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多値記憶(マルチレベル)時代の始まり(1997年〜2001年)(後編)福田昭のストレージ通信(242) フラッシュメモリと不揮発性メモリの歴史年表(23)(1/2 ページ)

前回に続き、フラッシュメモリが製品に「多値記憶技術」を駆使し始めた状況を解説する。東芝とサンディスクの合弁事業が話の中心となる。

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 (ご注意)今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを推奨します。



東芝とサンディスクのNANDフラッシュ合弁事業がスタート

 フラッシュメモリの記憶容量を微細化とは関係なく倍増させる技術「多値記憶(マルチレベル)」に関する前後編の後編である。前編で述べたように、1個のメモリセルに2ビットを記憶させるNORフラッシュメモリ技術「StrataFlash(ストラータフラッシュ)」を開発したと1997年にインテルが発表した。

 インテルは「StrataFlash」技術の導入により、記憶容量を2倍に拡大したNORフラッシュメモリを相次いで製品化していく。2001年には、製品の記憶容量が256Mビットに達した。

 NANDフラッシュメモリが多値記憶を実用化するのは2001年11月のことである。その前段階として、東芝とサンディスクが1999年10月にNANDフラッシュメモリ事業で全面的に提携した(当時のニュースリリース)ことが、後から振り返ると非常に重要だったことが分かる。共同開発と共同生産を2本柱とする提携は、現在のキオクシアとウエスタンデジタルの合弁会社に至る。


フラッシュメモリと不揮発性メモリの主な出来事(1999年〜2000年)。下線部は東芝とサンディスクのNANDフラッシュメモリ合弁事業に関する項目[クリックで拡大]

東芝とサンディスクが1999年10月に発表した共同開発と製造合弁会社の設立に関するリリース(Webサイトの画面を抜粋したもの)[クリックで拡大]

 半導体事業で合弁は珍しくないものの、合弁事業が20年を超える事例は非常にまれだ。筆者の知る限り、半導体事業では最も長期にわたる提携関係である。東芝のNANDフラッシュ事業は東芝メモリに子会社化し、さらには独立してキオクシアとなった。サンディスクはウエスタンデジタルに買収された。提携関係を構築する両社が大きく変ぼうしても、共同開発と製造合弁が続いたことは、類を見ない。

システム開発者の視点でNANDフラッシュを普及させたサンディスク

 1990年代はNORフラッシュとNANDフラッシュがフラッシュメモリ市場に混在しており、市場の大半を占めるのはNORフラッシュであり、サプライヤーとしてはインテルが強かった。将来は市場でNORとNANDのどちらが優位になるのかは、不透明だった。

 そんな中でサンディスクは非常に早くから、ストレージ応用におけるNANDフラッシュメモリの優位性に気付いていた。優位性とは、多値記憶と微細化にはNORフラッシュメモリよりもNANDフラッシュメモリが適しており、記憶容量当たりのコストを下げることでHDDや光ディスク装置などを置き換える可能性が高い、ということだ。さらにサンディスクはNANDフラッシュメモリを単体ではなく、システムの一部として捉えていた。

 NANDフラッシュメモリはそのままだと、システム開発者にとっては扱いやすいとは言い難い。そこでサンディスクは、NANDフラッシュに特有の動作を隠ぺいした「フラッシュストレージ(フラッシュメモリを内蔵する記憶装置)」を開発し、既存のシステムに存在するHDDや光ディスク装置などとそのまま入れ替えることでNANDフラッシュを普及させることを考えていた。記憶装置を入れ替えるだけで、システムの性能が向上する。このためにはメモリだけなく、コントローラーが重要だと認識していた。

 対する東芝のNANDフラッシュ事業部門は、半導体メモリの製造技術(微細加工技術)で先端を走っていた。微細化をけん引することで、NANDフラッシュメモリの記憶密度を率先して高められた。

 サンディスクと東芝の提携は、得意技を持ち寄って融合させるという、理想的な関係だったと言える。この相補的な関係が、提携関係の長期化に寄与した。


サンディスクが創業(1988年)時点で打ち出した「固体ストレージシステム」のコンセプト。「微細化が可能な不揮発性メモリ(左上、具体的にはNANDフラッシュメモリ)」と「回転メディアと類似のコントローラー(右上、具体的にはNANDフラッシュの特性を隠ぺいしてHDDあるいは光ディスク装置のように見せるコントローラーLSI)」を融合させることで、「大容量かつ低コストの固体ストレージシステム(下、具体的にはSSDやカードメモリ、USBメモリなど)」を実現する

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