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PHS内蔵の情報端末で始まった日本の「スマートフォン」(1996年〜1997年)福田昭のストレージ通信(235) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(16)(2/2 ページ)

今回は、日本で初めてのスマートフォンをご紹介する。具体的には、日本独自の簡易型携帯電話システム「PHS(Personal Handy-phone System)」(当初の呼び名は「ピーエイチエス」、後の呼び名は「ピッチ」)と携帯型情報端末(PDA)を融合したデバイスである。

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「データスコープ」の母体となった日本IBMのPCカード形PDA

 PC(PCMCIA)カード形PDA「ChipCard(チップカード)」にも簡単に触れておこう。日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が1996年2月に開発、発売した「ChipCard VW-200」は、折り畳み式携帯電話端末と類似の外形を備えており、2分割された本体の1つが液晶パネル、もう1つがキーボードとなっている。液晶パネルはSTN方式モノクロ液晶で解像度は320×200ドットと、当時としてはかなり高い解像度を有する。キーボードはテンキー(アルファベット入力、カナ入力を兼ねる)と四則演算キー、カーソルキーを備える。またテンキーを介して日本語漢字入力(JIS第一水準と第二水準の漢字フォントを内蔵)を可能としている。

 本体を広げた状態ではタイプ2のスロット、本体を折り畳んだ状態ではタイプ3のスロットに挿入することで、パソコンとデータをやり取りできる。さらに、パソコンで開発したアプリケーションを「VW-200」に転送して動作させることも可能である。


日本アイ・ビー・エム(日本IBM)が開発したPCカード形PDA「ChipCard VW-200」の外観。外形寸法(いずれも推定)は幅が54mm、キーボード側本体の厚みが5mmで長さは86mm。本体重量は75グラム[クリックで拡大]出所:Chen4, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 CPUはセイコーエプソンの8ビットマイクロコントローラ「SMC88112」(最大動作周波数8.2MHz)、RAMの記憶容量は256Kバイト(ユーザー領域は219Kバイト)である。このほか128KバイトのNORフラッシュメモリを内蔵するものの、ユーザーが使える領域ではないようだ。漢字フォントの格納用とみられる。

 バッテリーは少し変わっており、ボタン型空気亜鉛一次電池「PR2330」を3個使う。当時としてはポケットベルに標準的に使われていたボタン型電池である。しかし「PR2330」は現在、製造されていないようだ。

ペン入力PDAとPHSデータ通信を融合した東芝の「GENIO PCV100」

 東芝が1997年2月に開発を発表し、同年4月に発売したPHS内蔵PDA「GENIO PCV100」は、ペン入力液晶パネルのPDAと最大32kビット/秒のPHSデータ通信を統合した。もちろん通常のPHS電話としても使える。

 日本のPHSサービス会社は、32kビット/秒と当時としては高速のデータ通信サービスを1997年4月に開始した。このサービスを利用可能なPHS端末がいくつか開発されており、その1つが「PCV100」である。


東芝が開発したPHS内蔵PDA「GENIO PCV100」の外観。外形寸法は長さ155mm×幅76.5mm×厚み20.3mm、本体重量は220グラム。東芝が1997年2月27日に公表したニュースリリースから

 「PCV100」の情報端末としての最大の特長は、抵抗膜方式の透明な感圧式タブレットと反射型モノクロ液晶パネル(239×160ドット)を搭載したことにある。ユーザーは操作のほとんどをペン入力で実施する。

 情報端末機能としてはWebブラウザ(ダイヤルアップIP接続)、インターネット電子メール(ダイヤルアップIP接続)、ファクシミリ送信、ポケットベルへのメッセージ送信、住所録、予定表、手書きメモなどがある。また本体はNANDフラッシュメモリ搭載小型カード「SmartMedia」のスロットを備えており、外部補助記憶として使える。

 パソコンとのデータ交換は、別売りのRS-232Cケーブルとパソコン用ソフトウェア(Webサイトから無償ダウンロード可能)によって実施する。あるいは赤外線通信ポート(IrDA 1.0準拠)を介してデータをやり取りする。

 なおバッテリーはリチウムイオン二次電池。待ち受け時間は200時間、連続通話時間は150分である。

(次回に続く)

⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧

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