略に沿ったもの」と説明
TSMCはEE Times Japanの取材に対し「徹底した評価の結果、今後2年間かけてGaN事業から段階的に撤退することを決定した。この決定は市場ダイナミクスに基づくもので、当社の長期事業戦略に沿ったものだ。円滑な移行を確実にするため、顧客と緊密に協力していて、期間中も引き続き顧客のニーズに応えていく。当社の焦点は引き続き、パートナーと市場に持続的な価値を提供することだ」とコメントした。なお、今回の決定が発表済みの財務目標に影響を与えることはないとしている。
NavitasはPSMCの200mmプロセスへ移行へ
この決定を受け、Navitasは2025年7月1日(米国時間)、米国証券取引委員会(SEC)に提出した臨時報告書において「GaNウエハーの唯一の供給元であるTSMCが2027年7月にGaN生産を終了するという通知を受け、GaNウエハーの供給元を多様化する計画を継続する」と報告。同日、PSMCとの戦略的提携を発表し、PSMCの200mm GaN-on-Siliconプロセスでの製造に移行していく計画を公表した。具体的には台湾の竹南サイエンスパークにあるPSMCのFab 8Bにおいて製造予定で、2025年第4四半期に初期デバイスの認定を行い、100V品はまず2026年上半期に生産を開始する。650V品も今後12〜24カ月かけTSMCからPSMCに移行する予定だとしている。
Navitasは報告書で「当社はさらなるサプライヤー候補の選定および認定を進めている。これらの計画によってサプライチェーンが多様化し、事業運営の柔軟性が高まると期待している」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Navitasが「世界で初めて」量産化した650V 双方向GaN IC
Navitas Semiconductorは、世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference 2025」において、「世界で初めて」(同社)量産化した650V 双方向GaN ICなどを紹介した。説明担当者は「高効率化やコスト削減、設計の大幅なコンパクト化を実現する。これはパワーエレクトロニクスにおける革命だ」と語っていた。NVIDIAとInfineon、AIサーバ向け800V電力供給アーキテクチャを共同開発
Infineon TechnologiesがNVIDIAと協業し、次世代AIデータセンター向けに「業界初」(同社)の800V高電圧直流(HVDC)電力供給アーキテクチャを開発する。Infineonは「将来のAIデータセンターに必要な電力供給アーキテクチャに革命を起こす」などと強調している。こんどは中国Innoscienceが「最終勝利」宣言、GaNパワー半導体特許紛争
「われわれはEPCが仕掛けた2年間にわたる実利のない特許紛争に完全な勝利を収めたことになる」とInnoscience。半導体メーカーの「悲喜こもごも」 絶好調のTSMC、人員削減のST
STMicroelectronicsは2025年4月、製造拠点と従業員の再編を全社的に実施することを明らかにした。またInfineon Technologiesは、Marvell Technology(以下、Marvell)の車載イーサネット事業部門を25億米ドルで買収すると発表している。STと中国Innoscience、GaN開発/製造で提携 互いの拠点活用
STMicroelectronicsは2025年3月31日(スイス時間)、中国の窒化ガリウム(GaN)パワー半導体メーカーであるInnoscienceと、GaN技術の開発と製造に関する契約を締結した。GaNパワー技術の共同開発を行うほか、欧州や中国の製造拠点を互いに活用しサプライチェーン強化を目指す。ついにAIサーバに、次は車載へ GaNパワー半導体で攻めるローム
急速な成長を続ける窒化ガリウム(GaN)パワー半導体市場での展開で、ロームが新たな段階に入った。これまでは民生機器向けが中心だったが、AIサーバ用電源ユニットに初採用されたことを皮切りに、車載などのハイパワーアプリケーションでの採用拡大を狙う。