ICT人材不足の解決へ、業界はアフリカに期待を寄せる:Intel、NVIDIA、Broadcomなどが注力(2/2 ページ)
米国のCHIIPS法など、ハイテク産業に向けた投資が加速する一方で、世界的な人材不足が課題となっている。現在、ICT業界は、アフリカ大陸がこの課題解決の可能性を秘めていると期待を寄せている。
Intelによる2つのプログラム
Intelはアフリカ大陸の31カ国が参加する団体「Smart Africa」と連携し、安価なブロードバンドとICTの利用を通じた社会経済開発の促進に取り組んでいる。今後は、政策立案者、ITスペシャリスト、そして学生に向けて教育と能力開発を提供する予定だ。
Smart AfricaのCEO(最高経営責任者)であるLacina Kone氏は「アフリカ諸国の政策立案者や人材を未来の技術に向けて準備させることを目指す」とコメントしている。
Kone氏の目標は大きな賭けだ。
Intelの欧州、中東、アフリカのデジタルリーディネスプログラム担当シニアディレクターであるNuno Martins氏は、EE Timesに「世界経済フォーラムでは、AI(人工知能)が人材市場を混乱に陥れ、840万件もの雇用が喪失することが指摘された。一方で、特にデータサイエンスとAIによって、関連した970万件の雇用が新たに起こることが見込まれる。われわれが目指すのは、次世代の技術者やイノベーターを養成することだ」と語った。
Intelが主導するもう一つのプログラム「Project N50」は、アフリカ諸国のデジタルキャパシティーを増やすために立ち上げられた。同社は、Dell Technologies、FreedomFi、Liquid Intelligent Technologies、SchoolToGoといった90社近いパートナーと共に、教育などコミュニティー特有のニーズに役立つ使命を負っている。
Project N50の設立者の一人で、Intelのネットワークおよびエッジソリューショングループで教育担当シニアディレクターを務めるDan Gutwein氏は、EE Timesに対し「最も優先すべきはほぼ100%『教育』だ。そのすぐ後に『健康』と『農業』が続く」と述べた。
教育リソースの必要性を訴えたあるコミュニティーにおいて、Project N50は地元のコンテンツ配信ネットワークに2500本のビデオと5000件の学習プランをアップロードした。いずれも教育省が承認したコンテンツである。
スタートアップやIT人材増を、NVIDIA
一方、NVIDIAはアフリカ10カ国の政府や開発者コミュニティーにデータサイエンスのトレーニングと技術を提供している。これによって、より情報に基づいた政策決定やリソース配分の迅速化を可能にしている。
NVIDIAのワールドワイドAIイニシアチブ担当ディレクター、Geoffrey Levene氏はEE Timesに、「これは、新興市場におけるデータサイエンスとAIのコンピューティング能力をいかに向上させるかというアイデアであり、当社が各国の統計局のデータチームとどのように連携できるかを示す試みだ」と述べた。
同社はまた、現地の大学や研究機関、データサイエンスコミュニティーと連携し、政策立案者や統計担当者のために、国勢調査データやその他の情報源から洞察を導き出せる開発者を育成しているという。
NVIDIAは、多くの新興市場で能力開発をサポートしている。Levene氏は、「最終的には、これらの市場でより多くの開発者やエンジニアが当社のプラットフォーム発展に貢献することを期待している。新興市場でもスタートアップが増え、より多くの人がプログラマーとなる日が来ることを期待している」と述べた。
NVIDIAは「United AI Alliance」と題されたプログラムにおいて、国連アフリカ経済委員会および「持続可能な開発データのためのグローバルパートナーシップ」と共同でガーナ、ケニア、ルワンダ、セネガル、シエラレオネに支援を提供した。そして将来的には、ギニア、マリ、ナイジェリア、ソマリア、トーゴへの支援を予定している。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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