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CHIPS法の資金を狙う米最大のMEMSファウンドリー「最適の候補」と主張(1/2 ページ)

米国のCHIPS法による、520億米ドルの補助金は2023年に公布が開始する予定だ。米国のMEMSファウンドリーであるAtomicaも、この補助金獲得を目指しているという。

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 米国のCHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)による、520億米ドルの補助金は2023年に公布が開始する予定だ。米国のMEMSファウンドリーであるAtomicaのCEO(最高経営責任者)、Eric Sigler氏は米国EE Timesに対し、同社もこの補助金獲得を目指していると明かした。

5G/自動運転などのメガトレンドで成長加速するMEMS

AtomicaのCEO、Eric Sigler氏
AtomicaのCEO、Eric Sigler氏 出所:Atomica

 Atomicaの年間売上高は約3000万米ドルで、150人の従業員を擁する小規模施設を米国カリフォルニア州で運営している。同社はトランジスタではなく、セルソーターやシリコンフォトニクス、圧力センサー、モーションセンサーを製造している。

 Sigler氏は、「フォトニクスやMEMS、センサーアプリケーションについて言えば、当社にはこれらの分野での経験や積極的なプログラムがある」と主張している。

 同社は、細胞療法や遺伝子治療を可能にする生物医学研究製品を手掛けるドイツのMiltenyi Biotec(以下、Miltenyi)など、約50社の顧客を有する。

 フランスの市場調査会社であるYole Groupの2022年9月の報告書によると、MEMS市場は年間約9%成長し、2027年までに220億米ドルを超える見通しだという。MEMS市場は、ドイツの自動車部品メーカーRobert Boschがほぼ独占しており、同社の他、BroadcomやSTMicroelectronics、Qorvo、TDK、Goermicro、Texas Instrumentsが上位を占めている。

 Yole Groupは、「数年前まで、MEMSファウンドリーのトップ企業の売上高は非常に少なかった(通常6000万米ドル未満)。現在、MEMS製造のアウトソーシングに意欲的な新しい企業が成長している。MEMSファウンドリーはその恩恵を受けて、売上高を大幅に伸ばしている」と述べている。

 業界団体であるSEMIでMEMS&Sensors Industry Groupのエグゼクティブディレクターを務めるTim Brosnihan氏は、「2020年から2021年にかけて、MEMSファウンドリーの上位4社は、MEMS市場全体の成長を上回る20〜48%の成長を記録した。5G(第5世代移動通信)や自動運転などのメガトレンドは、MEMSに大きな成長機会をもたらしている」と述べている。

 同氏は、業界の統合が進むと予測している。同氏は米国EE Timesに対して、「大手企業は多くの企業を買収しており、おそらく、さらなる統合は避けられない。MEMSやセンサー分野では、多様なエコシステムを維持しながら、多くの新興企業が参入し続けている」と語った。

 Sigler氏は、「Atomicaが十分な規模に達したら、上場を目指したい」としているが、買収の可能性を排除しているわけではない。

 同氏は、「幸いにも、当社の投資家はかなり長期志向であるため、例えば1億米ドル以上の売上高を目指して、数年かけて成長することができる。この目標を達成できれば、IPO(新規株式公開)の良い候補になるはずだ」と述べている。

 Atomicaは、Miltenyiにセルソーターを供給している。セルソーターとは、さまざまな種類の細胞を迅速に分離する電磁アクチュエーターである。

 Sigler氏は、「当社は、使い捨てカートリッジに入る小型のMEMSチップを製造しており、このチップはさまざまな病気に対する画期的な治療法に使用されている。放射線や化学療法で体を攻撃する代わりとなる、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法と呼ばれるまったく新しい分野がある。CAR-Tでは、放射線や化学療法を行う代わりに、患者のT細胞を採取し、新しいDNAで再プログラムして体内に戻すことで、自らの免疫システムが体内の腫瘍を探し出して破壊することができる」と説明している。

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