老後を生き残る戦略として「教祖(仮)」になってみた:「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(7)(8/10 ページ)
前回に続き、老後の生き残り戦略の一つとしての信仰を考えてみます。今回、私は「教祖(仮)」となり、「教祖ビジネス」についてさまざまな角度から検討してみました。
「教祖ビジネス」の素案
では、最後に、私の考える教祖ビジネスの素案を開示したいと思います。
今回は、教祖になって宗教団体の運用を、できるだけ具体的なユースケースで検討しました(教義の内容については、完全にスキップしましたが)。
これらの検討の結果、私が狙うターゲットは、”孤立・孤独ビジネス”としました。これらは、現在、個人の問題を越えて、国家の経済モデルにインパクトを与える問題として、今、非常にホットな話題であり、大きなビジネスチャンスと言える状況です。しかも、ターゲット層が、実に優良物件なのです。お金のないシニアではなく、これからお金を稼いでいく30代をメインターゲットとできるのです。
しかも、日本人の平均年齢から鑑みて、脱会を阻止し続けることができれば、最大50年間の安定した献金が期待できます。もちろん、信徒を飽きさせない継続的なイベントの提供などは面倒ですが、それでも、期待できる“おいしいビジネス”と言えそうです。
しかし、課題もあります。布教、勧誘、修行、献金、いずれも、コストがやたらかかることです。教団の管理側の人間を増やすことで対応はできるかもしれませんが、そうなると、HR(ヒューマンリソース)の配分が面倒です。可能であれば、私は教団の運営を、ワンオペ(One Operation)で実施したいくらいなのです。
そういう観点から検討した「ワンオペ布教」の一例を紹介します。
前述の私のシミュレーションでは、1000人中90人の信徒を作り出すのに、2年の歳月と、のべ3650人日(365日 × 2年 × 5人)の勧誘者を動員するコストが必要であるとの結果となりました。比して、SNSを使ったワンオペ勧誘は、コスト面において圧倒的に安いです。
VR、メタバースを使った修行などは、現時点では一笑に付されるのは当然ですが、私は、このような「一笑」が世界を変えていく現実を山ほど体験していきました。いつだって、新しい試みは、このような取り扱いから始まってきたのです。特に、デジタルサービスを使った洗脳技術は、2016年の米国大統領選挙で、実用段階に入っています(例えば、「マインドハッキング: あなたの感情を支配し行動を操るソーシャルメディア」など)。
暗号資産(仮想通貨)は、教祖側の私から見れば、最高の献金手段です。自力で取引サイトを作れば、権力サイトからの監視の免れる(ただし、法律違反)し、ブロックチェーンで献金帳簿を公開することで、うまいこと献金競争や、ノルマ競争に巻き込むこともできるかもしれません(でも、ブロックチェーンを使うほどのことはないかな?)。
それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。
【1】今回は、前回の「戦略としての信仰」から、今回は、「お金に愛されないエンジニア」の老後を生き残る「戦略としての教祖」を考えてみました。
【2】宗教団体の教祖になることは、インスタントラーメンを作るより簡単であるという事実と、宗教団体と宗教法人が混同されている事実に着目して、宗教法人が、「国家の監視下に置かれる代わりに、税制・法律に関する優遇を受ける」制度であること、そして、法人手続きを行う前には3年間の活動実績が必要になるなど、面倒くさいことが山ほどあることを説明しました。
【3】「宗教法人運営のガイドブック - 文化庁」に記載されている、「1.宗教法人の基本理念」の(4)の「宗教法人性善説」を踏みにじる、江端の教祖ビジネスの戦略案を展開しました。
【4】教祖の要件、教団の教義の要件、教団運営の要件を、宗教=ビジネスの観点から、現在、マスコミで取り沙汰されている教団の運用等も参考にしながら、ドライに検討・分析をしてみました。
【5】その中でも、私が特に難しいと考えている「新しい信徒の獲得」について、ターゲティングを行い、現在、宗教団体が実施している具体的なアプローチの中から、具体的な方法を3つ選出し、その1つについて、コンピュータシミュレーションを実施して、ざっくりした「信徒の獲得コスト」の試算を実施しました。また、献金に関しては、合法のラインを死守して、目立たないように実施することの重要性を説きました。
【6】最後に「教祖は”面倒”だが”おいしい”」という結論と、その理由を述べました。具体的には、孤独・孤立ビジネスを行うことで、30代を取り込み50年間の献金を期待できる、という検討結果と、今後は、教祖によるワンオペ教団運用が可能となる、という未来予測を行いました。
以上です。
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