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デジタル電源制御でアナログでは成し得なかった省エネ/高効率を実現 ―― サンケン電気サンケン電気 マーケティング本部 パワーデバイス開発統括部長 山崎尊永氏

サンケン電気は、パワーモジュール、センサーと並ぶ3つのコアとして「パワーデバイス」の強化、事業拡大を進めている。同社パワーデバイスは「電源制御技術」を強みに実績を伸ばしてきたが、さらにこの強みを高めることで一層の事業拡大を図る方針。具体的には、独自に開発してきた電源専用マイコンなどを駆使し、より省エネ、高効率を実現するデジタル制御電源製品の展開を広げていく。サンケン電気 マーケティング本部パワーデバイス開発統括部長を務める山崎尊永氏に技術/製品開発戦略について聞いた。

» 2022年08月22日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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3つのコア「パワーデバイス/パワーモジュール/センサー」

――サンケン電気において、製品開発をご担当されている「パワーデバイス」の位置付けを教えてください。

山崎尊永氏 サンケン電気では現在、3つのビジネス領域を「コア」と位置付けて事業を集中させている。その3つのコアの1つが「パワーデバイス」だ。

 残りの2つのコアは、ますます加速、拡大するEVなどの電動車両向けや、白物家電・産機向けのIPM(インテリジェントパワーモジュール)を中心とした「パワーモジュール」と、関連会社のAllegro MicroSystemsで展開している各種車載向けセンサーやホールIC、電流センサーなどの「センサー」だ。

 パワーデバイス、パワーモジュール、センサーの3つのコアそれぞれで事業規模を拡大させ、バランスの良いポートフォリオを保っていくことを目指している。

サンケン電気の製品ポートフォリオ[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

――パワーデバイス領域ではどのような製品を展開されているのですか。

山崎氏 多岐にわたる製品を展開している。ダイオードやMOSFETといった各種ディスクリート半導体製品、電源制御IC、車載向けIC、そしてLEDなどだ。こうした製品を主に、自動車、白物家電、民生機器、産業機器に向けて展開している。

 自動車向けでは、自動運転/先進運転支援システム(ADAS)用途で、高性能プロセッサ用の多出力パワーマネジメントIC(PMIC)や低圧MOSFETなどを提供している他、各種ECU/バッテリー用途にもPMIC、保護デバイス、スイッチデバイスを展開している。また、エンジン向けに点火用デバイスやオルタネータ用ダイオードを提供し一定のシェアを獲得するなど既に半世紀近く車載領域での実績を積んできている。

 エアコンなど白物家電向けでも電源IC、各種ダイオードで豊富な実績があるほか、民生機器ではテレビやLED照明向け電源ICで強みを発揮している。

 産業機器関連でも、電源ICやIGBT、MOSFET、ダイオードなど各種ディスクリート製品を中心に展開し、今後はSiCの開発も進めていく。

パワーデバイス領域の主な製品[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

パワーデバイスのコア技術「ディスクリート/電源制御/マイコン」

――さまざまなディスクリート製品からPMICなど各種IC、そしてLEDまで幅広く展開されていますが、サンケン電気のパワーデバイス領域の核になる技術はどこにあるかと思われますか。

山崎氏 コア技術は3つある。1つ目が「パワー制御技術」だ。電源をはじめとするパワー制御機器では、効率が高く、低ノイズで、安定かつ高速な制御が欠かせない。サンケン電気はこの制御技術に対し多くのノウハウを有していて、パワーデバイス技術の最も大きな強みだと考えている。

 2つ目が「マイコン技術」だ。これまでの電源制御は、アナログ制御が主流でサンケン電気としてもアナログ制御を磨き、市場をリードしてきた。ただ、さまざまな機器が進化しより複雑で高効率なパワー制御が要求されるようになるに従い、デジタル制御が必要なケースが増えてきた。このデジタル技術によるパワー制御においても市場をけん引すべく、技術のベースになるマイコン開発に継続投資し、サンケン電気パワーデバイスのコア技術の1つになった。

 3つ目がパワーデバイスの基盤になる「ディスクリート技術」である。低耐圧から高耐圧まで広範囲にさまざまなダイオード、トランジスタを取りそろえており、パワー制御技術と最適に組み合わせたソリューションを提供できる点を強みとしている。

――デジタル技術による電源制御のメリットについて教えてください

山崎氏 デジタル制御の利点は数多くある。1つは、ソフトウェアにより最適な電源を構成できるという点。AC-DC電源では効率重視のPFC(力率改善回路)や低ノイズかつ応答性が高い電流共振コンバーターなど、またDC-DC電源では降圧、昇圧、昇降圧、負電圧生成など、さまざまな電源トポロジに対しソフトウェアにより柔軟かつ最適に対応できる。またアナログでは実現できない位相補償による高速応答かつ安定的な制御が行えるという点も大きな特長だ。

電源のデジタル制御とそのメリット[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

 アナログ制御では温度変化や回路パラメーター変動などの影響を受けるが、デジタル制御はそうしたことはなくロバスト(堅牢な)制御が行え、負荷変動などに対しても細かく制御方法を変えることが容易で、電源効率や安定性を高められる。他にも、負荷デバイスなど周囲と通信を通じて協調動作することで、安全性を高めたり、システム状態に応じてきめ細かく制御方法を選択することにより消費電力を低減したりということも可能だ。

 ご存じの通り、微細プロセスを使用したSoCやFPGAのコア電圧は低圧化する一方であり、最新の5nm世代プロセス採用では0.5V程度にまで低電圧化しているものがある。コア電圧0.5Vで許される電圧誤差を±3%としても、わずか±15mV以内に電圧変動を抑える必要がある。全動作温度範囲内でこうした高精度を要求するシステムは、多くの利点を持つデジタル制御でなければ、対応できない領域だろう。

――多くの利点がある電源のデジタル制御ですが、コスト面はいかがですか。

山崎氏 実は、システムコストをアナログ制御よりも低減できるという点はデジタル制御の利点でもある。

 アナログ制御の電源IC単体とデジタル制御の電源IC単体を単純に比較した場合、デジタル制御の電源ICの方がどうしても高価になる。そのため、「デジタル制御はコストが高い」というイメージを持たれている方も多いのは事実だ。だが、先述の通り、デジタル制御はソフトウェアで機能を最適化できるのに対し、アナログ制御の場合、外付け部品で調整せざるを得ず、部品点数は増え、基板サイズも大きくなる。また、デジタル制御であれば効率も改善し、放熱板なども小さくなったり、不要になったりする。こうした点を総合するとシステム全体のコストはデジタル制御の方が低く抑えられることになる。

 例えば、デジタル制御電源ICは高精細大型TVにもご採用いただいている。かつてはアナログ制御方式の電源ICが主流だったが、システムの高性能化に伴い消費電力が増えていく中、電源基板の収納スペースが限られているため、部品点数が少なく高効率化による放熱機構の削減が可能なデジタル制御方式の電源ICの採用が主流になった。価格競争が激しい民生TV市場でデジタル制御が選ばれているということからも、コスト優位性がある点を理解していただけるだろう。

電源専用の独自マイコンでデジタル制御の利点を存分に発揮

――サンケン電気のデジタル制御電源製品の特長について教えてください。

山崎氏 サンケン電気のデジタル電源ICは、これまで蓄積してきた各種電源アーキテクチャのノウハウをベースに、特定用途(ASSP)に向けて開発したソフトウェアにより個々の用途に機能を最適化している点が大きな特長だ。

 この特長を実現する上で欠かせないのが、コア技術である「マイコン」である。パワー制御に特化して独自に開発したマイコンであり、一般的な汎用マイコンとは異なる。

 独自マイコン技術の大きな特長は、CPUコアに加え、DSPコア、そしてEPUコアというヘテロジニアス(=異種の)マルチコア構成を採用して、パワー制御において高速処理を実現している点にある。

 CPUコアでは各種機能設定や通信機能、電源監視機能を処理し、DSPでは位相補償デジタルフィルターなどの演算を高速で行う。そして、他のマイコンではあまり見かけないであろうEPUコアは、Event Processing Unitの略で、イベント入力に対しゼロ遅延でタスク切り替えを行う高速応答処理を専門に行う演算コアになる。

サンケン電気が独自開発したパワー制御用マイコン[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

 デジタルパワー制御では、低ノイズ化のため、あるノードの電圧が0Vになったり電流が0Aになった瞬間にスイッチングさせたり、過電流や過電圧時に瞬時に制御方法を変えるなど、さまざまなイベントに応じてタスク切り替え処理が発生する。そうしたイベントによるタスク切り替えに時間を要するとデジタル制御の利点が生かせない。一般的にこうしたタスク切り替え処理をCPUコアで実施すると、割り込みに頼ることになり、電源のような電気回路相手ではレイテンシ(遅延)が長すぎる。CPUコア自身の性能を高めるといった対応策もあるが、消費電力やコストに影響する。EPUコアはそうしたイベント/タスクの切り替えをゼロ時間で行えるため、小さな回路規模ながら、デジタルパワー制御の利点を存分に生かせる高速処理が実現できるようになっている。

――独自のマイコン技術を応用した製品について教えてください。

山崎氏 現状、主に産業機器/民生機器向けの「MD6603」(量産中)と、主に車載向けの「MD6604」(サンプル出荷中)という2種類のマイコンチップを展開している。

 MD6603については、CPUコアに8ビットの8051コアを採用し、16ビット固定小数点対応のDSPを2コア、および16ビットのEPUを搭載するマイコンチップになっている。MD6604はさらに高性能なマイコンで、CPUコアのARM Cortex-M4 processor with FPUに加え、浮動小数点対応32ビットDSPを4コア、32ビットEPUを4コア搭載している他、19基の12ビット分解能A-Dコンバーターを搭載し、多レーンの電源制御が行える構成になっている。

 これら2つのマイコンチップをベースに、マイコンチップとドライバチップをワンパッケージ化し、産業機器/民生機器向け、車載向けそれぞれのデジタル電源IC製品を展開している。

――産業機器/民生機器向けのデジタル電源IC製品をご紹介ください。

山崎氏 MD6603チップを搭載した最新製品シリーズとして「MD67xxシリーズ」がある。その中で、「MD675x」「MD676x」は主に大型テレビ/サーバのAC-DC電源向け製品で、1製品で力率改善回路(PFC)と電流共振回路(LLC)をフルデジタルで制御できる。ブリッジレスPFCやトーテムポールPFCなどさまざまな高効率な電源トポロジに対応できる点などが特長だ。

 LED照明器具のAC-DC電源向けには「MD672x」を製品化している。デジタル制御の利点を生かし、高精度な調光制御が行える他、高効率、低リップル、低ノイズといった特長で採用が伸びている。

産業機器/民生機器向け「MD67xxシリーズ」[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

――車載向けの製品はいかがですか?

山崎氏 現在、サンプル品を提供している「MD6801」がある。この製品はADAS/自動運転システムで使用される最先端プロセスを使用するSoC/FPGAなどに向けた最大11レーン対応のパワーマネジメントIC(PMIC)として、MD6604チップをベースに開発した。1V未満の定電圧コアへの高精度な電源供給だけでなく、LiDARやセンサーなど高電圧、負電圧を求めるような負荷に対しても、1製品で同時に制御できるPMICになっている点が特長になっている。

車載自動運転/ADASシステム向け「MD6801」[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

――アナログ制御では難しい柔軟な対応ができる点がデジタル制御の魅力の1つですが、ソフトウェア開発を負担に思うユーザーは多くいると思います。ソフトウェア開発面でのサポート体制について教えてください。

山崎氏 電源としての汎用機能をもつ標準ソフトウェアをサンプル提供しており、ユーザーに評価いただいた上で活用いただいている。さらに、PC上のGUIアプリケーションを使用して各種パラメーターを入力するだけで電源仕様を設定し評価できる環境も準備した。もちろん、ユーザー側でプログラム開発していただくための、統合開発環境、各種API、コード生成サポートツールも提供している。デジタル方式は、電源システムの機能や特性を改善する時間が短いので、アナログ制御に比べて開発負担も大きく軽減できるだろう。

高効率電源製品提供を通じ社会課題の解決に貢献

――今後の開発方針について教えてください。

山崎氏 ESG(環境・社会・ガバナンス)経営に取り組むサンケン電気グループでは、社会課題の解決に向けて特に取り組むべき課題として、「本業の推進(省エネ・高効率化)によるCO2の削減」と「事業活動を通じた環境負荷の低減」と定めている。

サンケン電気のESG経営[クリックで拡大] 出所:サンケン電気

 製品開発の立場としては、電力の損失、ロスを減らすことのできる製品を開発することで、CO2削減に貢献していくことが最重要と考え、積極的に取り組んでいる。

 具体的には、デジタル技術を積極的に取り入れ、サンケン電気らしく技術を磨いていくことで、これまでアナログ技術だけでは成し得なかったさらなる省エネ化、高効率化を実現していきたい。次世代のマイコン技術開発などを通じて、より一層、電源の高精度化、高効率化、低消費電力化の実現を目指していく。


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提供:サンケン電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年9月22日



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