433量子ビットのQPUを発表、IBMの最新開発動向:次世代量子システムの詳細も(1/2 ページ)
2022年11月に開催された「IBM Quantum Summit」で、IBMは量子コンピューティングの発展/普及に向けた最新の取り組みを紹介した。
2022年11月に開催された「IBM Quantum Summit」のテーマは「The Next Wave(次の波)」だった。これは、IBMの量子コンピューティングが転換期へと加速度的に近づいている、という見解を背景としている。
同社は、単一のシステムとしては最多の量子ビット数を実現したスーパーコンピュータなど、量子コンピューティングに関するロードマップのマイルストーンを複数達成してきた。今回のサミットでは、IBMは量子コンピューティングの発展/普及に向けた最新の取り組みを紹介した。
単一チップで1000量子ビット以上を目指すIBM
ハードウェアに関する重要な発表の一つとして、IBMの新たな量子処理ユニット(QPU)「Osprey」が挙げられる。Ospreyは、同社製量子プロセッサの中で最大数の量子ビットを実現したプロセッサだ。量子ビットは433で、2021年に初披露したプロセッサ「IBM Eagle」の127量子ビットの3倍以上に相当する。
Ospreyは、チップ当たりの量子ビットを増やし量子プロセッサをスケーリングする上で、重要な指標となる。IBMはこの先のさらなる成長を計画する中で、単一チップで1000量子ビット以上を実現することを目標として定めた。だが、単一チップ上の量子ビット数を拡大するには、特殊なマイクロ波パルスを制御などの面で限界がある。また、ノイズよりも先に、量子ビットのサイズの限界という課題が出てくる。そのため、量子コンピューティング開発の最終的な方向性は、モジュール化や量子通信の実現によって計算能力を高めることになるとみられる。
IBMは、より大規模かつ多数のQPUを制御するため、新たに、4K(ケルビン)で動作可能な低温CMOS量子ビットコントローラーを開発している。このマイクロコントローラーは、最終的には低温保持装置(クライオスタット)の中に置かれ、QPUのより精密な制御や、必要な信号配線の削減が可能になるという。IBMは、標準的なCMOSプロセスで同コントローラーを開発し、極低温状態で動作するシリコンの特性評価を行っている。
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