自動車業界の変化から半導体政策まで、NXP和島社長に聞く:日本法人社長に就任して2年以上(1/2 ページ)
2020年10月に、NXP Semiconductorsの日本法人であるNXPジャパンの代表取締役社長に就任した和島正幸氏。自動車分野などでの半導体不足や、それに端を発した半導体政策/投資の加速など、半導体業界に大きな影響を与える出来事を同氏はどう分析しているのだろうか。
NXP Semiconductorsの日本法人であるNXPジャパンの代表取締役社長を務める和島正幸氏。同氏が就任したのは、コロナ禍のさなかとなる2020年10月だ。そこから現在まで、自動車分野などでの半導体不足や、それに端を発した半導体政策/投資の加速など、半導体業界に大きな影響を与える出来事が続いている。和島氏は、そうした状況をどう見ているのか。NXPジャパンの戦略とともに聞いた。
「技術的な強みがユニークな形で表れているNXP」
――NXPの注力分野について、あらためてお聞かせください。
和島正幸氏 オートモーティブ、インダストリアル&IoT、モバイル、通信インフラの4分野に注力している。2022年の売上高比率は、オートモーティブが52%と半分以上を占める。次にインダストリアル&IoTが21%と続き、通信インフラは15%、モバイルは12%となっている。日本ではオートモーティブとインダストリアル&IoT分野の売上高が大きく、こうした市場規模、成長率ともに大きい分野に経営資源を投下していく計画だ。
――APACの売上高はNXP全体の売上高のどのくらいを占めていますか。
和島氏 NXPの2021年の売上高は110億6300万米ドルで、そのうち日本の売上高は8億1000万米ドルだった*)。つまり、日本の売上高は全体の約7%を占めている。
*)編集注:NXPが2022年4月に発行したAnnual Reportによる(参考)。
――和島さんは長年にわたり半導体業界に携わってきましたが、NXPの強み、もしくは足りないところを、どのように分析していますか。
NXPは、技術的な強みがユニークな形で非常に明確に出ている企業ではないか。その一例がマイコンで、旧Freescale Semiconductorの製品も含めローエンドからハイエンドまでポートフォリオがそろっている。そしてセキュリティ技術とコネクティビティ技術。これら3分野の製品群は非常に充実していて、競合他社に比べ、顧客に提案、提供できるソリューションとして潤沢なものがあると理解している。
一方でNXPは、欧州のNXPと米国のFreescale Semiconductorが統合した企業という成り立ちから、グローバルな視野はあるものの、日本市場の独自性に対してうまく対応しきれていない面も見受けられる。これは、われわれ日本のスタッフのチャレンジでもある。日本は、カルチャーや商習慣、匠のようなモノづくりなどユニークな点が多く、こうした複数の要因が絡み合っている。作り手と買い手の間で、製品の品質や価格にギャップが生じていると感じる側面もある。
NXPも、日本でオペレーションを始めて長いので、従業員も日本の商習慣に慣れてはいるが、よりグローバルな商習慣に追従できるような取り組みが必要だ。
――NXPにおいて期待の高い製品を教えてください。
和島氏 「製品」という切り口ではなく、「ソリューション」の提案、提供に力を入れている。最も注目しているアプリケーションの一つが自動車だ。この分野では現在、CASE(Connected、Autonomous、Shared&Services、Electric)が大きく動いている。CASEに向けたコントローラーやアナログ製品、アクチュエーターに関わるドライバーIC、そういったものをソリューションとして提供していく。この分野は日本からの要求も大きい。
インダストリアル&IoTでは、NXPが特に強みを持つ、IoTのラストワンマイル(末端の通信)に向けた製品ポートフォリオが充実している。Wi-FiやBluetoothから、ZigBee、NFCまで幅広くそろえている。さらに、ネットワーク分野では欠かせないセキュリティ技術も、NXPは長年蓄積してきたノウハウがある。例えば、セキュアエレメント(SE)を搭載したマイコンなどをそろえている。
――CASEによって、クルマのE/Eアーキテクチャなども変化しています。NXPは欧州の企業ですが、自動車関連のビジネスで、日本とのスピード感の違いなどはありますか。
和島氏 スピード感は、それほど大きな差はない。ただ、パワーウィンドウやブレーキといった、機能ごとにティア1に発注してきた従来とは異なり、ドメイン型やゾーン型といったE/Eアーキテクチャの進化に伴い、クルマ全体を見る自動車メーカーが(設計の)主導権を取りつつある。そのため、当社のような半導体メーカーと自動車メーカーが直接、アーキテクチャの議論をするケースが増えていて、これは日本よりも海外の方によく見られるという印象がある。
――NXPの製品開発、ロードマップに、より反映しやすくなるということでしょうか。
和島氏 そういうことになる。半導体メーカーとしては、要望をいただくのがティア1からでも自動車メーカーからでも、「ニーズを取り込んで製品を開発する」という方針や姿勢は変わらない。ただ、自動車メーカーから直接要望を受けることは、デザインサイクルを早めるという効果がある。自動車メーカーにとっても、半導体メーカーと直接やりとりすることで、競争力の高い製品を、より短いTAT(ターンアラウンドタイム)で開発できる利点がある。
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