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「新しい資本主義」をエンジニア視点で考えてみる「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(8)(8/9 ページ)

今回は「新しい資本主義」について考えてみます。きっかけは嫁さんの「新しい資本主義って何だろうね」というひと言。これを調べていくと、「令和版所得倍増計画」なるものの実施が絶望的に難しそうであることが明らかになってきました。

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1960年代の所得倍増計画と比較してみる

 さて、所得倍増計画というと、やはり、わが国の高度経済成長期のまっただ中の、池田内閣(1960〜1964年)の所得倍増計画と比較するのが、妥当かと思います。で、比較してみたのですが、まあ、これが、エラい違いでして、ため息が出てくるほどでした。

 まず、「所得倍増計画」を打ち上げた時の、当時の国民の反応は、非常にネガティブでしたので、現政権(岸田内閣)は、今の評価を気にしないで進めて頂きたいです。

 ただ、ここから違うのは、当時の池田内閣は、それはそれはしつこいくらい、この計画を、ところ構わずしゃべりまくって、国民を「洗脳」し続けていた、という点です ―― いや、どこぞのカルト教団ではないので、「布教」くらいにしておきます。

 さすがに一国の総理が、布教活動を続けていれば、国民の方も「その気」になってきたようです。池田内閣では、池田首相だけでなく、大臣やブレーン(官僚)も、布教をしていた様子が伺えます ―― もう、これはキリストの復活後、世界各地に散って布教を続け、使途たちのようです(最後に惨殺されてはいませんが)。ですから、現総理も、チームを結集して、情宣による国民の洗脳……もとい、布教に努めることをお勧めします。

 それにしても、池田内閣(1960〜1964年)当時の状況は、はっきりいって「うらやましすぎます」。

 部下を酷使する上司が高く評価され、メンタル障害を起こす部下は『弱いヤツ』と切り捨てられました。世界中で、Made in Japanが売れ始めた一方、国内社会インフラは未整備、ボロボロ。新幹線も、高速道路もなく、満足な住宅環境すらありませんでした。

 東京オリンピックの大会施設も、これから建造しなければならず、原子力発電は「安全な未来のエネルギー」として稼働を待っていました。国民は、手に入れるべきオーパーツ(三種の神器)が示されていて、そして、海外旅行(例:ハワイ)に行ったことを「一生の自慢話にできる」という世界がそこにはありました。

 「所得倍増」という種火を放り込むだけで、日本が一気に燃え上がる下地が既に出来上がっていたのです。

 比して、現状のわが国と言えば、「分かりやすいネタ(=金のにおいのするネタ)」がありません。コンプライアンスは厳しい(というか正しい)ですし、インフラは保守で手いっぱい、家電製品は惨敗して撤退、オリンピックはコロナ禍で経済効果など見る影もなく、都市再開発では住民集客を期待できるのか怪しく、原発は再稼働が難しい上に、古い原発の延命を模索しているありさまです。

 国民共通で目に見える有体物の商品は”iPhone”くらいで、唯一の希望となりそうなのは「インバウンド」ですが、そこには、『英語に愛されない国民』が待っている、と。

 30年間、賃金上昇がピクリとも上がらなかったこの国で、「所得倍増」と言われても、そりゃもう、国民としては『ポカーン』とならざるを得ません



 「お金に愛されないエンジニア」にとっては、「新しい資本主義」がどうなるかは、どうでもいいのです。私としては、所得倍増計画で、税収が増えて、年金が増えることが大切なのです ―― 私は、日本の停滞期を生きてきて、リタイア後に都合よく、潤沢で安定な年金で生きていきたいのです。

 と、ここまで執筆したところで突然、私の知りたいことが満載されている資料がでてきました。『参考数値も入っているし、具体的な対策案もある ―― 相変わらずKPIの記載はありませんが、それを差し引いても、結構よく書けているぞ』というのを、このコラムの脱稿前に見つけてしまいました。

 が、もう、コラムの内容を書き換える時間がありませので、今回はこのままリリースしてしまいます ――次回をお待ちください。


参考文献はこちら



 それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。

【1】今回は、嫁さんの一言「新しい資本主義って何だろうね?」に端を発して、私の安心で潤沢な老後の年金を得られるか否か、という観点から、政府の新しい政策「新しい資本主義」について調べてみました。

【2】まず、以前の私のコラムの連載で取り扱かっていたテーマ「働き方改革」について、政府の総括(または中間報告)を探してみましたが、見つけることができませんでした。そこで、私なりに総括をしてみました。結果として、「コロナ禍が、(1)わが国の働き方改革で見えなかった部分を数倍〜数百倍も拡大して、(2)全く進まなかった分野を、10〜20年単位で加速した」と統括し、非正規雇用、女性・若者人材、介護・障がい者、外国人雇用で「悪い」効果が、副業、教育で「良い」効果があったと評価しました。

【3】政府「新しい資本主義」のホームページを読んで概要をまとめてみたのですが、「成長戦略」は、ぶっちゃけて言えば、金の"におい"がしないし、「分配戦略」は、人への投資、特にデジタル分野への労働人口の移動の話を読んで、デジタルをなめるな!と思ったし、実現する社会に記載されている内容は、それが「手段」なのか「目的」なのかが分からん、という状態で ―― 私も、嫁さんと同様に「分からない」という結論に至りました。その原因の一つに、数値目標がない、ということに気が付きました。

【4】「新しい資本主義」のアンチテーゼとなる「古い資本主義」が、新自由主義であると当たりをつけて、新自由主義の過去の経緯を簡単に説明し、かつ、「小さい政府」と「大きい政府」が揺り動き続けて、現在の格差社会、デフレ経済に至ったというお話を展開しました。

【5】再度、「新しい資本主義」の成長戦略に着目して、その一つ一つについて、エンジニア視点から批評を行いました。1960年代の池田内閣の「所得倍増計画」と比較して、「令和版所得倍増計画」なるものの実施が絶望的に難しそうであると、論じました。

【6】最後に、かなり重要な政府資料を発見したのですが、今回は時間切れということで、次回に説明させていただくことにしました。


 以上です。



 今回のコラムでは、中国共産党の、徹底した数字による評価指標、KPIによる、成果の「見える化」についてお話をしました。おそらく地方の共産党の幹部は、このノルマ達成のために、胃の痛い日々を過ごしているんだろうなぁと、心から同情しています。

 とはいえ、昨今、江戸時代以前の領主と農民の関係のように、権力を使って、重い税金(物納)を命じれば、KPIが達成される、という単純な話にはならないでしょう。「特許保有数/人」や「デジタル(技術/サービス)が生み出したGDP」などというノルマ≫を、暴力や懲罰などのアナログというかアナクロというか、そんなアプローチで、達成できるわけがないからです。

 多分、最新の数学やコンピュータを使った、OR(オペレーションズ・リサーチ)などの、最適化問題ソリューション(最適化アルゴリズム)を使い倒して、このノルマ達成に対する数理的な戦略立案を行っていることは、間違いないと思います。

 私は、中国の国民監視体制のレベルについてあまり詳しくないのですが、中国共産党が、中国の国民を、個人の単位で管理していることは知っています。しかし、その個人情報の粒度までは知りません。

 もし、中国共産党が、例えば、子どもたちの数学や理科のテストの点数まで把握できているとしたら、この「特許保有数/人」というノルマ達成が、それほど難しいものではない、ということは分かります*)

*)わが国では、こういう個人情報は入手できないので、私は、コンピュータの中に、仮想的な国民(エージェント)を作って、試すことしかできないのです。

 また、その他に、国民の教育、特に、数学や理科などの理系教育に対する、長期計画や優遇政策があることは、確実と見るべきでしょう。



 中国がGDPで日本を抜き、2030年には米国をも抜く ―― そんなことを、日本人が一人も想像していなかったころ、私の師匠は、この可能性に言及していました(筆者のブログ)。

 刮目(かつもく)すべきは、以下のフレーズでしょう。

文もうまでは行かずとも、読み書きと四則演算程度にしておきましょう。
一次方程式くらいは許されますが、微積分などの高等数学は決して教えてはなりません。

 わが国で、三角関数不要論を唱えている有識者は、自国の子どもたちに、上記と同じことを言っているのであり ―― 比して、中国は、数学と科学で、自国を世界一の国にしようとしていて、そして、これからも続けていくのでしょう



 あと、中国人の英語力についても言及したかったのですが、正直、疲れてきましたので、以下の私のブログをご参照ください。

 観光地で、中国人ツアーの観光客の子どもたち(小学生高学年くらい)に、「ハトの餌」の買い方を『英語』で教えてあげていた時に、そこにいた子供(10人くらい)の全員が、その内容を理解したことに、びっくりしました。

 さらに、私が『君たちは、普通に英語が使えるのか?』と尋ねたら、キョトンとされて『使えるけど』と返された時の、私の衝撃 ―― という話もあったはずなのですが、私の日記から見つけ出せませんでした。誰が見つけたら、私にURLを送ってください。

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