PHS内蔵の情報端末で始まった日本の「スマートフォン」(1996年〜1997年):福田昭のストレージ通信(235) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(16)(1/2 ページ)
今回は、日本で初めてのスマートフォンをご紹介する。具体的には、日本独自の簡易型携帯電話システム「PHS(Personal Handy-phone System)」(当初の呼び名は「ピーエイチエス」、後の呼び名は「ピッチ」)と携帯型情報端末(PDA)を融合したデバイスである。
日本独自の簡易型携帯電話システム「PHS」
フラッシュメモリに関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」の会場では最近、「Flash Memory Timeline」の名称でフラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表を壁にパネルとして掲げていた。FMSの公式サイトからはPDF形式の年表をダウンロードできる(ダウンロードサイト)。
この年表は1952年〜2022年までの、フラッシュメモリと不揮発性メモリに関する主な出来事を記述していた。本シリーズではこの歴史年表を参考に、主な出来事の概略を説明している。原文の年表はすべて英文なので、これを和文に翻訳するとともに、参考となりそうな情報を追加した。また年表のすべての出来事を網羅しているわけではないので、ご了承されたい。なお文中の人物名は敬称略、所属や役職、企業名などは当時のものである。
前々回と前回は、IBMが1994年に開発した世界で初めてのスマートフォン「IBM Simon」の略史と概要を解説した。今回は、日本で初めてのスマートフォンをご紹介する。具体的には、日本独自の簡易型携帯電話システム「PHS(Personal Handy-phone System)」(当初の呼び名は「ピーエイチエス」、後の呼び名は「ピッチ」)と携帯型情報端末(PDA)を融合したデバイスである。1996年〜1997年にかけて京セラと東芝がそれぞれ開発した。PHSの商用サービス開始は1995年7月なので、PHSサービスの開始とほぼ同じ時期に、開発が始まったことがうかがえる。
京セラが初めてのPHS内蔵PDA「データスコープ」を1996年9月に発表
日本で初めてのPHS内蔵PDAは、京セラが1996年9月に発表し、1997年2月に発売した「データスコープ DS-110」だろう。「データスコープ DS-110」は、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が1996年2月に開発したPC(PCMCIA)カード形PDA「ChipCard(チップカード) VW-200」をベースにしており、パソコンのPCカードスロットに本体下部を差し込むことによって内蔵データをパソコンと共有できる。
本体は2400ビット/秒のモデムを内蔵しており、パソコン通信サービスへのアクセスや電子メールの送受信などを実行する。情報端末機能としてはカレンダー、予定表、やるべきことのリスト(To Doリスト)、住所録、世界時計、電卓などがある。
京セラが1997年2月に発売したPHS内蔵PDA「データスコープ DS-110」の外観。折り畳み形の端末である[クリックで拡大]出所:MK Products, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
「DS-110」の外形寸法は折り畳んだ状態で55×108×27mm、本体重量は約175グラム(バッテリーを含む)。バッテリーはリチウムイオン二次電池である。前回で説明した「IBM Simon」(63.5×203×38mm、約510グラム)と比べ、大幅に小さくて軽いことが分かる。待ち受け時間は500時間、連続通話時間は5時間である。こちらも「Simon」の待ち受け8時間、連続通話1時間と比べてはるかに長い。
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